中央ヨーロッパのポーランドは領土の移り変わりが激しく、西洋史に興味のある方には面白い国ではないかと思います。
そんなポーランドには流通量は少ないですが、時代ごとの違いにより多くのデザインのアンティーク硬貨やメダルが存在します。
この記事では4つの代表的なものをご紹介します。
ポーランドのアンティークコインの種類
ポーランドの通貨単位はズロッチ(現地では金(ゴールド)を意味するズウォティと呼ばれています)で、補助的に使われるグロシュを含めて、計量の単位やコインの形状などを変えながらも、中世から現在まで一貫して使われています。
ただポーランドは古代ローマより数千年、中世には現在のベラルーシやロシア、ウクライナの一部、バルト三国など東ヨーロッパの多くの地域を支配した時代がある一方で近代にはロシア帝国やソ連、ナチスドイツなどからの侵略を受けるなど分割と併合を繰り返した歴史があります。
そのため同国のアンティークコインはイタリアやハンガリー、ロシア、ドイツなど周辺諸国の影響を受けているため、同じズロッチ硬貨でも時代ごとに著しくデザインが異なります。
また領土も時代ごとに著しく異なるためどの硬貨をポーランドのアンティークコインとするかが問題ではありますが、今回はロシア帝国に統治されていた近代から現在のポーランド共和国が発行した限定的なメダルなどを中心に説明いたします。
ポーランドの通貨の種類と歴史
先ほども伝えた通り、ポーランドは時代ごとに領土の変化が激しい国ですが、通貨単位は古代ローマで使われたデナリウスからグロシュが主体となり、その後ズロッチが現在に至るまで使われた歴史を持っています。
この3つの通貨を中心にポーランドの通貨の歴史を追います。
デナリウス硬貨:古代ローマから使われた通貨
ポーランドで最初に本格的に使われた通貨は、古代ローマの時代から流通した銀貨であるデナリウスでした。
デナリウス硬貨はローマ帝国の拡大に合わせてヨーロッパ中で流通し、聖書にも「デナリ」や「デナリオン」の名前で記載されるほどに歴史と伝統のある通貨でした。
しかし銀含有率は年を追うごとに徐々に低下してしまい、最終的にローマ帝国本国では3世紀になりアントニニアヌス銀貨に置き換えられました。
ローマ帝国崩壊後もポーランドを始め多くの国で通貨として用いられていましたが、鋳造していた職人が地域の違いなどの影響で異なっていたため、銀の含有量やコインの厚さなどにズレが生じてしまい、ローマ帝国同様価値が大幅に低下し徐々に流通量を減らす形になりました。
グロシュ硬貨:中世イタリア発祥の通貨
価値が低下したデナリウス硬貨に変わってポーランドで流通するようになったのはグロシュ硬貨でした。
1172年にイタリアにて発行されたグロシュ通貨は当初数〜十数デナリウスと等価として流通され、イタリア経由での交易の発展もありかつては中世ヨーロッパ各地で発行されていました。
ポーランドでも1367年以降、12デナリウスと等価にあたる硬貨として発行が始まりました。
グロシュ硬貨を導入した当時のポーランド国王・カジミシュ3世ヴィエルキは王国の領土を現在のウクライナの一部にも拡大させ、基本法の制定や当時の首都クラクフへの大学設立など内政面でも成功を収めた人物でした。
この時代よりポーランド王国は拡大を続け、東ヨーロッパから中央ヨーロッパ全域に影響を持つ大国として栄えることになります。
グロシュ通貨はその後時代が降るにつれてだんだん小さくなっていき価値も落としていきますが、本日でもポーランドではズロッチ通貨を補完する通貨(アメリカドルに対するペニーに相当)する通貨として、流通しています。
ズロッチ硬貨:ハンガリーから流入した通貨
また、カジミシュ3世の時代よりポーランドはハンガリーとの交易が盛んになりました。この時ポーランドから産出される塩が輸出される一方で、ハンガリーからは同国の金鉱山から採掘された金を使った金貨が流通するようになります。
この金貨を「チェルヴォヌィ・ズロッチ(赤金)」と呼んだことが、ズロッチの語源となります。
ただ初めからズロッチが通貨として流通していたわけではなく、当初は前述したグロシュ硬貨が主な通貨として使われていたほか、地域によっては独自の通貨発行が認められていました。
その一例が後に王国となりポーランドのみならずオーストリアやフランスなどを脅かすことになるプロイセン公国で、独自通貨・シェロンクを発行して流通させていました。
