キューバにクラシックカーが多いのはなぜ?文化や政治の面から詳しく解説

キューバ クラシックカー

キューバの風景を彩る美しいクラシックカーたち。

キューバを訪れた旅行者は必ずと言っていいほど、カラフルでレトロな香りを感じさせる車たちに目を奪われます。

しかし、これらのクラシックカーはキューバの人々にとってただの風景の一部ではありません。

過去の歴史、家族の絆、そして生活の必需品として、彼らの日常に深く根付いているのです。

キューバの街にこれだけのクラシックカーが溢れ、観光の目玉にもなっている理由は一体なぜでしょうか?

その理由を、キューバの文化や政治など、様々な側面から解説していきます。

目次

キューバではクラシックカーが日常的に走っている

キューバはカリブ海に位置する社会主義国家であり、1511年にスペインによって植民地化された後、戦争を経て1898年にスペインから独立しました。

美しい白砂のビーチにエメラルドグリーンの海、様々な歴史を感じさせるコロニアル建築など、数多くの表情が見られるキューバは観光地としても人気です。

中でも特に観光客から注目を浴びるのが、クラシックカーの存在。

日本どころか、アメリカでもなかなかお目にかかれないレアなクラシックカーが、キューバでは当たり前のように走っているのです。

今から約70年近くも前に作られた車が、美しい外観を保ちながら国民や観光客の足として現役で活躍する姿はキューバの象徴的な風景となっています。

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なぜ?キューバでクラシックカーを大量に見かける理由

なかなか手に入らないクラシックカーですが、なぜキューバでは当たり前のように走っているのでしょうか?

その理由をキューバの文化と政策の2つの面から解説します。

  • 車が親から子へ受け継がれる文化が根強く残っている
  • 新車価格が高いため買い替えづらい
  • 自動車売買に許可が必要だった

車が親から子へ受け継がれる文化が根強く残っている

キューバの街を歩くと、アメリカ製のクラシックカーが至るところで目に入ります。

その理由は、単に経済的な要因だけでなく、車を大切にする文化と、家族の間で受け継がれる習慣が背景にあると言えるでしょう。

キューバで新しい車を手に入れるのは非常に大変です。

一般の家庭では、何世代にもわたって節約を重ねてやっと手が届くといっても過言ではありません。

しかし、その困難な状況が、車を一家の宝として大切にする文化を育んできました。

1959年のキューバ革命以降、アメリカから車を輸入できなくなっても、キューバの人々は革命以前から所有していた車を修理や手入れをしながら、次の世代へと繋いできたのです。

街中でよく見かけるピカピカのクラシックカーは、実はオリジナルの部分を残しつつ、何度も修理や塗り直しが施されています。

こういった文化が今日まで続いていることが、クラシックカーを日常的に見かけるキューバならではの風景が今もなお残っている理由です。

キューバ国内を走るクラシックカーは、単なる移動手段としてではなく、家族の歴史や思い出の詰まった宝物として受け継がれているのです。

新車価格が高いため買い替えづらい

1959年のキューバ革命以降、キューバ国内で自動車の売買を行うには許可を受ける必要があり、新たな車が手に入りづらい状況が続いていました。

2011年になると、およそ50年制限されていた車の自由売買がようやく行えるようになったのですが、そこにもう一つ大きな壁が立ちはだかります。

その壁というのが、キューバ政府が決めたルールによる価格の高騰です。

日本貿易振興機構「キューバ経済の動向」でも語られているように、キューバでは【2013年財務価格省決議543号】によって車の小売価格が以下のように設定されています。

