投資といえば、株や不動産などメジャーな金融商品を思い浮かべる人が多いと思いますが、近年ではインフレへのリスク分散のためにネオクラシックカー投資が注目されています。
本記事はネオクラシックカー投資を考えている人に参考になるよう様々な観点から解説しました。参考にしていただけたら幸いです。
ネオクラシックカーとは
ネオクラシックカーとは、一般的に1980年代〜1990年代に製造された自動車のことをさします。
ネオという言葉には新しいという意味があり、ネオクラシックカーよりも前に製造されていたクラシックカーと共に希少性の高さから投資対象と見る動きが広がっています。
クラシックカーとの違い
クラシックカーとネオクラシックカーは定義が曖昧で、明確に区別されているわけではありませんが、JCCA(日本クラシックカー協会)のクラシックカーレースの規定では、1975年までに製造された車両とその同型車はクラシックカーと定義されています。
ネオクラシックカー市場の現状
1980年代〜1990年代に製造されたネオクラシックカーは既に製造中止になっている車種が多く、需給の関係から高騰が続いています。
ネオクラシックカーが価格高騰している理由
ネオクラシックカーは様々な理由で価格高騰して、注目されていますが、それぞれ理由を解説していきます。
限定生産や生産中止などの理由で希少性が高いから
ネオクラシックカーが高騰する一番の理由として限定生産や生産中止などによって市場に出回る車両数が少なくなっていることが挙げられます。
また、1990年代までの車は個性的なデザインの車が多かったですが、衝突安全性能が高くなかったという問題がありました。
車体の構造を安全性重視にする流れとなり、個性的なデザインのネオクラシックカーの希少価値が生まれるようになりました。
アメリカの25年ルール
アメリカの25年ルールとは、アメリカ合衆国運輸省が初年度登録してから25年経った車であれば、原則禁止されている右ハンドル車の輸入ができるようになる制度です。
25年ルールで輸入が許可されると、関税や排ガス規制が対象外になったり、厳しい安全基準の検査が免除になります。
燃費の良さや環境への配慮などの理由で日本車は人気なので、アメリカへの流出が続いています。
そのため、以前にもましてネオクラシックカーが手に入りにくくなっており、価格高騰の要因になっています。
コロナ禍による車市場の変化
新型コロナウイルスによって半導体不足が起きたことで自動車業界は大打撃を受けました。
新車の生産数が大幅に減り、市場に出回らなくなったことから、中古車の需要が増えたことで、ネオクラックカーなどの価格高騰に拍車をかけたことになります。
ただ、いずれ半導体不足によるサプライチェーンの問題は解決するので、中古車の需要は落ち着いてくる可能性もあります。
インフレによる物価上昇
インフレが進みすぎたことで、2022年から急激な利上げが始まりましたが、インフレもネオクラシックカーの価格上昇の一因になりました。
インフレが進むと自動車部品の価格が上がるため、自動車メーカーは新しく車を作るのが難しくなります。
さらに、上述したように半導体不足の影響もあり、2021年頃から新車の生産台数が大幅に減りました。
新車の生産が滞ったことで、中古車の需要が増え、中古車の供給が追いつかなくなって、ネオクラシックカーを含めた中古車の価格が上昇していく流れとなりました。
ネオクラシックカーのメリット
ネオクラシックカーは、古典的なデザインと現代的な技術をミックスさせた車両ですが、色々なメリットがあります。
ここでは、ネオクラシックカーの様々な魅力を深掘りしていきます。
ネオクラシックカー市場における高騰の具体的な数字と事例
2023年3月現在もネオクラシックカーは高騰していますが、具体的な事例がないとピンと来ないかもしれないので、紹介していきます。
中古車情報サイトの「グーネット」では、
- 1993年発売のスープラのA80は329万〜2450万円(新車は290万〜472万円)
- 1990年発売のNSXは638万〜2500万円(新車価格は800万〜860万円)
- 1989年発売のスカイラインGT―RのR32型は438万〜2100万円(新車は445万円)
などの事例があり、新車価格を超える値段で取引されている中古車がたくさんあるほどネオクラシックカー市場の盛り上がりはすごいです。
