あまり知られていないタイのアンティークコインですが、少しずつ注目度が増していることをご存知でしょうか。
アンティークコインといえばイギリスやアメリカなどを思い浮かべますが、実は日本から近いタイにも歴史的価値のあるコインが存在するのです。
およそ160年ほど前から製造され始めたタイコインは、デザインや保存状態でも英米などに引けをとりません。
この記事では、なかなか見つけにくいタイのアンティークコインについて解説するので、興味のある方はぜひご覧ください。
タイはアンティークコインが多い国
様々なアンティークコインを世に送り出していると密かに注目され始めているのが、東南アジアに属する「タイ」です。
タイは王室を称える文化が強いため、アンティークコインの中心地でもあるイギリスなどと同様に国王や王妃の肖像が刻まれたコインが多く製造されています。
一般的にはイギリスやドイツ、アメリカなど、世界の歴史の中心にいた国のコインが投資家や愛好家には注目されがちです。
たとえば、約6億円で落札された「ダブルイーグル金貨」や、2023年に約2億7,000万円で落札された「ウナとライオン」などもそれぞれアメリカとイギリスのコインです。
しかし、アンティークコイン投資の名が徐々に知れてきた現在、上記の国のコインは時間と共に価値が高まるアンティークコインの特性も相まって大幅に値上がりし始めています。
「参入しても高値掴みになるかも?」「そもそも高すぎて投資できない」と考える方も多いでしょう。
そんな方々におすすめしたいのがタイのアンティークコインです。
他のアンティークコイン大国と比べるとわりと新しいコインが多く、状態が良いものでもお手頃価格で入手できます。
人気のあるコインでも約300万円ほどなので、参入するなら今がチャンスと言えるでしょう。
洗練されたデザインのコインも存在するので、先行者利益を得るためにも投資を検討してみてください。
タイで流通している硬貨は?
タイでは「バーツ(THB)」が通貨として流通しており、1バーツ未満の金額を支払う補助通貨には「サタン」が使用されています。
100サタンで1バーツとなり、1バーツを日本円にすると2024年3月現在で約4円ほどです。
そして、バーツ・サタンは日本の硬貨より多い6種類が存在します。
- 1バーツ
- 2バーツ
- 5バーツ
- 10バーツ
- 25サタン
- 50サタン
国民の9割以上が仏教を信仰する「仏教の国」ということもあり、各硬貨にはタイを代表する寺院が描かれています。
タイの観光名所として有名な「ワット・プラタート・ドイ・ステープ」が描かれている50サタン硬貨は、硬貨の色も相まって平等院鳳凰堂が刻まれた10円玉に似たデザインです。
タイのアンティークコインもバーツ硬貨がメインになっているので、通貨としての価値とアンティークコインとしての価値を比較しながら投資・収集対象を探してみてください。
タイのアンティークコインの特徴
アンティークコインの特徴を知ると、その国の歴史や特徴、国民性についての理解も深まります。
ここではタイのアンティークコインの特徴を3つ紹介するので、コインの価値を左右する「製造国の背景」も一緒に探っていきましょう。
- 記念コインが多い
- ラーマ4世以降に発行されたコインが多い
- イギリスの造幣機で製造されたコインが存在する
記念コインが多いものの流通数が少ない
タイは世界でも祝日が多い国で、2024年は20日以上の祝日が設けられています。
特に王室や仏教に関する休みが多く、そのような国柄も関係してかアンティークコイン大国のイギリスやアメリカと同様に記念系のコインもたくさん作られているのが特徴です。
特に国王・女王陛下の誕生日や、国王がヨーロッパから帰国した時など、国の節目を記念したコインが多く製造されています。
こういった記念コインは「硬貨」と「メダル」の2つに分かれていますが、「メダル」のほうは通貨利用できず、流通数も少ないからかインターネット上ではほぼ確認できません。
製造記録自体は残されていますが、詳細な情報は少ないため、オークションに出品されるようなことがあれば一気に注目度も高まる可能性があります。
ラーマ4世以降に製造されたコインが多い
タイのアンティークコインは、ラーマ4世が在位していた1800年代後半以降に製造されたものが中心となって取引されています(1939年までの国名はタイではなくシャム国)。
これは、タイの王立造幣局の建設がラーマ4世によって命じられ、本格的な西洋式硬貨の製造もその時代から開始されたことが関係しています。
造幣局が作られるまでは、現在のタイの原型「スコータイ王国」時代から使われていた「ポッド・ドゥアン」という手作りの通貨が流通していました。
