風景を描いた有名な絵画と画家を紹介します。自然を美しく描写する風景画はいつの時代にも愛され、心を和ましてくれますが、特に有名な作品があり、際立つ特徴を持っています。思わず引き込まれるようなそんな作品を取り上げてみます。
風景画とは?
まずは、風景画とはどのような絵なのかを解説しましょう。
特徴
風景画とは、ズバリ風景をテーマにした絵画のことです。対象となる風景は山、渓谷、木々、河川、森など様々で、空や天候が含まれていることが多いです。
風景画は人々を魅了する絵画で、自宅やオフィスに飾る人も少なくありません。実際にその風景を見る機会がなくても、風景画からイメージをつかんで楽しむことができます。
歴史
風景画の歴史を見てみましょう。
西洋美術史上最初の風景画は「テンペスタ」という作品だと言われています。テンペスタとは嵐のことですが、こちらの作品では嵐の予兆が描かれています。「テンペスタ」を描いたのはルネサンス期の巨匠ジョルジョーネで、1506~1508年のことでした。
しかし、15世紀初頭にはヨーロッパで風景画というジャンルがすでにあったともいいます。風景だけでなく、人物も含まれた絵画になりますが、宗教的なテーマ「エジプト逃避中の休息」「東方三博士の旅」「砂漠の聖ジェローモ」として描かれています。
17世紀のオランダでは、風景画の専門家が登場。平坦なオランダの地形を活かしながら、空や雲を描いた作品となっています。
19世紀のヨーロッパでは、バルビゾン派といって、野外で直接風景を観察しながら描く手法が生まれました。
19世紀半ばになると写真が実用化されましたが、絵画独特の表現方法から印象派が生まれ、独自の風景画が描かれるようになります。
日本で風景画が描かれるようになったのは明治以降のことですが、江戸時代には萌芽も見られます。日本各地の宿場や名所を描いた浮世絵などが例です。
何を描けばいい
風景画を描く場合、何を題材にしたらいいか悩むものです。初心者がいきなり描こうと思って、いい題材を見つけにくいかもしれませんが、まずは手近な題材に当たってみましょう。
山や湖畔、家の窓から見える光景や散歩コースの光景などですね。取り組みやすい題材からスタートすれば、上達もしやすいでしょう。
絵画の中で有名な風景画と画家
これまでに多くの絵画が描かれてきましたが、その中から有名な風景画とその風景画を描いた画家を取り上げてみます。
クロード・モネの「印象・日の出」
「印象・日の出」はクロード・モネが1872年に描いた風景画。1874年4月に開催された「画家、彫刻家、版画家などの美術家による共同出資会社第1回展(第一回印象派展)」で初お目見えとなりました。
描かれているのはモネの故郷ル・アーヴルの港で、部屋の窓から描いたといいます。霧の中の太陽とそそり立つ何本かのマストが前景になっています。
本作品の画法の特徴は細部を簡略化し、全体のバランスを取っていること。色調は異なるグレーのレイヤーで構成され、曖昧ながらも深遠さを与えています。
フィンセント・ファン・ゴッホの「星月夜」
「星月夜」はフィンセント・ファン・ゴッホが1889年、36歳の時に描いた風景画です。渦巻く夜空に星と月が描かれたこの作品はゴッホの代表作です。ゴッホが精神病院にいるときに窓から風景を見て、描きました。この作品を描いた翌年、ゴッホはピストル自殺しました。
絵の特徴を見てみましょう。星空は激しいタッチで描かれていますが、下には教会や村が存在しています。しかし、実際にはこのような村はありませんでした。
ゴッホは実際に見たものを描く画家として知られているので、矛盾しています。この矛盾の理由は彼の幻覚です。幻覚で精神病院に入院していたゴッホが幻の村を見たことになります。夜空が渦を巻いている様子も幻覚によるのかもしれません。
作品の左側には糸杉が写っていますが、天と地をつなぐ「死の架け橋」を表現しているのではないかと言われています。
