配当金を主な収入源とする「配当金生活」は、多くの人にとって理想的なライフスタイルのように見えるでしょう。
しかし、実際に配当金生活を送るには、様々な知識とリスク管理、そしてさまざまな銘柄に投資できるだけの資金力が必要不可欠です。
今回の記事では、配当金の種類や特徴といった基礎的な知識から、配当金生活のメリットとデメリット、配当金生活を送るための注意点などを紹介します。
配当金生活を送ることは決して簡単ではありませんが、株式投資に関する理解を深めれば深めるほど、損失リスクは下げられる可能性があります。
この記事を参考に、配当金生活を送るための第一歩を踏み出してみてください。
配当金は4種類ある
企業に投資をしてくれた株主に対して、利益の一部を還元するのが配当金です。
保有している株の数が多ければ多いほど配当金をもらう機会が増えるため、配当金生活の実現に近づきやすくなります。
また、配当金は大きく分けて4種類存在します。
企業ごとに出している配当金の種類を知ったうえで投資すると、収益性を高めやすくなるので、投資を検討している方は各配当金の特徴について理解しておきましょう。
一つずつ解説するので、ぜひご覧ください。
「普通配当」は当期利益から年に1回支払われる
「普通配当」は、企業が当期の利益から保有する株の数に応じて株主に支払う配当金のことを指します。
「通常配当」と呼ばれる場合もあり、配当金のなかでは最もスタンダードな存在です。
この配当をもらうには、株の銘柄ごとにそれぞれ決められた「権利確定日」まで株を保有する必要があります。
配当をもらいたい場合は、権利確定日となる2営業日前までに株を購入している必要があるので、配当金目的で投資する方は必ず覚えておきましょう。
配当が支払われるのは権利確定日のおよそ2ヶ月〜3ヶ月後です。
多くの企業は決算期を3月に定めているため、だいたい5月か6月ごろに配当金が支払われると考えておきましょう。
配当金の受け取り方は豊富にあり、証券口座や指定の金融講座に振り込んでもらう場合もあれば、企業から送付される「配当領収書等」を持って郵便局窓口で受け取る方法があります。
現在は、迅速かつ、手間が発生しない口座受取が主流となっています。
ちなみに、企業や関連会社の商品を安く買えるような優待券などは、配当ではなく「優待」なので混同しないように注意しましょう。
「中間配当」は年2回配当を出す企業が支払う
「中間配当」は、普通配当とは別の機会に支払われる配当金のことを指します。
通常決算期に支払われる普通配当と違い、中間配当は決算期の半年後に行われるのが特徴です。
たとえば、3月を決算期としている企業なら、中間配当は9月に実施されます。
当期の利益を還元する普通配当と違い、中間配当は前期の利益余剰金が財源となっているため、必ずしも支払われるわけではないことを理解しておきましょう。
ちなみに、企業によっては「四半期配当」といって四半期ごとに剰余金を配当する企業もあります。
年度内に複数回配当金を払ってくれる企業は、配当金生活を目指す方にとって魅力的な存在です。
投資銘柄を探す際には、ぜひ中間配当の有無にも目を向けてみてください。
「特別配当」は企業業績が好調だった時に支払われる
「特別配当」は、企業の業績が非常に好調だった際に支払われる配当金のことです。
普段より多く配当をもらえるため魅力的に見えますが、あくまでも一時的な配当であることは忘れてはいけません。
以前特別配当があったからといって、その投資にするのは早計と言えるでしょう。
ちなみに、特別配当には会社のイメージをアップさせる効果があります。
企業業績がアップした時に、普通配当金をアップすると、業績が戻った際に減額となりマイナスイメージがつきがちです。
しかし、特別配当という形で還元をすると、業績が戻った時に特別配当をなくすだけで済むため、イメージダウンになりにくいという特徴があります。
ただ、企業としても何度も払える配当金ではないため、大きく期待しすぎるのは危険です。
特別配当があった銘柄は気になりますが、その後の業績の推移などもしっかり見極めたうえで投資を検討するのが懸命でしょう。
「記念配当」は企業の創立などを記念して支払われる
企業の創立や創業〇〇周年といったことを記念して実施されるのが「記念配当」です。
特別配当と同様に一時的な配当ではありますが、企業によっては普通配当よりも多い配当金を支払うケースもあります。
何度も貰えるわけではないため、「貰えたらラッキー」程度の感覚でいるのがベストですが、仮に配られれば投資収益が大幅にアップすることは間違いありません。
配当金生活を送るメリット
4種類存在する配当金ですが、これらを計画的に受け取れれば、生活を営むにあたって大きなメリットを得られる可能性が高くなります。