1970年代以前のクラシックカーより実用性に優れる
1980年代以降の車は性能が飛躍的に向上して現代でも十分通用する車種がたくさんありますが、それ以前は実用性で難がある車種が多かったです。
例えば、1960〜1970年代の車種はキャブレター式の車が多く、排気ガスを大量に出すので、厳しい排ガス規制に対応できなくなっていきました。
また、キャブレターの欠点として外気温が低下するとエンジンがかかりにくくなります。
エンジンを最善の状態で維持していくのが難しく安定性に欠けていたことから次第にキャブレター式が採用されなくなっていきました。
一方で1980年代〜の車はインジェクション式の車が製造されるようになり、性能が飛躍的に向上しました。
エンジンの安定性が上がり、排出ガスも抑えられるので、現代でも十分に通用する車種が多く存在することからネオクラシックカーは古典的なデザインと現代的な技術の両面を兼ね備えていると言えるでしょう。
希少性があって、価格が落ちにくい
上述しましたが、ネオクラシックカーは販売から20年以上経っているため製造中止になっているモデルが多いです。
そのため、現存する個体数が限られており、熱心なカーマニアからの需要があるモデルは希少価値が落ちにくいというメリットがあります。
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ネオクラシックカー投資のリスク
ネオクラシックカーの価格高騰が続いているというポジティブな話題が続きましたが、実際に投資をする上では、リスクについても知っておかなければいけないので、見ていきましょう。
維持費や税金が新車より高い
現物資産の車である以上はある程度品質を保っていないと価格を維持できないので、メンテナンスに気を配らないといけません。
1970年代までのクラシックカーはキャブレター式の車が多く、あまり電子部品が使われていないので、比較的容易に修理できます。
しかし、1980年代以降のネオクラシックカーはパワステ、パワーウインドウ、デジタルメーターなど電装部品が搭載されはじめ、一気に構造が複雑になりました。
自分で調整する手間が減り、運転するのは楽になりましたが、手に入りにくい部品があったり、修理する際の料金はクラシックカーよりも高いので、故障には気をつけなければいけません。
税金の面でもネオクラシックカーは厳しく、新車新規登録時から13年を超えた車は、自動車税が15%も課されてしまいます。
ここまで古い車に対する風当たりが強くなったのは、近年環境対策への配慮を優先させる風潮になり、政府が電気自動車へ移行させたい狙いがあると思われます。
事実、ハイブリッドカーや電気自動車などのガソリンの排出が少ない車は、重課税の対象外です。
今後さらに自動車税が高くなる可能性があり、ネオクラシックカー保持者は頭を悩ませそうです。
購入前に気を付けるポイント
ネオクラシックカーへの投資をしようと思っても、高額な商品だけに間違えてしまうと大損してしまうこともあります。
購入前に気をつけたいポイントは以下の通りです。
- 車両の歴史を確認する
- 車両の状態を確認する
- 車両のオリジナリティを確認する
- 複数の販売店で価格を比較する
- 購入後のメンテナンス費用や手間を考慮する
それぞれ解説していきます。
車両の歴史を確認する
事故や大規模な修繕があったか、過去のオーナーがどのように車両を扱ってきたか、定期的なメンテナンスを行ったかをできるだけ販売元から確認しましょう。
歴史を確認する上では「記録簿」という前のオーナーが整備やオイル交換をどのように行っていたか記録されている書類があると確認しやすいです。
車両の状態を確認する
まず外装としては、車体に傷やへこみはないか、タイヤの劣化具合、シートに汚れはないかをチェックします。
次に内装としては、エアコンやエンジンは問題なく動くか、パワーウインドウなどの電装系パーツは正常に動くかなど、くまなく確認しましょう。
車両のオリジナリティを確認する
ネオクラシックカーは、発売当時と同じデザインだからこそ、カーマニア達からの需要があり、価値が担保されていることも多いです。
なので、車両がパーツやカラーリングなどが変更されていなく、オリジナルのままかどうかを確認することも大切です。
複数の販売店で価格を比較する
