不動産投資において、健全な資金状態を保つのに欠かせないのがキャッシュフローへの理解です。
この点を意識した物件運用を行わないと、ローン返済や税金の支払いに滞りが発生するだけではなく、自身の貯蓄が減ったり、入居者に逃げられてしまう事態になりかねません。
キャッシュフローの基本に加え、キャッシュフローがどんな状態になるのが好ましいのか詳しく解説していきます。
不動産投資におけるキャッシュフローとは?
キャッシュフローとは、「お金の流れ」を指す言葉です。
たとえば、不動産投資では物件を購入すればお金が出ていき、購入した物件を入居者に貸し出せば家賃収入が手に入ります。
このようなお金の一連の動きが「お金の流れ」です。
キャッシュフローと混同されがちな言葉に「資金繰り」がありますが、こちらは投資活動で発生する収支と手元の現金を把握するのに使われます。
資金繰りでは先々の収支予定もわかるため、将来どのくらい資金が必要になるか判断することが可能です。
キャッシュフローはあくまでも、実際に発生したお金の流れを把握し、どのくらいの成果を上げられたか理解するものだと考えると良いでしょう。
資金繰りによって使えるキャッシュが少なくなると、帳簿上の利益はあるにも関わらず破綻する「黒字倒産」なども発生します。
キャッシュフローが出ない物件は避けるべき?
「キャッシュフローが出ない物件=お金の流れが鈍く利益が得にくい」と考え、投資を避ける方が多いのではないでしょうか。
こういった物件でも、目的を定めて投資すれば利益を上げられる可能性があります。
このケースでは、「物件売却時のキャピタルゲイン」を得ることを考えて投資することが重要です。
たとえば、運用中の利益は出なくても、土地や物件そのものの価格が上昇すれば購入時より高い価格で売却できる可能性が高まります。
土地や物件価格は、インフレ進行による買い占めや、基準地価の上昇などによって高騰します。
また、都市部の人口増加や建築資材の高騰なども高騰理由として挙げられるでしょう。
キャピタルゲインを狙った投資は利回りに振り回されにくく、現金を守る「資産防衛」としても優れています。
都市部のワンルームマンションや、土地開発予定がある地域の物件など、価値が下がりにくく将来性も感じられるなら、投資する旨みがあると言えるでしょう。
不動産投資でキャッシュフローを保つ6つのメリット
キャッシュフローを保った不動産投資によって得られるメリットについて解説します。
- 空室リスクに備えられる
- キャッシュフローを保つことで生活の余裕が生まれる
- 再投資ができる
- 銀行融資が受けやすくなる
- 様々な出費にスムーズに対応できる
- キャッシュフローが良い物件は高額で売りやすい
空室リスクに備えられる
不動産投資でキャッシュフローを保つ1つ目のメリットは、空室リスクに備えられることです。
不動産投資では、空室による収入減少が大きな懸念点となります。
このリスクを乗り越える鍵の一つとして、キャッシュフローを保つことが挙げられるのです。
たとえ家賃収入が減少しても、キャッシュフローさえプラスであれば問題なくローンの返済や納税を行えます。
キャッシュを維持することで、不動産投資で頻繁に起こるリスクを効果的にカバーしましょう。
キャッシュフローを保つことで生活の余裕が生まれる
不動産投資でキャッシュフローを保つ2つ目のメリットは、キャッシュフローを保つことで生活の余裕が生まれることです。
キャッシュフローが悪化すると、ローンの返済や納税、急に発生した修繕費などを自身の貯蓄を切り崩して行わなければならないケースが発生します。
このようなことが起こると、資産形成のために不動産投資を始めたはずが、逆に首を絞められる状況になりかねません。
生活の余裕を生むには、キャッシュフローをプラスに保って投資利益で出費に対応できる状態を作ることが大切です。
再投資ができる
不動産投資でキャッシュフローを保つ3つ目のメリットは、再投資ができることです。
キャッシュフローの維持によって貯めたお金は、次に投資する物件の頭金や初期投資に回すことができます。
適切に投資物件を増やせば安定した収入源をさらに増やすことができ、一つの物件で生じた問題をカバーするリスク分散の効果にも期待可能です。