現在、「星月夜」はニューヨーク近代美術館に収蔵されています。
ヨハネス・フェルメールの「デルフトの眺望」
「デルフトの眺望」はヨハネス・フェルメールが1660~1661年にかけて描いた風景画です。フェルメールの作品では風景画が2点しかなく、めずらしい存在になっています。
描かれているのはフェルメールの故郷デルフト。フェルメールはデルフトで生まれ、生涯デルフトで生活したので、題材に取り上げたのでしょう。
ただし、作品と実際のデルフトの光景は違います。建物の配置や寸法、水面に映る姿などは現実の姿とは異なっています。画面構成を優先したためでした。
それでも、昔のデルフトの姿がリアルに再現されているようで、目に訴えるものがあります。
描かれている時期は夏の初め。全体の7割が空で、雨の日が多いオランダに覆いかぶさるような暗い雲と水蒸気に反射してきらめく光を巧みに表現しています。
町並みに含まれるのは次のような建物です。
- 旧教会:フェルメールが埋葬された教会
- 武器庫:赤い屋根と階段状の破風が特徴
- スヒーダム門:時計塔として機能していた
- 橋:2つの運河の合流地点にかかっている
- 新教会:代々オランダ王室の墓がある
- ロッテルダム門:現在東門が残っている
ピーテル・ブリューゲル1世の「バベルの塔」
旧約聖書の逸話でよく知られる「バベルの塔」。ピーテル・ブリューゲル1世がこの「バベルの塔」を描いた作品を3点残しています。このうち1点は伝わっていないので、現在残っているのは「大バベル」と「小バベル」の2点です。
いずれにしろ、実際にはバベルの塔というものは当時も現在もありませんから、風景画といっても想像で描いた架空画になります。
「小バベル」は「大バベル」の半分程度のサイズで、いずれの構成も似ていますが、細部に差があります。塔、上空、塔周囲の背景などです。
また、「大バベル」の方は塔が大都市に面しているのに対して、「小バベル」は田園風景に囲まれているのも違う点です。写真で紹介したのは「小バベル」です。
「大バベル」はウィーン美術史美術館収蔵、「小バベル」はボイマンス=ファン・ブーニンゲン美術館収蔵となっています。
レンブラント・ファン・レインの「石橋のある風景」
「石橋のある風景」は1638~1640年にレンブラント・ファン・レインが描いた風景画です。「石橋」とも呼ばれています。
レンブラントは数多くの風景をエッチングで制作していますが、油彩画はめずらしく、そのうちの一つが本作品です。風景画といっても、実際に景色を見て描いた作品ではありませんが、元になるのはアムステルダム近郊で実際に見ていたであろう橋や風景になります。
光と暗雲に囲まれた橋の描写は劇的かつ魔術的。嵐がまもなくやってくる緊迫感が巧みに写し出されています。
石橋はアーチ状で右側は霞がかり、微妙な明暗も表現。橋の後ろ側には一艘の小舟、橋のこちら側には2人の人が乗った小舟が描かれ、一人が竿を持ちながら、船を進めています。
写真からは少し見えにくいですが、左端に赤い切妻のある宿屋があります。そのほか、細かい描写を茶色と灰色で完全に表現しているのが特徴です。
アルフレッド・シスレーの「ヴィルヌーヴ・ラ・ガレンヌの橋」
「ヴィルヌーヴ・ラ・ガレンヌの橋」はアルフレッド・シスレーが1872年に描いた風景画です。
ヴィルヌーヴ・ラ・ガレンヌはセーヌ川沿いの小さな村で、シスレーはここを数回にわたり訪れて、夏の風景画を完成させました。
人物としては、岸辺でくつろぐ恋人たちや橋の下の貸しボートで出発した2人の女性などが描かれています。橋は広い青空と好対照を成す立体的な構造、建物は幅の広い水平方向の筆致、木や草は不規則な緑で配置。水面は鮮やかな青で彩り。全体に明るい色合いと描写で、夏の橋のたもとのひとときを美しく描いています。
シスレーについてひとこと説明しておきましょう。シスレーはイギリス人ですが、フランスで印象派として活躍しました。作品のほとんどは風景画で、他の画家が画風を変えていったのに対して、シスレーは印象派を貫いています。
