欧米ではクラシックカーが投資に利用されているのをご存じでしょうか。
日本ではクラシックカーと言えば、愛好家の趣味と捉えられがちです。しかし、最近は富裕層を中心に、クラシックカー投資に熱い視線が注がれつつあります。
本記事では、クラシックカー投資とは何か、そのメリットやデメリット、投資の始め方について解説しました。
ぜひ、本記事を通して、注目のクラシックカー投資に対する理解を深めてみてください。
クラシックカー投資とは
クラシックカー投資とは、実物投資の1つです。
アンティークコインや金、ワインなどへの投資と同じように、購入したときの価格よりも売却のときの価格が値上がりすることを目指します。
クラシックカーとは、FIVAの定義によると、生産されてから25年以上経過した古い車のことです。FIVA( (Fédération Internationale des Véhicules Anciens))とは、公道を使って行われるヒストリックカーのラリーを国際的に総括する団体です。
よって、広い定義としては、およそ1998年よりも前に生産された車はクラシックカーと呼べます。
そのクラシックカー投資が、今、富裕層をはじめとする人々を魅了しています。
価値の高い収集品に富を分配することを、情熱投資と呼びます。その情熱投資の対象は、アンティークコイン、アート(絵画)、時計、ウィスキー、ワインなど様々です。
その中にクラシックカーも仲間入りし、投資に高い利益をもたらす可能性があるものとして、ポートフォリオの中に組み込まれているのです。
クラシックカー投資のメリット
クラシックカー投資のメリットについて説明します。
インフレヘッジになる
クラシックカー投資は、インフレヘッジとなる点がメリットです。
インフレの状況では、現金資産を持っていても、年々物の値段が高くなるがゆえに、現金の価値が目減りしてしまいます。
反面、物の値段は上がっているので、現物を持つと、その価格が上がる可能性が高いと言えます。
以下は、VDA(ドイツ自動車産業協会)のドイツのクラシックカー指数で、2016年と2019年の間の値上がり率を表にしたものです。
いずれも評価の高いクラシックカーについては高い上昇率を示しています。
つまり、投資するクラシックカーによっては、現金資産を持つよりも、資産防衛にも繋がる可能性が高いと言えるのです。
収益性、成長率がともに高い
クラシックカー投資は収益性と成長率ともに高いのが特徴です。
イギリスのHAGI(独立系の国際クラシックカー投資調査団体)が集計している「HAGI TOP INDEX」のサイトでは、2008年末の価格水準を100として、現在(2022年7月)がどのような指数となっているかがわかります。
HAGI指数では以下のようなデータを見ることができます。
HAGI Top | クラシックカーの総合指標 |
HAGI P | 希少なポルシェの指標 |
HAGI F | 希少なフェラーリの指標 |
HAGI Top Ex. P & F | HAGI Top Index からポルシェとフェラーリを除いたもの |
HAGI MBCI** | クラシックメルセデスベンツの指標 |
HAGI LPS | クラシックなランボルギーニの指標 |
S&P グローバル 120 | S&Pグローバル1200指数 |
以下の表を見ると、2008年から比較して、ポルシェ、フェラーリ、それ以外のクラシックカーにおいても、価格がおよそ4倍となっているのがわかります。
クラシックカー投資でもたらされる収益は、魅力的なものと言えるでしょう。
趣味としても楽しめる
クラシックカーの魅力は投資のもたらす収益だけではありません。
クラシックカーが人を魅了する理由としては、下記が挙げられます。
- エンジニアリング
- デザイン
- 芸術
- 歴史
- 希少性
クラシックカーには現代の車にはない魅力があります。その歴史と芸術性を感じさせるデザイン性は、シンプルに個性と自由な発想を追求しているものが多いと言えます。
また、クラシックカーは生産が終了しています。よって、世界に数台しかないという希少性、つまり「オンリーワン」の魅力があるのです。
クラシックカーの所有を通して、オーナーズクラブや愛好会に参加すれば、人との繋がりも生まれます。以上のことから、クラシックカーがもたらす楽しみは、単に他の現物資産(金など)を持つよりも、大きいものとなるかもしれません。
クラシックカー投資のデメリット
情報が少ない
クラシックカー投資のデメリットは、日本におけるその情報の少なさです。
欧米では、クラシックカー投資はアンティークコインや絵画などと同様、実物資産として一般的な存在です。
しかし、日本ではクラシックカーは実物資産というよりは、マニアの趣味という位置づけと捉えられることが多いでしょう。
よって、クラシックカーについては情報があっても、投資に関する情報は少ないのが実状です。新聞、雑誌、ネットなどにも情報が少ないため、売り時や買い時の判断に関する情報がなかなか得られず困ることもあるかもしれません。
さらに、流通網も十分に確立されているとは言い難い状況です。クラシックカー投資を検討する場合は、自身でもさまざまなリサーチをする必要が生じるでしょう。