実際、さまざまな銘柄に投資し、その配当金を得ることで生活している投資家の方々も少なくありません。
ここでは、配当金生活の3つのメリットについて解説します。
- 労働から開放される
- 働けなくなった時でも生活が安定する
- 株価変動の影響をすぐに受けることがない
労働から開放される
配当金生活を送る1つ目のメリットが、労働から開放されることです。
かなりの株数に投資することが前提ですが、食費や家賃はもちろん、娯楽費などを配当金だけで賄えるようになると、「会社勤め」という選択肢を必ずしも取る必要がなくなります。
会社に行くことで受けるストレスからも開放され、人生の歩み方が大きく変わるきっかけにもなるでしょう。
また、働くための時間が浮くことで、自分や家族に回せる時間も増やすことができます。
これまで住んでみたかった場所に移住も可能ですし、何事にも囚われない生活の実現がしやすくなるのが配当金生活のメリットです。
働けなくなった時でも生活が安定する
配当金生活を送る2つ目のメリットが、働けなくなった時でも生活が安定することです。
会社勤めをしている際に体調を崩すと、これまで通り働けないことでお給料ももらえなくなります。
特に、毎月ギリギリお金を回している家庭などは、1日も仕事を休めない状況が続いていることもあるのではないでしょうか。
しかし、定期的に配当金が受け取れる生活なら、仮にメインの収入が途絶えたとしても、いきなり生活が悪い方向に一変してしまうことはありません。
配当金の額は企業の利益によって変動こそするものの、生活基盤をこれまで以上に安定させるきっかけにはできるはずです。
お金に関する安心感を得られるため、常にプレッシャーに追われながら毎日を過ごす必要がなくなるのも配当金生活のメリットと言えるでしょう。
株価変動の影響をすぐに受けることがない
配当金生活の3つ目のメリットは、株価変動の影響をすぐに受けることがないということです。
はじめに、株価変動の影響を受ける投資スタイルはどんなものかと言うと、株の短期売買を繰り返して、購入時と売却時の差額を利益とするもの。
この投資スタイルで株を購入する場合は、保有していた銘柄の株価が大暴落し、一気に損失を抱えてしまう可能性があります。
しかし、最初から配当金を目当てに投資している場合は、株価の変動によって急に損失を抱えることはありません。
そもそも株価は配当金の低下と同時に下がりやすいため、株価が下がった時にはすでに受け取れる配当金も減っていることがほとんどです。
額は少なくなっても、定期的に配当がもらえていれば、投資としての一定の目的は果たせています。
配当金を狙った投資スタイルは株価の変動に一喜一憂しにくくなるため、メンタルの安定に繋がりやすいと言えるでしょう。
配当金生活を送るデメリット
配当金生活を実現できると、豊かな人生を得やすくなるのは事実です。
しかし、決して人生の問題がすべて解決するようなものではありません。
当初立てていた人生計画が徐々に逸れていってしまうようなデメリットも存在するため、投資をする前には必ず把握しておきましょう。
- 減配や無配が起こると収益が減る
- 再就職が困難になりかねない
減配や無配が起こると収益が減る
配当金生活を送る1つ目のデメリットは、減配や無配が起こると収益が減ることです。
配当金は株を保有しているだけで得られる魅力的な収入形態ですが、常に確実に支払って貰えるわけではありません。
配当は企業の利益を還元するものなので、財源となる当期利益などが少なければ、もちろん配当金も減ってしまいます。
前期よりも配当金が減ることを「減配」、そもそも配当が実施されないことを「無配」と呼び、投資した銘柄でこのようなことが起こると収入が少なくなります。
仮に就業していない場合は収入源を失う可能性もあるため、一つの銘柄で配当金がもらえなくなっても、別の銘柄で配当金をもらうための分散投資が重要となるのです。
再就職が困難になりかねない
配当金生活を送る2つ目のデメリットは、再就職が困難になりかねないことです。
配当金生活が一時的に実現できた場合、収入源が増えたことで仕事をやめてしまう方も少なくないはず。
常に配当金を貰えていれば問題ありませんが、仮に減配や無配が発生し、その後も配当が貰える銘柄に投資できなければ、収入がなくなってしまいます。
収入がなくなれば生活のために再就職を考えるかもしれませんが、仕事をしていなかった期間が長ければ長いほど、企業にとっては採用するのが難しくなります。
結果的に新たな働き口が見つからず、生活を送るのが危うくなってしまう可能性があるでしょう。
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配当金生活を実現する銘柄の探し方は?