歌川広重の「東海道五十三次之内」
「東海道五十三次之内」は歌川広重が制作した有名な浮世絵木版画。東海道五十三次の風景や習俗、人物などを描いた作品です。
各地域の様子は明快な色のコントラストとユーモラスな描写で描かれ、全体に軽快な仕上がりになっています。
版行されたのは天保3年(1832年)で、この作品を元に歌川広重は不動の風景画家としての地位を確立しました。
横山大観の「春の水・秋の色」
横山大観は1868年に生まれ、1958年に死亡した日本の画家です。線描を抑えた独特の没線描法を確立した人物として知られます。
その横山大観の代表的な風景画が「春の水・秋の色」。「春の水」では、山桜の咲く春に、木材を筏にして運ぶ光景が描かれています。「秋の色」は紅葉の元、馬に乗った人物がいる川辺の光景を描写しています。
いずれにしろ、心が洗われるような美しさが魅力です。
黒田清輝の「湘南の海水浴」
「湘南の海水浴」は明治41年(1908年)に黒田清輝が描いた風景画です。明治時代に海水浴を楽しんでいた人の様子が描かれています。当時の人々の姿を忍べる貴重な作品といえるでしょう。
きらめく水面、人々の様子は軽妙なタッチで美しく描かれています。現在でも存在感のある風景画です。
東山魁夷の「道」
東山魁夷の「道」は昭和25年(1950年)に描かれた風景画です.モデルとなった道は種差海岸(たねさしかいがん)に並行して走る現在の県道1号線です。
1本の道がテーマになっていて、特定の場所性をみじんも感じさせません。このシンプルな光景が多くの人を魅了するところとなりました。
描くときは、道だけの構図で不安であったそうですが、他に何も入れたくなかったとのこと。現実の道ではなく、象徴的な道を描くつもりだったそうです。
東山魁夷は明治41年(1908年)に生まれ、平成11年(1999年)に亡くなった日本の画家。風景画の他、著述家としての作品も多数あります。
風景画を飾る魅力
日本と海外の有名な風景画と画家を紹介しましたが、それらを含めて、風景画を飾ることには独特の魅力があります。風景画ならではの魅力ともいえますが、どんな魅力か紹介しましょう。
気持ちがリラックスする
風景画を見ていると、気持ちがリラックスします。人物画や静止画とは少し趣が違い、精神的な癒やし効果があるのです。
美しい自然を描いた風景画を見ていると、心がきれいになるような気もするでしょう。それが現代のものであっても昔のものであっても変わりません。
風景画が描かれた場所に行ってみたくなるかもしれません。思わず惹き込まれてしまい。うっとりすることもあるでしょう。
懐かしさを感じさせてくれる風景画もあります。いずれにしろ巧みに描かれた風景画で日頃のストレスも忘れられます。
インスピレーションが得られる
風景画からインスピレーションを得られる場合もあります。
風景画は様々なテーマを扱い、その扱われているテーマを見ることで、何らかのアイデアが浮かぶこともあるでしょう。関連した絵画を描く場合だけでなく、日常生活にも旅行時にも役立つ着想が生まれるかもしれません。
部屋を広く見せてくれる
風景画を飾ると、部屋が広く見えます。例えば、窓から景色を見ているような風景画。開放感があって、実際に部屋の雰囲気が変わったように写ります。
水色や爽やかな青、白、鮮やかな緑色などを使った風景画もおすすめ。これらの色も開放感をもたらし、部屋を広く見せてくれるでしょう。
奥行きのある風景画もいいですね。空や海、草原などをモチーフにした風景画も心、部屋ともに広く感じさせます。
部屋を広く見せる風景画の飾り方のポイントもあります。まず、大きめな風景画を飾りたいところ。大きくて開放感がある風景画なら、確実に部屋が広く見えます。
ただし、絵の周りの余白を意識しましょう。あまり大きな風景画で余白が少ないと、圧迫感が生じ、かえって部屋が狭く見える場合もあります。
