2023年現在、中古車の価格高騰が続いています。
中古車店ネクステージは、2022年11月期の連結決算で、純利益が前の期比44%増の138億円となり、8期連続の最高益となったことを発表しました。
半導体不足により新車の納期に遅れが生じており、その結果、中古車の人気が高まっていると考えられます。
中には1,000万円以上の中古車も存在します。車は消耗品ではなく、資産性を帯びてきているのです。
本記事では、なぜ今中古車価格が値上がりしているか、車の資産的価値について説明し、値上がりした車の価格推移や、今後も値上がりが見込まれるおすすめの車を紹介します。
ぜひ最後までお読みいただき、昨今の中古車値上がりや資産としての車についての理解を深めていただければと思います。
中古車価格が値上がりしている理由
中古車価格はなぜ今値上がりしているのでしょうか。
理由は以下3点が考えられます。
- 理由①:半導体不足
- 理由②:歴史的な円安
- 理由③:新型コロナウィルスの流行
順番に見ていきましょう。
理由①:半導体不足
中古車の価格が値上がりしている理由として1番に挙げられるのは、昨今の半導体不足です。
半導体とは、電機を通す「導体」と電機を通さない「絶縁体」の中間の性質を持つ物質のことで、特定の条件を加えると電気を通します。
自動車だけではなく、スマートフォンやタプレット、パソコンなどの電子機器を始め、冷蔵庫、炊飯器、洗濯機などの家電に用いられるなど、さまざまな機器に使用されています。
半導体不足は、コロナ渦で外出制限がかかり、職場ではテレワークが、学校ではリモート授業が急増するなど、パソコンなどの通信機器の需要が拡大したことなどが起因しています。
自動車を組み立てる部品の一つである半導体が不足したため、各自動車メ-カーは、生産計画通り自動車を製造できなくなり、減産となっています。結果、新車の供給が滞りました。
近年は、新型コロナウィルス流行の影響で、公共の交通機関の利用を避ける目的のため、自動車の需要が増大しています。そのような中で、新車の供給が減少したため、納車まで1年から、長いときは4年も待たなければいけない状況が発生しています。
自動車を今すぐ購入したい人は中古車の価格が高くても購入を希望するようになり、現在の中古車値上がりが起きたのです。
理由②:歴史的な円安
次に、中古車の価格が値上がりしている要因として、1990年以来の32年ぶりの円安水準(150円台)に達したことなどが挙げられます。
円安により日本の中古車は割安感が高いため、海外からの需要が急拡大しています。ではなぜ、日本の中古車は割安感が強いのでしょうか。
円安になると、わたし達が海外から商品を輸入するとき、その商品が割高となります。ドルに比べて、円の価値が低くなっているからです。
逆に、円安で海外へ商品を輸出すると、海外に在住する人にとっては、日本製品の割安感が強くなります。円に比べて、ドルの価値のほうが高いからです。
現在の新車不足の状況は、海外でも同様です。海外在住の人にとっては、円安効果があるため、たとえ国内では中古車価格の高騰が起きても、割安感の高いものとなります。
結果的に、海外の顧客からの引き合いが強くなるため、国内での中古車価格が高騰する要因の1つとなっています。

理由③:新型コロナウィルスの流行
中古車の価格が高騰している3つ目の理由は、2020年からの新型コロナウィルスの流行です。
コロナウィルスの流行が原因で、中古車価格の値上げに繋がった理由は、主に2点あります。
1点目は、新型コロナウィルスの流行により、世界各国で自動車工場の稼働が停止状態となったことです。ロックダウンに陥った地域もありました。
結果、部品製造、自動車製造が共に追いつかなくなりました。前述したように、特に半導体の不足が顕著です。
2点目は、これまで移動に交通機関を利用していた人が、「密」を避けるためにマイカー導入に踏み切ったからです。
新たに車を購入する人が増えたため、需要が大きく上昇しました。そこに新車不足で供給の遅れが立ちはだかったため、新車ではなく、中古かつ高値でも購入に踏み切る人が増えたのです。
車の資産としての特徴
さまざまな要因で、値上がりしている中古車。車自体が高価であるため、資産性を帯びてきているのが今の状況です。
では、車には資産としてどのような特徴があるかを見ていきましょう。
- 特徴①:インフレに強い
- 特徴②:希少性が高い車種は、価格が上昇する
- 特徴③:法人名義で購入し業務で利用すれば減価償却ができる
特徴①:インフレに強い
昨今、インフレと呼ばれる状況が続いています。
インフレ時代における資産防衛、もしくは資産形成に有効といわれているのが、金やアンティークコイン、アート、そして車を始めとする実物資産です。
インフレにより商品の価値が上がり続けているため、実物資産である車を購入して保有すると、車の価値が右肩上がりに上がる可能性があります。
そもそもインフレとは何でしょうか。
それは、商品やサービスの値段が上昇し、お金の価値が下がることです。
背景には、2020年に起きたコロナショックがあります。コロナ渦で、人、物、お金の流れが停滞し、不況となることを避けるため、各国は金融緩和を行い、金利を下げたり、市場にマネーを大きく供給したりしました。
その結果、消費が拡大し需要が増えたため、インフレが発生しました。
インフレ状況下では、現在100万円で購入できるものも、数年後には110万円出さないと購入できなくなる可能性があります。つまり、モノの価値は上がる反面、お金の価値が目減りしてしまうのです。
実物資産である車は、保有することで、数年後に価値が上昇する可能性があるという点で、インフレに強い資産であると言えるでしょう。
特徴②:希少性が高い車種は、価格が上昇する
車の資産性の特徴2つ目は、希少性の高い車種の場合、価格が右肩上がりに上昇することです。
希少性の高い車は、名車と呼ばれるクラシックカーなどを指します。クラシックカーは、製造してから数十年経過した車のことです。
イギリスにはHAGIという国際クラシックカー投資調査団体があります。
HAGIで集計されている「HAGI TOP INDEX」は、2008年末の価格水準を100として、クラシックカーの現在の価格を数値で表しています。
以下のグラフを見ると、おおよそ右肩上がりに価格が上昇しており、2008年から14年で、455ポイント付近を推移しているため、およそ4.5倍に価格が上昇していることがわかります。

