不動産事業の一つとして人気のあるアパート経営。
所有しているアパートを貸し出すことで毎月家賃収入を得られるため、運用計画も立てやすいことが特徴です。
投資や土地活用として多くの人が行っていますが、誰でも成功させられるほど簡単なものではありません。
中には「アパート経営はするな」という言説を唱える人も多く、挑戦する前から断念してしまう人もいらっしゃいます。
この記事では「アパート経営はするな」と言われる理由と絡めてアパート経営の失敗例や、経営するにあたって重要なポイントを解説します。
アパート経営はするなと言われる主な理由は準備不足
アパート経営はするなと言われる人の多くは、事業を始めるための準備が不足しています。
経営を始める前や経営途中にも準備を怠らずにいれば、収益性を保った安定性のあるアパート経営ができる可能性が高まります。
アパート経営における準備不足例を3例紹介するので、失敗を防ぐための参考にしてみてください。
- 初期費用・資金が集まっていない状態で始めようとしている
- 周辺環境の調査が十分じゃない
- 投資に対するリスクヘッジができていない
初期費用・資金が集まっていない状態で始めようとしている
アパート経営の準備不足として挙げられる1つ目の理由は、資金が集まっていない状態で経営を始めようとしていることです。
アパート経営を行う場合、多くの人は金融機関の融資によって資金を調達するのが一般的です。
しかし、入居者がうまく集まらず家賃収入が少ない状態が続くと、毎月発生する多額の返済によって資金のやりくりが困難になります。
返済を問題なく続けるためには、可能な範囲で自己資金を用意してできるだけ少ない借入額でアパート経営を始めることがおすすめです。
ちなみに用意する自己資金の目安は物件価格の1割〜3割程度が一般的です。
アパート購入時の初期費用は自己資金から支払う必要がある
アパート経営を開始するにはいくつかの手続きを行う必要があり、それぞれ費用が発生します。
これらの支払いにローンは利用できず、建築費や物件購入費とは別に支払い費用を用意しておく必要があるので注意しましょう。
アパート取得時の費用項目 | 費用目安 |
不動産取得税 | 固定資産税評価額×4%(3%のケースも) |
登記費用 | 20万〜30万円 |
印紙税 | 多くの場合は1,000円〜6万円 |
ローン手数料 | 借入額の1%〜3%程度 |
保険料 | 契約年数による |
外注費 | 契約内容による |
どの費用も契約内容などによって大きく変動します。
このような費用を支払うだけでも数十万円以上は必要になるので、キャッシュにある程度の余裕を持っておくことが必須です。
周辺環境の調査が十分じゃない
アパート経営の準備不足として挙げられる2つ目の理由は、周辺環境の調査が十分でないことです。
アパート経営で利益を得るには、事前に徹底的な周辺調査を行う必要があります。
一見立派で綺麗な建物・土地でも、需要がなければ入居者は集まらず収益性も向上させられません。
リスクを抑えつつ収益性を保ったアパート経営を行うには、その土地に住む人々のニーズを汲み取りながら計画を練ることが重要です。
例えば通勤・通学の時間を短くしたい学生やサラリーマンは駅近物件やバスの本数が多い場所を好みます。
そのため駅近の土地にアパートを建設する際は、上記のような単身者向けの物件を貸し出すことが入居者を集めるコツとなります。
アパート経営で利益を発生させるなら、土地に住む人々の属性や将来的な開発計画、住みやすさといった多くの点について前もって調査しておきましょう。
投資に対するリスクヘッジができていない
アパート経営の準備不足として挙げられる3つ目の理由は、投資に対するリスクヘッジができていないことです。
アパート経営は多額のお金を投入して行うミドルリスク・ミドルリターンの投資です。
それなりに収益性が高められる分、大きな損失が発生する危険性も孕んでいます。
周辺地域の再開発や隣人トラブル、突然の人災・災害のように、損失をもたらす可能性は複数あるため、リスクヘッジによって損失を最小限にする努力が必要です。
アパート経営のリスクには下記のようなものがあり、それぞれ対策方法が存在します。
アパート経営で考えられるリスク | リスクへの対策 |
空室リスク | 周辺調査でニーズを満たせる経営を |
災害・人災リスク | 保険加入・リスクが高い土地を避ける |
金利上昇リスク | 予め借入金を少なくして返済比率を下げる |
修繕リスク | 将来の修繕費を別に準備しておく |
これらのリスクを想定して事前に対策しておくといざという時のダメージを最小限に抑えられます。
アパートという巨大な資産を守り、滞りなく返済を行っていくためにも、万全に準備したうえでアパート経営を行いましょう。