ズロッチが実体的な通貨になったのは1496年のことで、1ズロッチを30グロシュとするルートを定めて流通が始まりました。
ただその後も長い間各地域の独自通貨は併用して使用され、1ズロッチ=30グロシュのレートで使用されるようになったのは18世紀のスタニスワフ2世アウグストの改革まで掛かるようになりました。
しかしその頃ポーランドはロシアやプロイセンなどヨーロッパの各国に脅かされるようになり、やがてナポレオン1世の統治下にあったワルシャワ公国、ロシア帝国の支配下にあったポーランド立憲王国、ドイツ帝国やオーストリアによるポーランド摂政王国などに分割されるようになりました。
この間ズロッチとグロシュは消滅していた時期もありましたが、レートも変更されつつ、現在のポーランド共和国に至るまで法定通貨としての地位を維持しています。
なお現在ポーランドはEUに加盟しているためユーロ導入も検討されてはいるものの、憲法改正などの法手続きや加盟にあたる財務や金融などの基準であるマーストリヒト基準、一部国民の反対などもあり進んでいない状況です。
ポーランドのアンティークコインの特徴
ポーランドのアンティークコインは、他の欧州の国と比べると残念ながら流通量はそこまで多くはなくマニアックなものにはなってしまいます。
ただポーランドには多くの大国に翻弄されながらも生き延び、キュリー夫人やヨハネ・パウロ2世など各界で活躍した著名人も多く存在します。
その複雑な歴史を反映するアンティークコインもいくつか見られるのが大きな特徴と言えます。
以下に具体的な特徴を挙げます。
独立と他国領を繰り返した歴史を反映
ポーランドは中世の最盛期には現在のバルト三国やロシア・ウクライナの一部などを含む幅広い領域を支配し経済・文化が栄えた一方で、モンゴル、ロシア、フランス、ドイツなど多くの国の侵略を受け他国の領土となった歴史があります。
結果として古代〜中世にかけてのデナリウス硬貨やグロシュ硬貨を中心に他国の通貨が使われる一方で、ポーランド独自のズロッチ硬貨についてもポーランドの多様な歴史をもとに自国の王様や他国の皇帝などの肖像画が描かれたアンティークコインやメダルが多数発行されています。
ズロッチ硬貨が中心だが流通は少なく希少
アンティークコインとして流通しているズロッチ硬貨は残念ながら多くはありません。
その理由としては通貨を鋳造するたびに軽量化され小さくなっているため見栄えが悪くなることから収集家の間でも現在のズロッチについては収集するアンティークコインとして魅力がないということが挙げられます。
ただ、ロシア帝国の支配下にあったポーランド立憲王国時代のズロッチ金貨・銀貨についてはロシア・ルーブルに近いデザインということもあってかそれなりに人気があり、ある程度は流通しています。
現在アンティークコインとして流通しているズロッチ効果はこのタイプが大半を占めています。
総じてマニアックな収集テーマであるため取り扱っている個人商店やインターネットサイトも限られ、オークションにおいても適切な値付けができているケースが多いとは言えません。
そのため、ポーランドのアンティークコイン購入には信頼できるコイン取扱業者を自ら見つけて確認することが必要になります。
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おすすめのポーランドアンティークコインとメダル
ポーランドのアンティークコインの種類はそれほど多いとは言えませんが、複雑な歴史もありデザインは多様なのが特徴です。
特にロシア・ルーブルに近いデザインを持つポーランド立憲王国時代のズロッチ銀貨や金貨の人気が高く、流通する大半を占めています。
また政府や自治体が近年になり発行されたメダルの価値も高くなっていることが特徴の一つです。
以下に編集部おすすめのアンティークコインとメダルを4つご紹介します。
ボレスワフ1世 (崩御900年記念)10ズロッチ金貨
ポレスワフ1世は992年に就任後当時は公国だったポーランドの領土を鍛え上げた騎兵隊により、現在のポーランドだけでなくマイセンやチェコなどの周辺地域にも及ぶほどに拡大させた武勲を持つ人物です。
武勇に優れただけでなくイスラム世界やイタリア、東ローマ帝国から先端の文化を取り入れポーランド公国を大いに発展させました。