初期費用が高い
クラシックカーのデメリットの2つ目は、初期費用が高い点です。
安いものであれば数十万、数百万からありますが、価値の高いものは1億円を超えるものまであります。希少性が高いクラシックカーであればあるほど、価格は高い傾向にあります。
たとえば、カーセンサーで「クラシックカー」を検索してみると、安いものであれば、数十万円で購入できるものもあります。しかし、高いものだと4,000万円以上のクラシックカーが顔を連ねています。
毎年行われるクラシックカーの祭典である「オートモビル カウンシル」では、クラシックカーは安いものであれば、100万円代、高価なものであればなんと数億円の値がついています。
クラシックカー投資は、他の投資商品と異なり、気軽に始めやすいものとは異なると言えるでしょう。
維持費が高い
クラシックカーの3つ目のデメリットは維持費が高い点です。
維持費が高い理由として、以下が挙げられます。
- 頻繁なメンテナンス・整備が必要
- 希少価値が高いため部品が高価
- 税金が高い
- 保管場所の用意が必要
車種や車の古さにもよりますが、普通の車に比べると、クラシックカーは頻繁なメンテナンスや整備が必要な傾向にあります。
マイナビニュースによると、現在クラシックカーを所有または過去に所有していた人は、半年に1回、1ヶ月に1回、3か月に1回など、頻繁にメンテナンスしています。
その他、その費用に関する情報としては、36%のユーザーが5万円以内、20.5%のユーザーが10万円以内と答えています。メンテナンスも頻回かつ費用もそれなりにかかることがわかります。
維持費が高くなる要因として、消耗品となる交換部品についても、品薄ゆえに、高価になりがちな点も挙げられます。
自動車税も、普通車に比べて高くなります。自動車税は、初年度登録年月から13年経過すると、15%の税率となり、自動車重量税は、初年度登録から13年から18年未満だと40%、18年以上は約50%となります。
その他、クラシックカーを保管する車庫が必要です。ただ車庫に車を置くだけではなく、クラシックカーを外的な要因から保護する「カーカプセル」(10万円前後)を利用するユーザーも多いようです。
自宅に車庫がない場合は、レンタルガレージなどの賃貸サービスや、大型倉庫で多数の車を保管するカー管理サービスを検討する必要があります。
クラシックカーは、購入だけではなく、維持にも多大なコストがかかることを留意しておきましょう。
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クラシックカー投資の収益性
クラシックカー投資の収益性について説明します。
クラシックカーは収益性が高い
新車は、販売店から一歩でた直後から価値が下がり始めるのに対して、クラシックカーはその希少性や性能などにより、時間の経過と共に価値が上がります。
多くの人の心を惹きつけるクラシックカーだからこそ、数十年前に製造された車でも需要が高いのです。
次からは投資価値のあるクラシックカーの例について見ていきましょう。
投資価値のあるクラシックカー
投資価値があるとされるクラシックカーを紹介します。
メルセデス 300SL
メルセデスSLはドイツの自動車メーカーメルセデス・ベンツ・グループが展開している高級スポーツカーです。
初代は1954年に発売されました。SLは「Sport Leicht」の略で、軽量スポーツカーを意味しています。
スポーツカーとして、需要が高く、運転が非常に快適なのがメルセデスSLの特徴です。
300SLは、1952年の「カレラ・パナメリカーナ・メヒコ」のレースで優勝したプロトタイプレーシングカーがルーツのスポーツカーです。
300SLは、2014年にバブルを迎え、1億円を超えました。現在は、価格は落ち着きつつあります。しかし、スポーツカーとして需要が高く、運転の快適性には定評があります。
何といってもメルセデスというブランド名の信頼性が高く、投資が成功する可能性が高いと考えられます。
参考:ヘリテージコレクション
アルファロメオ スパイダー
スパイダーは、ジュリアとジュリエッタの後継車で、1966 年から 1982 年にかけて初めて生産ラインに登場しました
イタリアの影響を受けた洗練されたビンテージ スタイルで、ファンであれば、運転するのも所有するのも楽しいものになるでしょう。
2010年頃から価格が上昇しはじめ、2014年のバブル以降も急落することなく、高価格を維持しています。
参考:ヘリテージコレクション
ジャガー XK120
1948年にロンドンモーターショーで発表されたジャガーXK120は、ボディの曲線が美しく、大きな反響を呼びました。
ジャガーXK120は、第二次世界大戦後、当時最速のスポーツカーとしてデビューしました。高い完成度と圧倒的なパフォーマンスで、国際的にも評価され、ジャガーの知名度を挙げた一台です。
しかも、当時販売されていた他のスポーツカーの半額程度の値段で売り出したため、世界中の話題となりました。