たとえば、最近、高額で落札されたクラシックカーとしては、2022年8月27日に1億円で落札されたイギリスのダイアナ元皇太子妃の愛車が挙げられます。
英国のシルヴァーストーン・オークション社が2022年に「The Classic Sale at Silverstone 2022」を開催し、そのオークションで故ダイアナ皇太子妃のフォード「エスコート」が落札されました。
落札価格は、なんと722,500ポンド、円に換算するとおよそ1億1500万円となります。
世界的な名車は、1億円以上の高値で取引されるのがクラシックカーの世界です。
故ダイアナ元皇太子妃の乗っていた車ほどのプレミアはつかなくとも、同オークションでは、最低でも11,250ポンド、高いものであれば123,750ポンドで落札されています。日本円にすると180万円から、1980万円となります。
クラシックカーは、保有することで、購入時よりも高値で売却できるポテンシャルを秘めています。
クラシックカー投資に興味が湧いた人は、以下の記事をご覧ください。
【2022年最新】クラシックカー投資のメリット・デメリット、始め方を徹底解説

特徴③:法人名義で購入し業務で利用すれば減価償却ができる
車の資産としての特徴3つ目は、法人名義で購入した場合に、節税効果が期待できる点です。
たとえば、車を法人名義で購入し、その車を業務で利用すれば、減価償却ができます。
減価焼却をすれば、車の購入費用を耐用年数に渡って、分割して費用を計上するといった会計処理ができます。赤字で計上できる可能性があるのです。
法人名義で1000万円の新車メルセデスベンツを購入し、業務で利用した場合、新車の耐用年数は6年であるため、およそ166万円の赤字を毎年計上できます。つまり、法人税を節税(繰延)できるのです。
こうした節税は中古車の場合も可能です。4年落ちの車であれば、耐用年数を短く計算できるので、その分短期間で赤字の計上が可能です。
節税という観点で車に目を向けると、車は単なる消耗品ではなく、資産であるということがわかります。
ただし、減価償却が認められる車は、法人名義で業務との関連が認められる場合のみであるため、注意は必要です。
値上がり中古車の価格推移
次に、値上がりしている中古車は、どのように価格が推移しているかを見ていきます。
クラウン170系(トヨタ)
PROTO総研の自動車に関するデータ調査によると、2022年11月の全国の中古車相場値上がりランキング1位は、トヨタのクラウン170系でした。
変動価格は232,555円、変動率は32.66%でした。
クラウンは、トヨタのフラッグシップモデルとして有名です。王冠のエンブレムが特徴的で、高級感があります。同時に、国内車として実用性に秀でている点が人気の理由と考えられます。

シャラン7N(フォルクスワーゲン)
PROTO総研のデータでは、2022年11月の全国の中古車相場値上がりランキング2位は、フォルクスワーゲンのシャラン7Nとなっています。
変動価格は604,447円、変動率は30.61%です。
シャランはフォルクスワーゲンの2種類しかないミニバンの1つです。フォルクスワーゲン独特の洗練されたデザインが人気です。それだけではなく、高性能な両側電動スライドドア、電動テールゲート(キーでテールゲートを自動開閉)を備えているなど、利便性という意味で魅力が大きい車と言えるでしょう。

フォレスターSG系(スバル)
PROTO総研のデータでは、2022年11月の全国の中古車相場値上がりランキング3位は、スバルのフォレスターSG系となっています。
変動価格は194,334円、変動率は29.29%です。
スバルのフォレスターのミドルサイズSUV。人気の秘密は、搭載している機能です。自動安全運転システムであるアイサイトを標準搭載しているにも関わらず、価格設定が高すぎないのも魅力となっています。