「車両価格×8.0+関税」

自動車部品は「車両価格×2.2+関税」

この決まりにより、本来数百万円で購入できる車が、何千万円という価格まで高騰しているのです。

車の売買が許可制ではなくなった代わりに、上記のようなルールが課されたことで今もなお実質車を購入できない状態が続いています。

キューバの方々は、海外から車を手にすることを泣く泣く諦めざるを得ない状態なのです。

経済の自由化を図る一方で、社会主義が色濃く残る部分もまだまだ存在しています。

「車を大切に乗り継ぐ」という美しい文化だけではなく、こういった側面もクラシックカーが走るキューバならではの日常を作り上げていると言えるでしょう。

国民の年収が車の価格にまったく届かない

国民の年収が、あまりにも高い新車価格に届かないのも、キューバの人々がクラシックカーを使い続ける理由の一つです。

CUBA DEBATEによると、2019年のキューバの平均給与は879ペソ。

当時のレートから換算すると日本円で約7,911円です

これでも過去5年で若干増加しており、非常に低い給与水準からキューバ国内の経済状況の厳しさが伝わってきます。

この給与を考えると、新車や中古車を購入するのはほぼ不可能と言えるでしょう。

2014年のロイター記事によると、当時の平均的な中古車価格は約240万円。

新車はそれ以上の価格で、たとえばプジョーの一部モデルはなんと約2660万円もの価格がついています。

この頃はすでに自動車の自由売買は解禁されていましたが、こういった価格設定となってしまうことにより2014年上半期の自動車販売台数はわずか50台に留まったとのことです。

新たな政策が導入されても国民が海外の新車や中古車を入手することは難しく、こういった背景もキューバからクラシックカーが消えない理由の一つとなっています。

1950年代製のアメリカ車が中心!メーカーは?