気になる今後の価格ですが、生産台数が1万台を切っているため、今後大きく価格が上がる可能性も秘めています。
参考:ヘリテージコレクション
クラシックカー投資の始め方
ここでは、クラシックカー投資を始める手順について説明します。
ステップ1:リサーチ・市場調査
まずは、クラシックカーを販売している専門業者や販売店をチェックするのがおすすめの方法です。
リサーチの段階でおすすめなのは、中古車検索サイトやオークションサイトの利用です。
たとえば、国内には以下のようなサイトがあります。
カーセンサー | 日本最大級の中古車専門サイト アプリもあり リクルート運営 |
aucfan | 国内最大級のショッピング・ オークション相場検索サイト |
バーチャルカーショップ | ウィンテル社による中古車全般の情報サイト |
メルセデスベンツライフ.com | ウィンテル社によるメルセデスベンツの専門情報サイト |
BMWライフ.com | ウィンテル社によるBMWの専門情報サイト |
MOTA | 中古車・新車などの自動車売却(買取)サービス |
グーネット | 中古車情報サイト 登録台数が豊富で検索しやすい |
上記のサイトを利用して、近隣にクラシック自動車販売店が見つかれば、電話やメールで問い合わせてみたり、来店したりするとよいでしょう。
また、クラシックカー専門店も心強い存在です。クラシックカーを専門に扱う販売店であるため、気になる点があれば、問い合わせしてみるのも手段のひとつです。
ヘリテージコレクションの旧車、クラシックカーのモデル別車両情報にも最新価格相場が掲載されているので、参考にしてみるとよいでしょう。
ヘリテージコレクション…旧車・クラシックカーモデル別車両情報・最新価格相場
その他、数は少ないですが、クラシックカーの輸入代行業者も存在します。輸入でクラシックカーを取り寄せる場合は、輸送に大きな費用がかかりますが、予算が許す場合は検討してみてもよいでしょう。
マーシャルカーズ…クラシックカー輸入代行店
ステップ2:車両の点検・購入
クラシックカーを公道で走らせる場合は、必ず車検が必要となります。車検の内容は、クラシックカーであっても、新車と同様です。購入するクラシックカーが車検付か車検が切れているかで対応が異なります。
クラシックカーの購入方法は、主に以下の3経路となります。
- 専門店
- 中古車専門サイト
- 個人売買サイト
クラシックカーの専門店は全国各地に存在するので、まずは近隣の専門店に足を運んでみるとよいでしょう。一般に、専門店は詳しいアドバイザーが在籍しているので、相談がしやすいという利点があります。反面、価格が割高な傾向があります。
- Classic Car .jp…兵庫県西宮市
- Evita…神奈川県横浜市
- Banbii Shoot…神奈川県横須賀市
- DAIYA AUTO…愛知県名古屋市
中古車専門サイトは、購入したいクラシックカーの情報を調べるのに便利です。どこの販売店にあるのかもわかります。
個人売買サイトは、中古車専門サイトと同様、クラシックカーの情報を調べるのに便利です。クラシックカーの詳細な情報まで掲載されているので、知りたい情報を得られる場合が多いかもしれません。
しかし、クラシックカーへの目利きを自ら行わなくてはいけない、車両の状況によっては整備が必要など、自分で行わなければならない点が多い傾向にあります。修理が必要な場合は、修理費を加味して投資からどれくらいの利益が得られるかを判断する必要があります。
ステップ3:売却
クラシックカーを手放すタイミングは人それぞれ様々です。投資の観点からは、市場価格がピークとなると予測したタイミングで売却するのがベストでしょう。
売却は、次の3つの方法で行います。
- クラシックカー専門店
- 個人売買
- 個人売買(インターネットサービス)
専門店であれば、クラシックカーの目利きにおいて、信頼が置けます。逆に、インターネットで一括買取見積ができるサービスなどを利用すると、車種やグレード、走行距離などのデータのみで買取価格が算出されることが多いです。クラシックカーそのものの目利きがされないことで、価値が低く見積もられてしまうリスクがあるので注意しましょう。
車を所有しているときに、クラシックカーのオーナーズクラブや愛好会に所属し、売却するときのネットワークを作っておくのもよい方法です。そのクラシックカーの価値がわかる相手であれば、高額での買取をしてくれる可能性もあるでしょう。
上記が難しい場合は、インターネットの個人売買システムを利用するのも手段となります。自ら価格を設定して、買い手が見つかり次第、売買が成立します。
クラシックカー投資を始めてみよう
本記事では、クラシックカー投資とは何かを始め、そのメリット、デメリット、クラシックカー投資の始め方などを解説しました。
クラシックカー投資は、インフレが進む昨今の状況の中では、現金資産を持つよりも収益性が高い可能性があります。
手間や維持費は多少なりともかかりますが、余剰資金を収益性の高いクラシックカーに投資すれば、長期投資によってリターンを得られるかもしれません。
現物投資を検討している方は、選択肢の一つとしてぜひ検討してみてください。