おすすめ車種
ここからは、値上がりしていることで有名な中古車を紹介します。
トヨタ|AE86
トヨタのAE86は、1983年にトヨタが発売した車で、コンパクトタイプのスポーツクーペ、通称ハチロクとして有名です。
リトラクタブルヘッドライトのスプリンタートレノとカローラレビンの2車種に分かれます。
1990年後半、しげの秀一の漫画「頭文字D」の主人公が愛用していた車種という理由で、人気が上昇し、プレミアム価格で取引されるなど、価格が高い傾向にあります。
中古車市場でも100万円以上がスタンダードの車種で、中古車のグーネットでは、最安値が269万円、高値では478万円の価格がついています。
参考:グーネット

トヨタ|ランドクルーザー200系
ランドクルーザー200は、トヨタが2007年に発売したハイエンドSUVです。全長4,950mm、全幅1,970mmと大きな車格が特徴です。
路面状況に合わせて、自動でエンジン出力やブレーキ性能を調節する「マルチテレインセレクト」が搭載されているため、悪路の走行でも安定感抜群で、信頼性があります。
グレードは最上級のZX、ミドルクラスのAX、シンプル装備のGXに分かれます。人気が特に高いのはZXで、値上がりが今後も続くと言われています。
2021年にはランドクルーザー300が発売されましたが、納車に4年近くかかるということで、中古のランドクルーザー200が注目を集めました。
ランドクルーザーZXの中古車価格は、価格.comでは1589万円から1999万円となっています。
ランドクルーザーは、国内外で人気が高いため、高値安定が見込まれます。
参考:価格.com

トヨタ|アルファード
アルファードはトヨタのフラッグシップミニバンです。全体的に高級感のあるデザイン、快適な居住性、高い走行性能などで高い人気を博しています。
ガソリン車とハイブリッド車、さらにオフロードや雪道でも安心して走行できる4WD車が用意されています。
現行のアルファードは納期が2023年4月以降となっているため、新型アルファードの生産に影響を及ぼす懸念から、2022年6月末にオーダーストップとなりました。
価格.comのトヨタ人気中古車ランキングでは1位に輝き、価格は最高値2399万円となっています。

なお、投資用の車の選定にはポイントが2つあります。
1つ目はメンテナンスが行き届いている車であること、2つ目は希少性の高い車のほうが価値は上がりやすいため、生産台数の少ない車を選ぶことです。
また、中古車市場では、登録済み未使用車が人気です。車両登録は行われていますが、実際に使われていないため、走行していないという点で新車と変わらない状態です。
投資用の車は、さまざまな観点から注意深く選ぶ必要があるといえます。
中古車高騰は後1年程度続く見通し
中古車の価格高騰は、ピークを越えたという見方もありますが、今後およそ1年は続くのではないかと考えられます。それにはいくつか理由があります。
1つ目の理由は、しばらく半導体の供給不足が続くと考えられるためです。
世界半導体統計(WSTS)の情報によると、2023年における半導体の市場規模は前年比4.1%減の5,566億ドルと、縮小することが予測されています。
2つ目の理由は、中古車市場の売上が向上しているためです。実際に、国内では中古車店ネクステージの業績が爆増しています。
ネクステージが発表した2022年11月期の連結決算によると、純利益が前の期比44%増の138億円となり、8期連続の最高益となりました。買取台数が前の期より2倍近く伸びたことが販売の伸びに繋がったようです。車価格の相場の高まりが追い風になったと考えられます。
3つ目の理由は、中古車の輸出がロシアへの経済制裁の規制外であるためです。現在、ロシアからの日本製中古車需要が大きく、国内での需要と引き合いとなる状況が起きています。
日経新聞の記事によると、日本からロシアへの中古車輸出が急増し、10月の中古乗用車の輸出額が、前年同月比3.4倍の345億円とウクライナ侵攻前を大きく超えたといいます。
輸出増は、ロシア現地での新車不足、円安傾向が後押ししています。政府がロシア制裁のために輸出を禁じる乗用車は600万円超(新車、中古車含む)のいわゆる高級車であるため、大半の中古車は対象外となっています。
戦争の平和的解決のため、国際社会との連携が必要な中で日本からロシアへの輸出増は、少し皮肉な結果になったと言えるかもしれません。
いずれにせよ、中古車人気による価格高騰の今後は、半導体の供給がどうなるかが大きく影響しています。
先行きが不透明な状況であるため、メーカーの車の販売状況、半導体の供給状態、国内外のニュースなどを総合的に判断して、いつまで中古車高騰が続くかを注視していく必要があります。
なお、本記事で触れたクラシックカー投資については、数十年単位で名車を保有した後、オークションなどに入札してキャピタルゲインを得る投資方法であるため、昨今の半導体不足の影響は小さいと考えられます。
本記事を読んで、クラシックカー投資に興味が湧いた人は、以下の記事も参考にしてみてください。