キューバの街を走るクラシックカーの多くは1950年代に作られたアメリカ車です。

アメリカとの国交断絶以降、キューバに新しいアメリカ車が輸入されることはなくなりました。

これにより、多くのキューバ市民は国交断絶以前に輸入されたアメリカ製の車を大切に使用し続けることとなったのです。

キューバ革命後も旧ソ連から車が輸入されることはあったものの、主流として走っていたのはアメリカ車でした。

この項では、当時のキューバ市民たちを支えた車のメーカーについて解説します。

  • フォード
  • ゼネラルモーターズ
  • クライスラー

フォード

ヘンリー・フォードによって1903年に創設されたアメリカの自動車メーカー。

20世紀初頭、自動車がまだまだ上流階級のシンボルだった頃、大衆の移動手段として自動車を普及させられないかという夢を追って作られたのがフォードでした。

都市部の人々だけではなく、田舎に住む人々までが自動車の恩恵を受けるには、自動車価格を大幅に下げる必要があります。

そこで導入されたのが、現代では当たり前となった「ライン工程」による自動車の大量生産です。

当時珍しかったライン生産によって完成度の高い大衆車を広く普及させたことから、フォードの生産技術は「フォード・システム」とも呼ばれるようになりました。

このフォード・システムで大量生産に成功し、歴史に残ることとなった車が「T型フォード」です。

生産が開始した1908年から、終了する1927年までの約20年間で1,500万台が作られ、この数は歴代自動車販売数ランキングでもトップ10に入ります。

フォードはT型フォードに留まらず、「Fシリーズ」や「マスタング」「エクスプローラー」など、時代を超えて愛される名車を次々と送り出してきました。

残念ながら日本からは既に撤退してしまったため、日本国内で目にする機会は少ないのが現状です。

大衆車そのものの礎を築いたといっても過言ではないフォードの名車を一目見たい時は、キューバに足を運んで見るのも良いかもしれません。

クラシックカーは、その歴史や背景によって、高価な価値が付く場合があります。

将来的な価値の上昇も見越して、クラシックカーを投資資産として扱う人々も少なくありません。

また、急激に価値が下がりにくい特徴を活用して、インフレ時の資産防衛手段として入手する人々も。

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ゼネラルモーターズ

ゼネラルモーターズは、ウィリアム・C・デュラミントによって1908年にアメリカ・ミシガン州で設立されました。

実はいくつかの自動車メーカーによってゼネラルモーターズは構成されており、そのラインナップには「シボレー」「キャデラック」「GMC」など錚々たるメンツが並びます。

複数メーカーが揃うゼネラルモーターズは一つのブランドが覇権を握る時代に一石を投じ、異なるターゲット層や市場ニーズへいち早く対応することで成功に近づきました。

その覇権を握っていたメーカーというのが、先程紹介した「フォード」です。

大衆車として市場を独占していたT型フォードでしたが、他メーカーの追随もあって「安さ」以外の面も重視する人々が増えていきました。

そこで、様々な付加価値が加えられたゼネラルモーターズの車が注目を浴びるようになり、マーケティング技術にも秀でていたことで販売が促進されたのです。

クライスラー

1925年、ウォルター・P・クライスラー氏の手によってクライスラーが誕生しました。

元々鉄道の技師として活躍していた彼の経験と知識は、クライスラー車の設計に斬新な要素を注入し、その後の自動車の在り方にも大きく影響を与えることとなります。

現代の自動車に当たり前に採用されている「パワーステアリング技術」を初めて大衆の車に採用したのもクライスラーでした。

また、1936年に誕生したトヨタ初の自動車「トヨダAA型」も、クライスラーが販売した「エアフロー」の美しいデザインを元に製造されています。

「ビッグスリー」の一角として「ゼネラルモーターズ」「フォード」と並んで自動車市場を席巻してきた偉大な一社です。

2009年の経営破綻があったものの、イタリアの名門「フィアット」の協力を得ながら、現在はステランティス・ノースアメリカとして自動車販売事業を継続しています。

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クラシックカーが走る風景がキューバから消える?

キューバ市民の多くにとって、車を購入することは経済的な理由から非常に難しいというのが現状です。

そのため、皮肉ながらもキューバの風景からクラシックカーが消えるということは、まだまだ先と言えるでしょう。

キューバがポジティブな方向へ向かうには、アメリカとの国交正常化によるキューバ経済の活性化や、それに伴う観光客の増加といった動きが必要不可欠です。

キューバの経済が潤えば国民の生活水準が向上し、少しずつ新車の購入が現実的になる日が近づいてくるかもしれません。

とはいえ、バイデン政権となってから対キューバ規制の緩和は行われたものの、前トランプ政権による経済制裁の影響は未だに尾を引いています。

キューバの主要産業である観光業もコロナ拡大前に比べてかなりの落ち込みを見せるなど、まだまだ課題は残っている状態です。

米国との関係改善による経済の変革が、キューバの未来を大きく左右する要因と言っても過言ではないでしょう。

キューバでクラシックカーに乗るならタクシーがおすすめ

残念ながら、観光客向けにクラシックカーのレンタルは行われていません。

キューバの街並みをクラシックカーに乗りながら楽しみたい時は、タクシーの利用をおすすめします。

実はキューバを走るクラシックカーはタクシーであることが多く、観光客向けに主要スポットを巡るツアーが提供されていることもあります。

運転手がガイド役を務めてくれることもあり、歴史あるクラシックカーを楽しみながらラテンの雰囲気を味わうことが可能です。

優雅な乗り心地には期待できませんが、日本では体験できない貴重な時間を過ごせますよ。

まとめ|クラシックカーが走るキューバの風景には文化や歴史の影響が残っている

キューバの風景を彩るクラシックカーは、単なる移動手段を超えた国の歴史と文化を感じさせる存在となっています。

簡単に自動車を購入できない国内情勢や、手元の愛車を大切に維持し続ける愛に溢れた国民性が、あたかもタイムスリップしたかのようなキューバの風景を作り上げています。

キューバを訪れることがあれば、その歴史的な背景や国民の心の豊かさを肌で感じながらクラシックカーを楽しんでみるのも良いでしょう。

マネートレンドNaviでは、クラシックカー以外にも様々な国や地域を支え続ける貴重な資産に関する情報を発信しています。

投資に関する内容はもちろんのこと、その資産がなぜ価値の高い存在になったのかも詳しく解説しているので、興味のある方はぜひご覧ください。

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