しかし、他国との貿易が盛んになり、手作業生産のポッド・ドゥアンでは供給が追いつかないことから硬貨の製造が始まったのです。
別名「弾丸通貨」と呼ばれるほど丸々とした形状は、なかなかコインと呼べるものではありません。
過去の通貨「ポッド・ドゥアン」がコインとしての価値を見出しづらく、国での硬貨製造も遅かったことから、タイのアンティークコインは比較的新しいものが多くなっています。
イギリスの造幣機で製造されたコインが存在する
アンティークコインのイメージがまだまだ薄いタイですが、実は当時から硬貨製造で圧倒的にリードしていたイギリスと繋がりを持っていました。
きっかけとなったのが、1855年にタイ(当時はシャム国)とイギリスの間で結ばれた「修好通商条約」です。
治外法権を認め、関税自主権も撤廃しなければならない「不平等条約」でしたが、これを機に大英帝国を率いたヴィクトリア女王から造幣機が贈られました。
結果的にタイ国内でも多くのコインが製造され始め、後の王立造幣局の建設にも繋がっていきます。
イギリス製造幣機がいつまで使用されていたかは不明ですが、イギリスの硬貨製造技術がタイでも活用されていた背景を知ると、タイコインの見え方も変わってくるのではないでしょうか。
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タイのアンティークコインを紹介
タイで製造され、現在のアンティークコイン市場でも注目されている5枚のコインについて解説します。
すべて歴代のタイ国王に関するコインなので、タイの歴史や文化などに思いを馳せながら楽しむのに最適です。
どれも比較的安価で手に入るので、気になったものがあればぜひチェックしてみてください。
- 【1863年発行】ラーマ4世 8バーツ金貨
- 【1964年発行】ラーマ4世 鄭明通宝(ていめいつうほう)
- 【1894年発行】ラーマ5世 4バーツ金貨
- 【1971年発行】ラーマ9世 400バーツ金貨
- 【1968年発行】ラーマ9世 シリキット王妃 生誕36周年600バーツ金貨
タイのアンティークコイン|ラーマ4世 8バーツ金貨
王立造幣局の建設を命じ、タイ国内の硬貨製造を活発化させたラーマ4世に関するコインです。
発行年は1863年で、発行枚数は不明です。
肖像画の代わりに、表面には「モンクット王(ラーマ4世)」の紋章が、裏側にはタイの象徴である「像」がそれぞれ刻まれています。
コイン鑑定機関「NGC」に最高品質レベルとして認定されたものは、過去に約250万円ほどで取引されています。
また、グレードが少し下がったものでも100万円前後で取引されたケースもあり、タイのアンティークコインのなかではトップクラスの1枚と言えるでしょう。
発行された1863年には、同じ・もしくは似たデザインの4バーツ金貨と2バーツ銀貨もそれぞれ製造されています。
8バーツ金貨より取引価格は下がるものの、どちらも市場で少しずつ注目され始めているため、それらを含めて投資先として検討するのも良いでしょう。
タイのアンティークコイン|ラーマ4世 鄭明通宝(ていめいつうほう)
1864年に発行された「鄭明通宝」の金貨バージョンは、ラーマ4世生誕60周年を記念して作られたコインです。
同時期に銀貨も製造されており、それぞれの表面にはラーマ4世8バーツ金貨と同じく「プラ・マハ・モンクット」の紋章が刻まれています。
周囲には32個の星が描かれており、近くで見ると非常に華やかな印象です。
裏面には「鄭明通宝」という文字が四方に一文字ずつ刻印されており、中心には「伝統的な古い都」を意味する「クルン・サイアム」という言葉が刻まれています。
日本人からすると和同開珎を想起させるようなデザインとなっていて、馴染み深く感じるかもしれません。
株式会社銀座なみきFP事務所が運営している「How to invest in antique coins」によると美品は約300万円近くで取引されており、今後更に高くなる可能性もあるとのことです。
タイのアンティークコイン|ラーマ5世 4バーツ金貨
続いては、ラーマ4世の後を継いで国王となったラーマ5世のアンティークコインについてです。
こちらの金貨は1894年に発行されたもので、デザイン自体は先ほど紹介した「ラーマ4世8バーツ金貨」とほとんど変わりません。
状態が良いコインだと約80万円ほどで取引されたケースもあり、今後の価格上昇などが楽しみな1枚と言えるでしょう。
ちなみに、ラーマ5世は「チャクリー改革」によってタイの近代化を本格的に実現した王様です。
一般国民が広く教育を受けられるようにしたり、道路・鉄道整備によって交通網を発達させたりと、政治・教育・経済などの幅広い面で力を発揮してタイの独立を維持しました。