飾る場所は家具が置いていない広い壁のスペースか、そのような場所がなければ、背の低い家具が置いてある場所にします。
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風景画は投資アイテムとしておすすめ
風景画は投資アイテムとしてもおすすめです。美しく描かれた作品なら、時間の経過とともに価値が上がり、売却したときの収益を上げやすくなります。
そんな風景画投資のメリットを考えてみましょう。
急激な価格リスクが低い
株式や債券は景気の影響も受けやすく、急激に価格が下がることがありますが、風景画を投資対象にしてもそのようなことは起こりにくいです。
風景画の種類や画家にもよりますが、価値を大きく上げているものもあります。保管費用はかかるものの、リターンが大きくなる可能性も高いです。
趣味にも資産にもなる
風景画を投資対象にする前に、趣味として飾りながら楽しむこともできます。美術館で眺めるのも悪くはありませんが、自宅に飾っておくと、新たな発見や気づきもあるでしょう。画家の息づかいが伝わってくることもあります。
趣味として存分に堪能してから、売却し、収益につなげられれば言うことなしですね。
減価償却資産になる
風景画のような絵画は減価償却資産として計上できます。法人の場合は、取得価額が100万円以内の場合、個人事業主の場合は30万円までの作品であれば、減価償却費に該当できます。
有名な風景を描いた絵画を見られる美術館
有名な風景画を見てみたいと思ったときに鑑賞ができる美術館を紹介しましょう。
東京富士美術館
東京富士美術館は東京都八王子市にある美術館で、西洋東洋の様々な美術作品を収蔵しています。風景画の所蔵点数も多数。
代表的な所蔵風景画としては、次のようなものがあります。
- ファン・ホイエンの「釣り人のいる川の風景」
- ジョセフ・マラード・ウィリアム・ターナーの「嵐の近づく海景」
- クロード・ロランの「小川のある森の風景」など
国立西洋美術館
国立西洋美術館は東京都台東区上野公園にある美術館です。所蔵美術品の数はおよそ6,000点。その中に風景画もたくさんあります。
代表的な所蔵作品を見てみましょう。
- アレッサンドロ・マニャスコの「嵐の海の風景/羊飼いのいる風景」
- ヤーコプ・ファン・ロイスダールの「砂丘と小さな滝のある風景」
- ヤン・ボトとコルネリス・ファン・ブーレンブルフの「ニンフのいる風景」など
国立国際美術館
国立国際美術館は大阪府大阪市にある美術館です。世界的に見てもめずらしい完全地下型の美術館で、独特の外観デザインが特徴になっています。2022年3月現在、収蔵作品数は約8,200点です。
風景画では、次のような作品を所蔵しています。
- 田中信太郎の「波の橋、あるいは幻日」
- ジャン・メッサジェの「風景」
- ポール・ジェンキンスの「現象ー黒い秋」など
各地方の美術館や展覧会も注目
上記は代表的な日本の美術館で、所蔵している有名な風景画も多く、展覧会も定期的に実施されています。
この他にも日本には優れた各地の美術館があり、独自の風景画を収集して、展覧会も行っています。見応えのある作品を所蔵していたり、展示したりしていることもあるので、地方美術館にも注目してみましょう。
まとめ|風景を描いた有名な絵画を見に行こう
今回は、風景を描いた有名な絵画と画家を紹介しました。
風景画を飾ると、心もリラックスし、インスピレーションも得られ、部屋が広く見えるなど、様々なメリットがあります。さらに投資対象としてもおすすめで、価値が減じにくくなっています。
皆さんも風景画を集めて、大事に保管し、投資をしてみてはいかがでしょうか。あるいは、有名な風景画の展覧会に行ってみて、楽しく鑑賞してみてください。
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