アパート経営でありがちな5つの失敗例
次にアパート経営にありがちな失敗例を5つご紹介します。
アパート経営を行う多くの人々は共通の理由や原因によって失敗しがちです。
同じミスを犯さないためにもアパート経営の失敗例を事前に学び、対策を実施する準備を進めていきましょう。
- 空室が多い状況が続いている
- 需要のない土地にアパートを建ててしまった
- 管理が行き届かない
- 家賃滞納者がいる
- 資金計画・利回りの試算が甘い
空室が多い状況が続いている
アパート経営の1つ目の失敗例は、空室が多い状況が続いていることです。
いわゆる「空室リスク」にさらされており、入居者が見つからなかったり、契約更新のタイミングで退去者が続出するとこのような状況に陥ります。
長期間改善できないことも多々あり、アパート経営という事業をたたむ最大の原因にもなりかねません。
改善策として挙げられるのは家賃を下げる、もしくは物件自体の売却などです。
しかし、家賃を下げることで入居者を確保できたとしても、多くの場合は想定利回りを下回るため、返済が厳しくなるどころか手出しが発生する可能性も考えられます。
アパート経営の安定化には、利回りを維持しながら空室を作らないことが必要不可欠です。
ペルソナを意識した周辺調査を行い、入居者のニーズを満たすアパート経営を実現しましょう。
*手出し=月々の支出が家賃収入を上回り自己資金から返済を行っている状態
需要のない土地にアパートを建ててしまった
アパート経営の2つ目の失敗例は、需要のない土地にアパートを建ててしまったことです。
利益を生むアパート経営を行うには、自分の希望ではなく多くの人々の需要に応えられる土地・アパートを選択・建設する必要があります。
あくまでも一例ですが、大学生が多く集まるような土地に3LDKのファミリー向け物件を建てても入居率を高めることは難しいでしょう。
しかし、1Rや1K物件であれば一人暮らし大学生のニーズを満たしやすく、入居率も高まるうえに大学があり続ける限り学生からの入居も見込めます。
資金に余裕があればニーズを満たす物件に作り変えられますが、多くの場合はギリギリの状態で経営を続けるか物件の売却が視野に入ってくるでしょう。
土地柄に合わない物件の経営や、すでに競合が多く供給過多になっていると需要も少ないため空室が増えていきます。
物件の管理が行き届いていない
アパート経営の3つ目の失敗例は、物件の管理が行き届いていないことです。
安定的に収益を得るためのアパート経営には、物件の適切な管理が欠かせません。
入居者のトラブル対応や物件の清掃・メンテナンスを問題なく行うことは入居者を定着させるために重要です。
物件管理の方法は自主管理と管理委託の2つに分けられ、生活スタイルなどに合わせて選択できます。
自主管理では管理会社への手数料が発生しない代わりに、トラブル対応や清掃、修繕連絡などすべて大家自ら対応します。
入居者との関係性を築いたり、手数料の節約にはなりますが、本業との両立や隅々まで一人で管理を行う困難さがデメリットです。
逆に管理委託の場合、手数料を支払えば管理をプロの業者に任せられるため、より質の高い対応によって入居者の満足度を高められます。
空室を作らず、経営を失敗しないためには日頃の管理が重要です。
管理方法は不動産会社と相談し、最善の方法を選べるようにしましょう。
家賃滞納者がいる
アパート経営の4つ目の失敗例は、家賃滞納者がいることです。
部屋が埋まっていても入居者に家賃を滞納されると想定通りの収益が得られません。
貸主からすればすぐにでも家賃を支払ってもらうか退去を命じたいケースですが、実は入居者をすぐに退去させるのは困難です。
家賃滞納は間違いなくルール違反ではありますが、1ヶ月程度の家賃滞納は契約解除事由にはならないとされています。
貸主が退去を命じられる一般的な目安は3ヶ月以上の家賃滞納が続くことです。それまでは入居者や連帯保証人への家賃督促を行うことぐらいしかできません。
その後も滞納が続き、仮に訴訟を起こすことになったとしても実際に立ち退いてもらうまでにはさらに時間を要します。
その間はもちろん家賃収入を得られないため、損失は膨らみ続けるでしょう。
どれだけ周辺調査の徹底でニーズを満たす経営計画を遂行できていても、家賃滞納が発生すると一気に経営が傾くことも考えられます。
入居審査を徹底し、入居者の見極めを行うことでこのようなリスクを抑えられるようにしましょう。
資金計画・利回りの試算が甘い
アパート経営の5つ目の失敗例は、資金計画・利回りの試算が甘いことです。
経営開始前には想定利回りによって収益を予測し、借入金の返済プランなどを計画します。
しかし、アパート経営にはさまざまなリスクがあることから想定通りの利回りで経営を続けるのは非常に大変です。