1910年に崩御した後も変わらずタイ国民から愛されており、名前の「チュラロンコーン」はタイの最高学府「チュラロンコーン大学」の由来にもなっています。
特に多くの功績を残したことから、ラーマ5世の時代は製造されたコインも多かったようです。
タイのアンティークコイン|ラーマ9世 400バーツ金貨
1946年から2016年までの70年間君主として在位した「ラーマ9世」の400バーツ金貨です。
在位25周年を記念して1971年に製造されました。
表面にはラーマ9世の横顔が繊細なタッチで刻まれています。
凛とした横顔と眼鏡が印象的で、君主を象徴するコインとしても魅力的なデザインです。
裏面には放射状に広がるラインとタイの仏塔のようなデザインが施されており、非常にきらびやかな1枚となっています。
これまで紹介したコインより圧倒的に手に入れやすく、状態が良いものでも約10万円程度で入手できる可能性があります(2024年3月現在)。
君主としてタイ国内では最長、世界でも3位の在位期間を誇るラーマ9世は、「王室プロジェクト」と称して地方視察を頻繁に行い、農民支援政策などを中心にタイの発展に尽力しました。
タイで最も敬愛されたラーマ9世の金貨なので、タイのアンティークコインの注目度が高まるのと同時に値上がりしていく可能性も高いでしょう。
タイのアンティークコイン|ラーマ9世 シリキット王妃 生誕36周年 600バーツ金貨
ラーマ9世の王妃で、現国王の母親であるシリキット女王の生誕36周年を記念して製造された600バーツ金貨です。
2024年3月現在も存命しており、ラーマ9世と同様にタイ国民から敬愛されています。
表面にはシリキット女王の横顔、裏側には寺院のようなデザインと、それを囲むお花の彫刻が施されています。
ラーマ9世の400バーツ金貨と同様に、価格自体はそこまで高くありません。
お手頃価格で入手できるので、夫婦セットで持っておくのも良いでしょう。
タイのアンティークコインの選び方
タイのコインは安価で入手しやすいですが、何でもかんでも手を出していると安物買いの銭失いになりかねません。
アンティークコインでインフレ対策や資産防衛を実現するには、現物資産投資の基本的なポイントを理解したうえで投資先を選ぶことが重要です。
アンティークコイン投資の落とし穴にはまらないためにも、ぜひ以下の2点を意識してみてください。
- 有名でレアなコインを選ぶ
- コインのグレードに注目する
有名でレアなコインを選ぶ
優位性のあるアンティークコイン投資を実現するには、たくさんの人が知っていて、なかなか手に入らないコインを選ぶようにしましょう。
知名度・希少性共に高いコインは売却しやすいため、急に現金が必要になった時でも換金しやすく、「売りたくても売れず、現金を用意できない」という流動性リスクも減らせます。
また、たくさんの人が欲しがるような珍しいコインは価値が高くなりやすくもあります。
欲しいと思う人が多ければ多いほど保有中に価値が高まっていくので、手放す時に高値で売却しやすいのです。
「売却のしやすさ」と「価値の高まりやすさ」を兼ね備えたコインへ投資して資産運用を成功させるためにも、知名度・希少性の両方が高いものを選ぶようにしましょう。
コインのグレードに注目する
コインの格付けのことを「グレーディング」と呼びます。
第三者機関による鑑定結果のことで、保存状態や希少性が高ければグレーディングも高くなります。
市場での取引価格はグレーディングに大きく左右されるため、アンティークコインを選ぶ時は鑑定結果を必ずチェックしなければなりません。
「MS(Mint State)」という未使用に近い状態から、「PO(Poor)」というかなりダメージがある状態までの範囲で評価されるので、コイン投資を検討している方は覚えておきましょう。
ちなみに、鑑定機関は「PCGS」と「NGC」が2大機関と呼ばれており、特に信頼に値します。
この2社に価値が保証されたコインは市場でも人気なので、投資先を選ぶ時の参考にしてみてください。
タイのアンティークコインに投資するメリット
2024年3月現在でタイのアンティークコインに投資するメリットを2つ解説します。
市場状況が変われば資産別の投資メリットも変化することを念頭に起きつつ、以下の2点を参考にしてみてください。
- 注目度が低く安値で買いやすい
- 値下がりしにくいから資産防衛に適している
注目度が低く安値で買いやすい
タイのアンティークコインは少ない資金で投資を開始し、先行者利益を得ることで雪だるま式に資金を増やしていきたい方の投資先としておすすめです。
アンティークコイン市場全体の注目度はここ数年で特に高まっていますが、タイのコインはまだ安値での取引が頻繁に行われています。
つまり、今のうちに安く入手しておけば将来的にずっと高値で売れる可能性が高くなるのです。