物件の安定性が高まれば、収益性が低下している物件を売却し、より良い物件にシフトするといった戦略も考えられるでしょう。
多くの資産に投資してリスク分散することは、さらに盤石な投資ポートフォリオを築くためにも欠かせません。
銀行融資が受けやすくなる
不動産投資でキャッシュフローを保つ4つ目のメリットは、銀行融資が受けやすくなることです。
銀行は様々な情報を参考に確実に返済が行われるか判断し、融資するかどうかを決めます。
銀行融資を受ける際には多くの書類を用意する必要がありますが、そのなかの一つに「キャッシュフロー計算書」というものが存在します。
これは一定期間の資金の増減についてまとめた決算書で、投資活動によってお金がどのように流れているか判断することが可能です。
すなわち、キャッシュフロー計算書を見れば投資家の資金状態がわかり、返済能力を判断するのにも役立ちます。
キャッシュフローの維持によって余裕資金が増えると銀行へのアピールポイントが増えることにもなり、別物件への投資に必要な融資も受けやすくなります。
様々な出費にスムーズに対応できる
不動産投資でキャッシュフローを保つ5つ目のメリットは、様々な出費にスムーズに対応できることです。
不動産投資を行うと、予期せぬ出費のリスクを負うことになります。
たとえば、地震や台風などの自然災害や、物件内設備の故障による修繕費の発生などです。
こういった予期しない出費に対し、キャッシュフローがしっかり保たれていると急な支出が発生しても問題なく対応が可能になります。
言い換えれば、キャッシュフローの維持は緊急時の保険にもなるのです。
入居者を逃さず、空室リスクを負わないためには物件トラブルに早急に対応しなければなりません。
生活の質を落とさないためにも、投資活動による出費は投資活動で得た利益で賄えるようにしましょう。
キャッシュフローが良い物件は高額で売りやすい
不動産投資でキャッシュフローを保つ6つ目のメリットは、キャッシュフローが良い物件は高額で売りやすいことです。
物件を手放すことになった際、キャッシュフローが見込める物件はそれ以外の物件よりも高く売りやすい傾向にあります。
すでに安定収入が得られることがわかっている物件は人気が集まりやすいため、収入減少によって泣く泣く手放す際よりも多くのキャピタルゲインに期待可能です。
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キャッシュフローを保ちながら不動産投資をする方法
いくつかのコツを抑えることで、キャッシュフローを保った不動産投資が格段に近づきます。
これから不動産投資を始めようか迷っている方は、常に以下のポイントを意識しながら準備を進めてみてください。
- 収益性の高い物件を選ぶ
- 物件購入時の自己資金を増やす
- 不動産会社選びに注意する
- ローンの繰り上げ返済を行う
- ローンの返済期間を長くする
- 経費を抑える
収益性の高い物件を選ぶ
キャッシュフローを保ちながら不動産投資を行う1つ目の方法は、収益性の高い物件を選ぶことです。
収益性の高い物件を選ぶことは、キャッシュフローを確保する上で非常に重要です。
物件の立地、周辺の賃料相場、物件の状態などを詳細に調査し、投資対効果が高いものを選択することで、安定した賃料収入を得ることが可能になります。
たとえば、駅近や主要施設が周辺にある物件は賃料相場が高く、また入居率も高い傾向にあります。
このような物件は購入価格こそ高くなるかもしれませんが、中長期的に見れば収益性が高まりやすいといえるでしょう。
また、将来的に資産価値の上昇も期待できる物件の選び方としては、今後の都市計画や地域の再開発計画を調査することが有効です。
大型商業施設の進出や新しい交通インフラの開発が計画されている地域では、将来的な人の流れや賃料の上昇が見込まれるでしょう。
これにより、資産の拡大とキャッシュフローの確保の両方を狙うことができるのです。
物件購入時の自己資金を増やす
キャッシュフローを保ちながら不動産投資を行う2つ目の方法は、物件購入時の自己資金を増やすことです。
物件購入時に多くの自己資金を用意することで、ローンの負担を軽減することができます。