空室による収益の減少や、修繕費、金利変動による借入金の増加などによって資金繰りが困難になり、キャッシュフローが悪化することで経営をやめざるを得ないケースも少なくありません。
想定外の事態・出費に対応するためにも資金計画はシビアに行い、予め余裕資金を用意しておくことが重要です。
正しいアパート管理が安定したアパート経営を実現する
安定した収益を生むには、入居者に不満を募らせないことが重要です。
物件管理が適切に行えないと入居者のニーズを満たせず、退去者が続出します。
物件の満足度を高め、安定したアパート経営を行うためにも以下の3つから適切な管理方法を選びましょう。
- 自主管理
- 管理委託
- サブリース
自主管理
アパート管理の1つ目の方法は、自主管理です。
自主管理では、物件に関する管理業務を貸主自らがすべて行います。
入居者の募集や家賃回収、清掃やトラブル対応といったすべての管理業務を行うため、貸主の負担は大きくなるのが一般的です。
また、問題なく管理を続けるにはそれぞれの対応方法や解決方法を身につけておく必要もあります。
時間的余裕がないとすべての管理を一人で行うことは難しく、精神的に疲弊するリスクが膨らんでいきます。
委託手数料分を必要経費として、もしくは削減できるコストと考えるかは貸主によって違うため、自分を取り巻く環境から客観的に判断することが大切です。
管理委託
アパート管理の2つ目の方法は、管理委託です。
物件の管理を管理会社に委託する方法です。
管理手数料は発生しますが、プロにそれぞれの対応を任せられるため時間的にも心理的にも余裕が生まれます。
アパート経営の他にも仕事や事業を行っている貸主は多くの場合、必然的に管理委託を選択することになるため、その方向で資金計画などを建てていく必要があります。
また、アパート経営に関するスキルを学べたり、遠方の物件を所有できるのも管理委託のメリットです。
複数の入居者を満足させるには、十分なノウハウが求められます。
費用は発生しますが、経営プランを問題なく遂行するには管理委託が非常に有効な手段です。
サブリース
アパート経営の3つ目の方法は、サブリースです。
サブリース契約では、貸主のアパートを不動産会社が一括で借り上げ、貸主へ転貸します。
この際アパート経営はすべて不動産会社が行い、貸主は毎月一定の賃料が得られます。
経営・管理の負担が減るうえに、家賃収入が不動産会社から支払われるため安定した収益を得やすいことが最大の特徴です。
しかし、サブリース契約には注意点も多く存在します。
よく挙げられるのが「家賃保証の見直し」についてで、サブリース契約では不動産会社が一定期間ごとに家賃を見直せるのが一般的です。
この見直しによって家賃保証額が下がり、収益が安定しなくなるケースがサブリースでは少なくありません。
また、「免責期間」が設けられていると、一定期間家賃保証を受け取れなくなります。
入居・退去後の数ヶ月は収入を得られない期間が続くこともあるため、契約時には免責期間の有無を必ず確認してください。
経営をすべて任せた上で一定額が保証されるのは魅力的ですが、最終的に不動産会社が得になるような仕組みも多いのがサブリースです。
アパート経営時は入居者とのトラブルだけじゃなく、管理会社や不動産会社とのトラブルが発生しないよう立ち回ることも重要なポイントとなります。
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アパート経営を行うメリット
アパート経営を行うメリットはさまざまあります。
アパートを持つことで受けられる恩恵を知り、検討材料にしてみてください。
- 所有している土地を有効活用できる
- 比較的安定した利回りに期待できる
- マンション経営より低資金で始められる
- 税金対策になる
所持している土地を有効活用できる
アパート経営を行う1つ目のメリットは、所有している土地を有効活用できることです。
はじめから土地を持っている人は、より低いコストで安全にアパート経営を行える可能性があります。
土地代が発生しないことでアパートにより資金をつぎ込めたり、その土地に詳しいことからよりニーズに沿った経営を実現できます。
また、土地自体が担保となり融資の審査に通りやすいのもメリットの一つです。
今現在活用されていない遊休地があり、さらには一定のニーズが見込めそうな土地を持っている場合は、アパート経営といった形で有効活用することも視野に入れるとよいでしょう。
比較的安定した利回りに期待できる
アパート経営を行う2つ目のメリットは、比較的安定した利回りが期待できることです。
経営計画次第では国債や銀行預金より高い利回りで収入を得ることもでき、長期的に安定した不労所得となり得ます。