配当金生活を実現するには、安定して配当を得続けられる優良銘柄を探すことが重要です。
ただし、投資初心者だとどんな部分に注意して銘柄を探せばいいかわからない方も少なくないはず。
この項目では、配当金生活を実現するための銘柄探しのポイントを解説します。
投資に絶対はありませんが、少しでも良い投資結果を得るための一助となれば幸いです。
企業の業績をチェックする
気になる銘柄を見つけた際には、必ず企業の業績をチェックしましょう。
売上高や営業利益をチェックし、これらの項目が前期から伸びていればポジティブに捉えられます。
基本的にはどちらも伸びていないと、なかなか投資に踏み切るのは難しいでしょう。
なぜなら、売り上げは増えていても、利益が増えていなければ企業にとって良い結果だったとは言えないからです。
業績から配当が増えることが予想できる銘柄に絞って投資すると、安定して配当金を得やすくなります。
配当性向をチェックする
業績と共に、配当性向をチェックすることも重要です。
配当性向とは、当期純利益からどれだけを配当金として支払うかを表した指標です。
この説明だけ見ると配当性向が高い企業の銘柄に投資する方が良いように感じますが、実際はそうとも限りません。
配当性向は企業の伸びしろをチェックするのに適しています。
あまりにも低いと投資額に見合った配当金を得られない可能性がありますが、だいたい30%〜50%くらいだと、今後も配当性向が伸びていき、ちょうど増配期間に配当金を得られる可能性が出てくるのです。
企業としても、今後さらに成長していくには資金が不可欠。
利益の多くを配当金に回していては、なかなか成長の余地は生まれません。
企業自身が事業に投資できており、そのうえである程度の配当も出してくれているのがちょうど良いと言えるでしょう。
配当金生活を実現するための手順
配当金生活を実現するには、手順を踏んで投資をしていくのが重要です。
ここではその手順について紹介するので、初めて配当金生活の実現のために行動する人はぜひ参考にしてみてください。
生活費を参考に配当金の目標を設定する
まずは、自身の生活を営むのにどれくらいの配当金を受け取る必要があるか理解しましょう。
家賃や光熱費、保険料といった固定費から、毎月変動する費用の合計費用を算出しないと、どの銘柄にどのくらい投資すべきなのか決めることができません。
慎重に投資先を決める
生活費を算出したら、それを得られるだけの投資資金を用意しなければなりません。
仮に毎月の生活費が30万円だと、1年で約360万円のお金が必要になります。
1年間で受け取れる配当を表す「配当利回り」が5%の銘柄に投資する場合、1年間で360万円の配当をもらうには7,200万円ものお金が必要です。
【計算式】
360万円÷5%=7,200万円
7,200万円の資金を投資し、計画通りに運用が進めばはじめに算出した生活費での生活が配当金だけで実現できるようになります。
おすすめ銘柄で年間300万円の配当を得るのに必要な資金は?
ここからは、おすすめの銘柄で年間300万円の配当を得るには、どのくらいの資金を投資する必要があるのか紹介します。
銘柄ごとの特徴や、最低購入金額、配当利回りもご紹介するので、銘柄の内容を調べる練習としてもご利用ください。
なお、紹介している銘柄は2024年4月30日現在「みんかぶ配当利回りランキング」で上位となっているものです。
- 1位:KSK
- 2位:レイズネクスト
- 3位:アイティメディア
- 4位:PHCホールディングス
- 5位:NEW ART HOLDINGS
- 6位:エキサイトホールディングス
- 7位:アバールデータ
- 8位:日本食品化工
- 9位:ユナイテッド
- 10位:アールビバン
1位:KSK
ソフト開発など、ネットワークサービスを主力としている企業です。
最低購入金額は34万2,500円で、配当利回りは6.59%となっています。
【KSKに投資して年間300万円の配当を得るのに必要な資金】
360万円÷6.59%=5,462万円
2位:レイズネクスト
石油や医薬品などを取り扱う設備のメンテナンスやエンジニアリングを行う企業です。
最低購入金額は20万3,000円で、配当利回りは6.40%となっています。
【レイズネクストに投資して年間300万円の配当を得るのに必要な資金】
360万円÷6,40%=5,626万円
3位:アイティメディア
ニュースサイトを運営するソフトバンクグループの子会社です。
幅広い領域のメディアサイトを保有しています。
最低購入金額は18万1,500円で、配当利回りは6.33%となっています。
【アイティメディアに投資して年間300万円の配当を得るのに必要な資金】
360万円÷6.33%=5,687万円
4位:PHCホールディングス
ヘルスケアに関する機器を取り扱っており、特に糖尿病ケアに対して強みがある企業です。
最低購入金額は11万4,000円で、配当利回りは6.31%となっています。