販売店によって、価格はもちろんのこと、品質、接客力、購入手続き、アフターサービスの充実具合など異なるので、複数店舗で検討することは大切でしょう。
2021年に行われたオリコン満足度調査では、あらゆる項目でオートバックスが首位になっており、サービスの質の高さが伺えます。
購入後のメンテナンス費用や手間を考慮する
ネオクラシックカー投資をする上では、価値が下がらないようにメンテナンスをすることが大切になってきます。
しかし、あまりにも高いメンテナンス費用がかかってしまうと、購入時よりも値上がりしたとしてもトータルでマイナスになってしまいます。
また、メンテナンスの手間がかかってしまうとトータルでプラスになったとしても費用対効果が悪くなってしまい、投資をする意味がないので、慎重に検討しましょう。
ネオクラシックカーの価値を維持する方法
ネオクラシックカー投資をする上では、長期間保有することが想定されるため、価値を落とさないようにする努力が欠かせません。
全て基本的なことですが、大切なので解説していきます。
- 定期的なメンテナンスを行う
- 当時のオリジナルの状態を維持する
- 正しく保管する
- 正しいドライブ方法で運転する
定期的なメンテナンスを行う
ネオクラシックカーは古い車両ということもあり、新車に比べて故障しやすく、定期的なメンテナンスをすることが重要です。
エンジンオイルやブレーキパッド、タイヤを定期的にチェックして、必要に応じて交換しましょう。
当時のオリジナルの状態を維持する
購入前に気を付けるポイントでも述べましたが、ネオクラシックカーはオリジナルの状態でこそカーマニア達からの需要が一定数あり、価値があると言っても過言ではありません。
なので、車体やカラーリング、部品交換など修理する際も当時と同じ仕様でしてもらうことが大切です。
正しく保管する
直射日光や雨風に当たると劣化の原因になるので、屋内保管が理想です。
また、盗難や破損を防ぐための防犯対策も大切です。
正しいドライブ方法で運転する
ネオクラシックカーは現代の自動車と比べて、アクセル性能やブレーキ性能が劣っている場合があるため、急発進や急ブレーキは避けた方がいいでしょう。
また、古いエンジンを搭載していた場合はエンジンが温まるのに時間がかかる場合があるため、しばらく低速で運転してエンジンを温めた方がいいこともあります。
投資対象としておすすめのネオクラシックカー
ここからおすすめのネオクラシックカーを紹介していきます。
ここに載せている価格は時期や販売元によって大きく変わる場合があることをご留意ください。
また、紹介した車両の今後の値上がりを補償するものではありません。
初代日産ステージア(1996〜2001)
初代日産ステージアはステーションワゴンタイプの自動車で1990年代中盤のワゴンブームに乗って、1996年に発売されました。
当時の市場価格は300万円前後でしたが、2023年3月現在は、中古車販売サイトのカーセンサーでは状態のいいものだと200万円〜500万円前後で売られています。
初代日産ステージアは、スカイライン以外の車種にRB26DETTエンジンを搭載された唯一の車で、このエンジンを搭載されたスカイラインはツーリングカーレースで圧倒的な強さを誇っていました。
その希少性の高さから市場価格は高騰する傾向にあります。
スカイラインGT-R (R32)、スカイラインGT-R (R33)
スカイラインGT-Rは日産が製造していた高性能スポーツカーで、ネオクラシックカーとして注目を浴びているのがR32とR33の世代になります。
スカイラインGT-Rは海外からの人気を集めていますが、人気の理由は映画「ワイルド・スピード」やグランツーリスモに出て、知名度が上がったからです。
上述したように25年ルールによって、2015年頃からスカイラインGT-R32がアメリカへ輸出可能になり、市場価格が高騰したことから投機目的の購入者も出て、市場価格がさらに高騰していきました。
R32の当時の市場価格は300万円前後でしたが、2023年3月現在、中古車販売サイトのカーセンサーでは状態のいいものだと500万円〜700万円前後で売られています。
R32はコンパクトでスタイリッシュなデザインと当時では驚異的なハイパワーエンジンを搭載したスーパーカーで、バブル末期だったにも関わらず4万台以上売れる大ヒットしました。