建設したアパートが全壊でもしない限りは投資額をすべて失うことがないので、株式投資や為替よりリスクを抑えることも可能です。
マンション経営より低資金で始められる
アパート経営を行う3つ目のメリットは、マンション投資より低資金で始められることです。
階数が低く、木造や軽量鉄骨造であることが多いアパートは一般的にマンション経営より低コストで始められます。
健美家株式会社が調査した「収益物件市場動向四半期レポート〈2022年1月〜3月期〉」によると、一棟アパートと一棟マンションの価格は以下のように倍近くの差があります。
物件 | 平均価格 | 平均利回り |
一棟アパート | 7,257万円 | 8.48% |
一棟マンション | 16,696万円 | 7.89% |
このように平均価格の差が約2倍近くあり、アパートのほうが建てやすいと言えます。
また、そもそもの価格が違うとはいえ、アパート経営とマンション経営の利回りに大きな差はありません。
不動産投資に興味はあるものの、資金的にマンション投資が難しい場合はアパート経営を選択肢に入れてみるのも良いでしょう。
税金対策になる
アパート経営を行う4つ目のメリットは、税金対策になることです。
アパート経営を行うと、税金に関するさまざまな優遇措置が得られ、資産形成や収入源の確保をしながら節税ができます。
例えばアパート経営で得た不動産所得は、損益通算が可能です。
他の給与・事業所得から赤字分を差し引けるため、支払う税金が少なくなります。
また、相続税の対策も可能です。
アパートは現金よりも相続税評価額が低いため、現金を相続するよりも相続税を抑えられます。
税金対策をアパート経営の主な目的としている方も多いくらい優遇措置が豊富なのが特徴です。
アパート経営に興味を持つ人のよくある質問
アパート経営に興味を持つ人のよくある質問にお答えします。
細かな疑問を解決し、より鮮明なイメージを持ってアパート経営の検討を行ってみてください。
- アパート経営の成功率を知りたい!儲からない人はどのくらいいる?
- アパート経営は何年で黒字になる?
- アパート経営の収入はどのくらい?
アパート経営の成功率を知りたい!儲からない人はどのくらいいる?
不動産査定などを行う「イエウール」が行った調査によると、アパート経営の成功率は約7割とされています。
土地活用、収入源の増加、税金対策などさまざまな面で恩恵を受けられるため、実は多くの人が満足のいくアパート経営を実現できているのです。
適切な計画立てや収支予測、定期的な計画見直しを怠らずにいれば、アパート経営の目的を達成できる可能性は非常に高いと言えるでしょう。
アパート経営は何年で黒字になる?
土地や物件の需要にもよりますが、アパート経営で黒字にするには数年から十数年の時間を要することが一般的です。
特に最初の数年は頭金や初期費用といった大きな出費が発生するため、赤字になりやすいと言えます。
よく「アパート経営は10年で黒字になる」といわれがちですが、さまざまなリスクを抱えているアパート経営で10年先の計算を行うことは困難です。
老朽化リスクや土地周辺の環境変化によって家賃を下げざるを得ない可能性が生まれる場合もあるため、一概には回答ができません。
アパート経営の収入はどのくらい?
国税庁が行った「令和2年申告所得税標本調査結果」によると、不動産所得者の平均所得額は540万円とされています。
不動産所得者全体の数字なのでアパート経営者の所得額詳細を調査することはできませんが、おおよそ日本人の平均年収よりも多い収入を得られていることがわかりました。
しかし、手取りは収入から返済や税金を中心とした支出を引いた額なので、上記の数字がそのまま受け取れるわけではありません。
アパート経営はするなと言われないためにも入念な準備を
アパート経営はするなと言われるのは、様々な面で準備が足りておらず、結果的に失敗してしまう人が多いことが理由となっています。
また、経験のある人でも想定外のリスクに対処できず、経営を失敗で終えてしまうことも少なくありません。
できるだけリスクを抑えてアパート経営を行うには、以下のようなポイントを意識する必要があります。
- 自己資金を増やす
- 生活スタイルに合わせた管理方法を選択する
- 周辺調査の徹底で十数年先のニーズまで把握・予測する
もちろん事前準備だけでは対処しきれないトラブルが発生することも考えられます。
しかし、あらゆるリスクを想定して対処方法を考えておけば急なキャッシュフローの悪化などを防ぐことができます。
最終的な判断経営を行うのは貸主自身なので、妥協のない準備・経営を行って黒字化を目指せるアパート経営を実現しましょう。
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