国内最大手のコインディーラー「株式会社アンティークコインギャラリア」の調査によると、国内コインオークションの開催回数と落札総額は共に右肩上がりだと判明しています。
コイン市場の拡大により、人気コインに手が届かなくなった人たちが今後タイのコインに注目し始める可能性は大いに考えられます。
入手が困難になる前に投資先として検討しておくと、優位性のある資産運用が実現しやすくなるかもしれません。
値下がりしにくいから資産防衛に適している
厳密には「100年以上前に製造されたコイン」がアンティークコインと呼ばれます。
1枚1枚に詰まった製造国の歴史や当時の彫刻家の息吹、長い間紛失・破壊されなかった幸運さなどが価値に直結しているため、数ある現物資産のなかでも値下がりしにくいのです。
経済状況に左右されにくい資産なので、インフレ対策の資産防衛に適しています。
マネートレンドNaviでは、アンティークコイン以外にもさまざまな現物資産の情報を発信しています。
公式LINEではおすすめ記事を定期的にレコメンドしているので、投資について気軽に触れたい方はぜひ追加してみてください。
タイのアンティークコインに投資する時の注意点
タイのアンティークコインは、歴史的価値や希少性から投資対象としておすすめです。
しかし、他の投資と同様にリスクが存在するのも事実です。
投資先として選ぶ前に知っておきたい、タイのアンティークコイン投資特有の注意点を紹介するのでご覧ください。
- コインの情報が集めにくい
- 流動性が低いためすぐに現金化するのが難しい
- 中長期保有を前提とした投資戦略を考える
- 丁寧に保管する
コインの情報が集めにくい
タイのアンティークコインの情報収集はかなり難しいため、大切な資金を守るためには情報の取捨選択を慎重に行うことが大切です。
日本語の解説記事も少ないため、英語やタイ語の情報に頼るケースも増えるでしょう。
正確かつ、最新の情報を得るには専門店でプロから話を聞くのが最適な方法です。
流動性が低いためすぐに現金化するのが難しい
市場自体は拡大しているものの、一般層にはまだまだ浸透していないのがアンティークコイン投資の現状です。
流動性が低いため、希望額での売却に時間がかかったり、そもそも取引自体成立しにくかったりするのがアンティークコインに投資するデメリットと言えるでしょう。
ライフプランを考慮したうえで、しばらく使わないお金を投資して余裕のある運用を目指すことをおすすめします。
中長期保有を前提とした投資戦略を考える
アンティークコイン投資は短期で大きな利益を得ることに向いていません。
数千万円〜数億円規模で落札されるコインでさえも、価値が高まるのに数十年、数百年という時間がかかっています。
特にタイのアンティークコインはこれから伸びていく可能性のあるコインです。
短期間での価格上昇に期待して、生活に必要な資金まで投資してしまわないよう注意してください。
丁寧に保管する
現存数が少ないアンティークコインは、保存状態が取引価格に特に大きな影響を及ぼします。
コイン専用のスラブケースや金庫のなかで丁寧に保管し、傷や汚れ、極端な温度変化などから守るようにしましょう。
アンティークコイン投資初心者の場合は特に十分すぎるほどの保管環境を整えておくと、自分の保有中に価値を下げてしまう可能性も低くなります。
タイのアンティークコインはどこで買える?
アンティークコインの購入ルートは主に「アンティークコイン専門店」と「オークション」の二つです。
アンティークコイン専門店では数百万円台のコインも含めて、幅広い価格帯のコインが取り扱われています。
投資先として興味があるコインを見つけた場合、直接店舗に訪問するか、連絡を取ってみるとインターネット上では得られない貴重な情報をプロから聞けるかもしれません。
一方、レアなコインやすでに価格が高騰しているコインはオークションでのみ登場するケースが多いです。
アンティークコインのオークションは国内外の会場やネット上で頻繁に開催されています。
誰でも参加できるオークションも存在するので、詳細を調べて会場に足を運んでみるとコイン投資の世界を肌で感じられるでしょう。
まとめ|タイのアンティークコインはこれからが狙い目!
アンティークコイン市場は今後も成長が見込まれる分野であり、中でもタイのアンティークコインは特に注目しておきたいジャンルです。
現在は比較的安価で入手できるものの、アンティークコイン特有の時間経過による価格上昇や、他の投資家の参入によって価値が上昇する可能性は十分考えられます。
市場動向を見極めつつ、早期に投資すると将来的に大きなリターンに繋がるかもしれません。
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