そして1025年に亡くなる直前には王冠を受け取り初代ポーランド国王に就任し、ポーランドを王国の地位に昇格させました。
そんなボレスワフ1世の没後900年を記念し、1925年に27240個限定で10ズロッチ金貨が発行されました。
直径19mm、重量3,23gの大きさを持つこの金貨は、武勲を讃えて「勇敢王」と称されるボレスワフ1世の功績の大きさもあり、ポーランドのアンティークコインとしては代表的な収集対象とされています。
同国の歴史に興味を持つ人であれば是非とも手に入れたい一品と言えるでしょう。
アレクサンドル1世 50ズロッチ金貨
アレクサンドル1世はナポレオンによる侵略からロシアを守り抜き、支配下に置いていたポーランドについても憲法を与え国会を開会することを勅許したロシア皇帝です。
ただアレクサンドル1世の政治方針が当初の開明的なものから反動的になり、次第にポーランド独自の憲法は無視され自由はなくなり、最終的にはポーランドは事実上ロシアの従属国となってしまい専制政治下に置かれるようになってしまいました。
また民族運動の弾圧も強まり、ポーランド人にとって非常に苦しい時代を迎えることになります。
ただ通貨についてはロシア・ルーブルに統一することはなくズロッチのまま移行しています。
この時の通貨はアレクサンドル1世の右向きの肖像にロシアの象徴である双塔の鷲が描かたロシア帝国時代のルーブルとほぼ同じ特徴を持っています。
ニコライ1世 1ズロッチ銀貨(15コペイカ)
ニコライ1世は前述したアレクサンドル1世の弟で、反動的な政治方針をとり民族運動や独立運動を弾圧し、さらにはクリミア方面やバルカン半島、西アジアへの進出を進めてロシアの勢力拡大を強めた皇帝です。
この時もポーランドは苦しい状況でしたが、通貨であるズロッチはそのまま維持され、ルーブルの補助通貨であるコペイカと併用で使われていました。
当時レートは1ズロッチ=15コペイカでした。
これも先ほどご紹介したアレクサンドル1世のものと同様、肖像画などにロシア・ルーブルの影響が見られるものになっています。
ロシア帝国の影響下にあった時代のズロッチ硬貨は随所にロシア・ルーブルの影響が見られる時代背景を探れるものとなっており、流通量も比較的多いことからポーランドの代表的なアンティークコインの一つになっています。
なおロシアのアンティークコインについてはこちらの記事に詳しく記載しているので、興味のある方は参考にいただけますと幸いです。
聖ヨハネパウロ2世 銀メダル 2014年
ヨハネパウロ2世は1978年に史上初のポーランド人教皇としてキリスト教カトリックのトップであるローマ教皇に着座し、以後2005年までの長期に渡り勤めていた人物です。
実に世界129カ国を訪問し「空飛ぶ聖座」とも呼ばれるほど渡航をくり返えし、プロテスタント諸派や英国国教会などキリスト教の他宗派やイスラム教をはじめとする他宗教との融和に努め、現代の宗教感に大きな影響を与えたことで知られています。
またヨハネパウロ2世はポーランド統一労働者党一党独裁支配時代のポーランドを訪問し、集まった民主派の人たちに「恐れるな」という演説を行いました。この結果ポーランド民主派の精神的支柱になり同国の民主化に大きく貢献し、その後1980年代に東欧各地で発生した民主化運動にも影響を与えたことでも有名です。
このメダルはヨハネパウロ2世のポーランド訪問30年を記念し、ポーランド造幣局が2009年75,000個限定で発行したものになります。
現代の宗教観や東欧各国の民主化に大きな影響を与えたヨハネパウロ2世のメダルは、現代史に興味のある方であれば是非ともコレクションアイテムとして持っていても損はないものと言えるでしょう。
まとめ:マニアックでも希少価値と歴史的価値のあるポーランドのアンティークコイン
ポーランドのアンティークコインは流通量は多いとは言えず現在は好事家の間で取引されるだけの存在ではありますが、その分希少価値は高く時代に応じて大きく変化したデザインなど歴史に興味のある人なら魅力を感じるコインになっています。
マニアックな硬貨ですが、西洋史が好きな方は背景まで含めて楽しめるので試しに購入してみてはいかがでしょうか。
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