【PHCホールディングスに投資して年間300万円の配当を得るのに必要な資金】
360万円÷6.31%=5,705万円
5位:NEW ART HOLDINGS
ブライダルジュエリーを販売したり、女性向けエステサロンを運営している企業です。
最低購入金額は16万4,000円で、配当利回りは6.07%となっています。
【NEW ART HOLDINGSに投資して年間300万円の配当を得るのに必要な資金】
360万円÷6.07%=5,930万円
6位:エキサイトホールディングス
人気ブログサービス「エキサイトブログ」を中心に、DX事業を手掛ける企業の一つです。
最低購入金額は10万1,200円で、配当利回りは5.92%となっています。
【エキサイトホールディングスに投資して年間300万円の配当を得るのに必要な資金】
360万円÷5.92%=6,081万円
7位: アバールデータ
通信関連機器の開発や製造、設計などを行っている国産企業です。
最低購入金額は53万6,000円で、配当利回りは5.91%となっています。
【アバールデータに投資して年間300万円の配当を得るのに必要な資金】
360万円÷5.91%=6,091万円
8位:日本食品化工
三菱商事グールプの企業で、さまざまな食品に利用されるデンプン「コーンスターチ」を中心に、繊維や医薬品なども取り扱っています。
最低購入金額は34万5,000円で、配当利回りは5.79%となっています。
【日本食品化工に投資して年間300万円の配当を得るのに必要な資金】
360万円÷5.79%=6,217万円
9位:ユナイテッド
アプリの開発やプログラミング教育など、デジタル社会に欠かせないスキルを身につけられるスクールを運営している企業です。
最低購入金額は8万3,500円で、配当利回りは5.74%となっています。
【ユナイテッドに投資して年間300万円の配当を得るのに必要な資金】
360万円÷5.74%=6,271万円
10位:アールビバン
アートを中心に、ヨガやフィットネスといった事業を複数展開し、豊かな人生を作り上げるサポートをしている企業です。
最低購入金額は10万4,000円で、配当利回りは5.73%となっています。
【アールビバンに投資して年間300万円の配当を得るのに必要な資金】
360万円÷5.73%=6,282万円
配当金生活を送る時の注意点
配当金生活を送るためには、いくつかの注意点を押さえながら投資を進めていかないと、せっかく調達した資金も水の泡になってしまう可能性があります。
ここでは、安定した配当金生活を実現するために意識してほしい3つのポイントを紹介するので、投資初心者の方は特にご覧ください。
- 分散投資でリスクを軽くする
- 継続して配当を受け取れる銘柄を探す
- 労働はしていなくても日々の市場分析は必要
分散投資でリスクを軽くする
配当金生活を送る際は、特定の銘柄に偏って投資しないことが重要です。
一つの企業や業界に集中して投資すると、その企業や業界の業績が悪化した場合、大きな損失を被ってしまいかねません。
一方、異なる業種や規模の企業に分散投資しておけば、一つの業界で損失が生まれても、別の業界から得た利益で損失をカバーできます。
別の企業や業種だけではなく、国内・海外のように投資対象を広げると、より分散投資の効果が高くなりますよ。
継続して配当を受け取れる銘柄を探す
配当金生活を少しでも長く続けるには、継続的に配当を受け取れる銘柄を選ばなければなりません。
配当利回りが高い銘柄だけに注視するのではなく、企業の状況や業績、配当方針などを加味して、総合的に投資対象を選ぶことが重要です。
労働はしていなくても日々の市場分析は必要
配当金によって十分な配当金を受け取れていると、会社で働く必要性を感じなくなる場合があります。
その結果、退職して自由気ままな人生を選択する方もいますが、決して24時間常に好きなことができるわけではありません。
安定して配当を貰い続けるには、それ相応の銘柄に投資し続けることが必要となります。
投資ポートフォリオの見直しに加え、投資している企業の業績チェックやトレンドの動向を追うなど、一般企業勤務の時よりもお金にシビアになることが求められます。
まとめ:配当金生活を実現すると人生の幅は広がるが相応の学習は必要
株を保有しているだけで得られる配当金はお財布の中身を潤してくれるだけではなく、生活そのものを大きく変えてくれる場合があります。
しかし、配当金生活への道のりは決して楽ではありません。
必要な資金の調達や、銘柄を厳選するための株式投資に関する知識、常に経済市場を追い続ける執念など、会社勤めを続けるのとは違うエネルギーが必要です。
株式投資で結果を出すには、学習を継続し、目まぐるしく変動する経済市場に着いていくことが求められます。
夢の配当金生活はコツコツと努力を継続した先にあるものなので、それを忘れないようにしましょう。