R33の当時の市場価格は400万円前後でしたが、2023年3月現在、中古車販売サイトのカーセンサーでは状態のいいものだとR32と同様で500万円〜700万円前後で売られています。
R33はR32よりもエンジンの性能が上がったものの、車体が大きくなったことからデザイン性の問題で世間からの評価があまり高くありません。
しかし、海外の人は日本人よりも体が大きく、大きめの車内スペースが心地よく、海外からは人気があります。
国内で不評だったことから1.6万台しか販売されていなくて、希少性が高いので、国内で安く入手できた場合は海外の人向けに高く売れる可能性があります。
ホンダNSX
ホンダNSXは1990年に発売された高級スポーツカーで、当時の最新技術だったアルミニウムボディやVTECエンジンなどが投入され、とても話題になりました。
ホンダNSXの当時の市場価格は800万円前後でしたが、2023年3月現在は中古車販売サイトのカーセンサーでは、状態のいいものだと800万円〜1200万円前後で売られています。
ホンダNSXは、スポーツカーとしての性能が高く、耐久性も優れていることから市場では高い評価を受けています。
販売台数も16年間で約1万8500台と、そこまで数が多いわけではなく、希少性もあるので、今後も価格が上昇していく可能性があります。
トヨタスープラ 4代目(A80型)
トヨタスープラは1993年に発売されたモデルで、3代目の角張ったデザインから、4代目はエンジン部分を中央に集めたことで、滑らかなスタイルになり、スポーティーで洗練された印象になりました。
エンジンが直列6気筒2JZ系に変更され、電子制御サブスロットシステムのETCSが初めて搭載されたことで話題になりました。
トヨタスープラ4代目(A80型)の当時の市場価格は470万円前後でしたが、2023年3月現在、中古車販売サイトのカーセンサーでは状態のいいものだと500万円〜800万円前後で売られています。
気を付ける点としては、4代目スープラはエンジンパーツの交換が容易であるため、カスタマイズしやすいことから市場に出回っている車もカスタマイズされている可能性があります。
カスタマイズされているとオリジナリティの面から売却する際に高価で売れなくなってしまう可能性があるので、注意しましょう。
今後のネオクラシックカー市場の見通し
2010年代半ば頃からアメリカの25年ルールによってネオクラシックカーがアメリカに輸出可能になったことで、海外市場での盛り上がりから価格高騰が続いていました。
さらにここ数年で価格上昇に勢いをつけたのが以下の要因だと思われます。
- 半導体不足による新車の生産台数の減少
- インフレによる物価上昇
それぞれ簡単に考察していきます。
半導体不足は2023年3月現在も続いていて、2023年1月にはトヨタ自動車が2ラインで生産停止を発表し、ホンダも当初の計画よりも生産が2割減る見込みとなっています。
半導体不足に関しては、いつ収まるかのメドがたっておらず、まだまだ続きそうです。
引用元:ニッセイ基礎研究所
米国のインフレはピークを過ぎて収まってきたものの、日本は上のデータのように上がっており、インフレがまだ続きそうです。
2023年現在も中古車価格は高値をキープしており、需要はありそうです。
以上2つのことから価格高騰してしまって、反動で下がる可能性もありますが、25年ルールで海外からの需要があることから、まだ上値を目指す余地は充分にありそうです。
不安要素として挙げられるのが環境対策でネオクラシックカーを含めたガソリン車の需要が減ることが挙げられます。
電気自動車が普及するとガソリンスタンドが減少して、ガソリン車が使いにくくなってしまうので、需要の低下で市場価格が下落してしまうかもしれません。
数少ないガソリン車として希少価値が上がる可能性もあるので、難しいところですが、実用性は減っていくことが予想されます。
最後に、ネオクラシックカーの市場価格は需給や車体の状態によって変わるので、よく調べてから自分の判断で行うことが大切です。
なお、当サイトではクラシックカーをはじめとする有形資産の投資について情報発信を行っています。まだ日本では広まっていない資産運用についても解説しているため、読むだけでも知識になります。ぜひ他の記事も合わせて読んでみてください。
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