例を挙げると、5000万円の物件を購入する際、自己資金が1000万円であれば20%の自己資金率となります。
しかし、この金額を2000万円に増やせば自己資金率は40%となり、借入れるローンの金額が大きく減少するのです。
物件購入時の自己資金率は多くの場合20%〜30%程度と言われているため、40%も自己資金を出せると銀行側からの信頼も得られる可能性があります。
銀行側から信頼を得られると、ローンの審査がスムーズに進む可能性が高まったり、より有利な金利での借り入れが実現したりします。
融資審査では他の項目も考慮されるため、自己資金率だけが重要というわけではありませんが、返済能力の高さをアピールするには欠かせない要素といえるでしょう。
自己資金を増やすには、定期的な貯蓄や他の投資先からの収益、副業による収入源の増加を図ることが効果的です。
キャッシュフローを維持し、不安のない投資を行うためにも物件購入前の資金計画も綿密に立てられるようにしてください。
様々な資産形成や資産防衛の方法は、マネートレンドNaviでも紹介しています。
公式LINEでは数ある記事のなかでも選りすぐりのものを発信しているので、重要な知識だけ身につけたい方にもおすすめです。
不動産会社選びに注意する
キャッシュフローを保ちながら不動産投資を行う3つ目の方法は、不動産会社選びに注意することです。
購入する物件の質やその後の管理は、選んだ不動産会社によっても大きく左右されます。
信頼性や実績を持つ会社を選ぶことでトラブルを回避し、長期的なキャッシュフローの維持に繋がりやすくなるでしょう。
不動産会社の評判や過去の取引実績をチェックする手段として、ネットでの口コミや評価などが挙げられます。
業界内での評価も調査できると良いですが、不動産投資初心者だと人脈が形成されておらず、なかなか実際の声が聞こえてこないこともあるでしょう。
そのため、まずは外部のサイトに掲載されている利用者のリアルな評価を参考に、会社選びを行ってみてください。
不動産投資は数年から数十年単位で行う投資なので、長期的に信頼関係を築けるパートナー選びが重要です。
一度信頼関係を築ければ、その後の物件管理などについても融通が聞きやすくなる場合もあるので、こちら側も真摯に接することを心がけましょう。
ローンの繰り上げ返済をする
キャッシュフローを保ちながら不動産投資を行う4つ目の方法は、ローンの繰り上げ返済をすることです。
ローンの繰り上げ返済を行うことで、総返済額の削減や返済期間の短縮が可能となります。
1000万円のローンを3%の金利で10年かけて返済する場合、繰り上げ返済を行わなければ、利息として数十万円以上が発生します。
しかし、余剰資金を積極的に繰り上げ返済に充てれば、この利息の部分を大幅に削減することが可能です。
特に「返済額軽減型」というローンなら、返済期間は変わらないものの、資金を繰り上げ返済することで毎月の返済額が少なくなります。
返済額が減ればキャッシュフローも良化しやすくなるため、利用を検討してみるのも良いでしょう。
また、返済期間を短縮する「期間短縮型」ローンなら、将来的なリスクの減少を図れます。
資産状況や自身の収入状況が変動する中、少しでも短い期間でローンを完済できれば、心理的な負担はもちろん、何かのトラブルが発生した際の金融的な負担も軽減可能です。
各金融機関のローン商品によって契約内容が違うので、もし繰り上げ返済の実施を検討している場合は必ず担当者に事前確認を行ってください。
ローンの返済期間を長くする
キャッシュフローを保ちながら不動産投資を行う5つ目の方法は、ローンの返済期間を長くすることです。
逆に返済期間を長くすることで月々の返済額を減少させ、キャッシュフローを安定させる方法も存在します。
たとえば、3000万円のローンを10年で返済する場合と20年で返済する場合を比較すると、後者の方が月々の返済額は明らかに低くなります。
こういった工夫を行えば、投資の初期段階や収益が不安定な時期に資金の圧迫を軽減し、物件運用を安定化させることが可能です。
しかし、一方で返済期間が長くなることで利息部分が増加するため、結果的に総返済額は増加する可能性が高まります。
短期的なキャッシュフローの安定を優先するか、長期的な総コストの削減を優先するか、それぞれの投資戦略や資金状況に応じて判断しましょう。
経費を抑える
キャッシュフローを保ちながら不動産投資を行う6つ目の方法は、経費を抑えることです。
不動産投資において、経費を抑えることは収益性を向上させる上で重要です。
物件の管理・運営に関連する経費を削減することで物件の収益率が向上し、キャッシュフローの悪化を防ぐ効果があります。
定期的な点検によって小さな不具合を早期に修繕すれば、大きな修繕費用の発生を防ぎ、大きな出費を防ぐことが可能です。
また、経費を抑えやすい不動産会社選びもポイントとなります。
一つの会社に絞り込むことが難しい場合は、複数の業者から見積もりを取得し、コストパフォーマンスの良い業者を選ぶこともおすすめです。
他にも管理費の中に不要なサービスや高すぎる料金が含まれていないか確認し、後々不要な出費が発生しないかチェックすることも忘れないようにしましょう。
不要なサービスはカットし、少しでも安く物件運用が続けられる体勢を整えてみてください。
不動産投資時にキャッシュフローがマイナスになった時の対策
キャッシュフローがマイナスな状態が続くと、自己資金などを返済に充てることとなり、生活の質まで低下し始めます。
不動産投資においてこのような状況に陥るのは珍しくないため、その原因を解消する対策方法を事前に知っておくことが自身を守ることにも繋がります。
- 入居率の改善を図る
- 家賃を下げる
入居率の改善を図る
1つ目の対策方法は、入居率の改善を図ることです。
入居率が低いことは、キャッシュフローがマイナスになる主な原因の一つです。
この問題を解決するためには、まず物件の周辺環境や競合物件との比較を行い、魅力的な点や改善すべき点を洗い出す必要があります。
たとえば、設備のアップグレードは、特に若い世代や単身者には重要な要素です。
浴室の追い焚き機能や、温水洗浄便座、高速インターネットなどの導入は、物件の魅力を一気に高める要因となります。
また、セキュリティ性の強化は、特に女性や高齢者の住みやすさを高める大きな安心要素です。
オートロックの導入や防犯カメラの設置によって建物全体の安全性を高めれば、より多くの人に選ばれやすい物件として生まれ変わるでしょう。
多くの人の目に入りやすいインターネット集客などにも力を入れ、物件の魅力を再認識させることが大切です。
家賃を下げる
2つ目の対策方法は、家賃を下げることです。
この方法は、家賃を下げることで入居率があがり、結果キャッシュフローが向上する場合にのみ利用できます。
入居率が低いのは、築年数や間取り、内装に対して、割高と感じる家賃が原因となっていることも考えられます。
契約を増やすには、地域にあった家賃を設定することが重要です。
大家にとっては思い切った決断となりますが、入居者が見つかることでキャッシュを増加させられるのであれば実行が必要となるでしょう。
不動産投資のキャッシュフロー計算例
不動産投資のキャッシュフロー計算式は以下の通りです。
【収入(家賃収入)−経費+ローン返済額】
家賃収入が50万円、経緯が3万円、ローン返済額が27万円という条件を加えると、残り資金は半分の30万円となります。
あくまでも簡易的な計算式であり、物件の収益性などを把握するには利回りなどもチェックしなければなりません。
人によって経費や返済額が大きく変動するため、条件が変わるごとにこまめに計算し、正確にキャッシュフローを把握して健全な不動産投資を実現しましょう。
まとめ|不動産投資のキャッシュフローは入念な計画を立てて余裕を持つべき
どれだけ利益が出ていても、キャッシュフローが悪化して手元に現金が残らなければ月々の返済や物件のトラブル対応が困難になります。
返済遅延による損害金請求などは自身にしか降りかからない問題ですが、物件のトラブル対応の遅れは入居者の生活にも悪影響を及ぼしかねません。
キャッシュフローを保ち、余裕のある不動産投資を行うことは、銀行、自分の生活、入居者の全方向に負担をかけないことにも繋がります。
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