「不動産投資で法人化とは何?」
「法人化するメリットは?」
「法人化を検討するべき目安を知りたい」
このような疑問を持っている方も多いのではないでしょうか。
不動産投資で法人化することでさまざまなメリットがありますが、わかりにくい部分もあります。
この記事では、以下について解説していきます。
- 不動産投資で法人化するメリット
- 不動産投資で法人化するデメリット
- 不動産投資で法人化する際の注意点
- 不動産投資で法人化までの流れ
不動産投資で法人化が気になっている人は、ぜひ最後までお読みください。
不動産投資で法人化とは?
不動産投資で法人化とは、運営主体を個人から法人へ変えることです。
個人で不動産投資を行っている場合、家賃収入が多くなるにつれて、支払うべき所得税や相続税が高くなってしまいます。
対策として、法人化することで税金を抑えられる可能性が高くなり、効率のよい不動産投資が可能となります。
不動産投資で法人化するメリット
不動産投資で法人化するメリットは以下の5点です。
- 節税がしやすい
- 融資が受けやすい
- 経費の使い道が広がる
- 会計上の赤字を10年間繰り越せる
- 決算月を自由に決められる
それぞれを解説します。
1.節税がしやすい
不動産投資を法人化する主なメリットの一つは、税務面での節税効果です。
法人化した場合、法人税を支払う必要があり、その税率は最大23.2%です。
一方で個人で不動産投資を行う場合、所得に応じて所得税の税率が異なります。
税率の幅は5%〜45%となっており、所得金額が900万円を超えると所得税率は33%以上です。
法人税や所得税以外にも発生する税金はありますが、それをすべて含めても法人化した方が税率が低くなるケースがあり、節税効果が期待できます。
さらには、法人は特定の経費を控除できる場合があり、さらなる節税が可能です。
このように節税は不動産収益を最大化するために重要な要素であり、法人化によって税金負担を軽減することができます。
2.融資が受けやすい
不動産投資において、法人化することで資金調達のための融資を受けやすくなります。
銀行や金融機関は法人に対して個人よりも、情報が開示され、会計処理が厳格化されているため、信用力を高いとみなす傾向があります。
これにより、投資できる不動産の数も増え、事業拡大もしやすくなるでしょう。
3.経費の使い道が広がる
法人化によって、不動産投資にかかる経費の使い道が広がります。
法人は、法人税法に基づいて経費を計上することができるため、事業主自身や家族への給与や退職金、生命保険の保険料など、さまざまな経費を控除して税務上のメリットを享受できます。
経費の控除は不動産投資の収益を増やす上で重要であり、法人化によって収益の最大化がしやすいといえるでしょう。
4.会計上の赤字を10年間繰り越せる
青色申告をしている法人は赤字を10年間繰り越せて、他の所得と相殺できるのがメリットの1つです。
個人の場合は繰越が最大でも3年のため、10年間も他の所得と相殺できる法人の方が節税効果を期待できます。
特に不動産投資は初期に大きな投資が必要な場合があり、最初の数年間は赤字になることがよくあります。
しかし、法人化することでこれらの赤字を後の年度に繰り越すことができるため、利益が出ない期間でも過去の損失を相殺することができ、税負担を軽減することができるでしょう。
5.決算月を自由に決められる
不動産投資を法人化した場合、個人で行う場合よりも柔軟に会計年度(決算月)を設定できます。
通常、個人の場合は1月から12月までのカレンダー年が会計年度となりますが、法人としての運営ではその範囲を自由に決めることができます。
例えば、1月から12月までのカレンダー年ではなく、4月から翌年の3月までを会計年度とすることも可能です。
このメリットとして、不動産投資は季節や市場の変動によって影響を受けることがあります。
例えば、観光地の物件の場合、夏季や年末年始が収益のピークとなることが考えられ、法人化によって決算月を夏季や年末に設定することで、収益や経費の特性に合わせた計画を立てることができます。
不動産投資で法人化するデメリット
不動産投資で法人化するデメリットは以下の5点です。
- 法人設立手続きの手間がかかる
- 法人の設立費用がかかる
- 法人の維持費用がかかる
- 副業とみなされる可能性がある
- 長期保有後の売却益にかかる税制優遇がない
それぞれを解説します。
1.法人設立手続きの手間がかかる
不動産投資で法人化する際には、会社設立の手続きが必要となります。
商業登記や法務局への書類提出、社名の登録、社則の作成など、複雑な手続きをしなければなりません。
特に初めての経験者には時間とエネルギーを要する作業です。
2、法人の設立費用がかかる
不動産投資を法人化する際には、会社設立に伴う費用がかかります。
登記費用や法律顧問料、公証役場での印鑑登録料などを支払わなければなりません。
これらの費用は個人で不動産投資を行う場合には発生しないため、法人化の際には初期費用として予算に計上する必要があります。
3、法人の維持費用がかかる
法人として運営するには、年間の維持費用がかかります。
会計記帳、監査報告書の作成、法定報告書の提出などが含まれ、これらのコストは毎年発生します。
法人の運営負担となるため、維持費用を予算に計上し、計画的に対応しなければなりません。
また、専門家のアドバイスを仰ぐ際のコンサルティング料も維持費用に含まれる場合があり、維持費用が多くなりやすいのがデメリットです。
4、副業とみなされる可能性がある
サラリーマンの方が副業として不動産投資を行っているケースがあります。
そもそも本業の企業が副業を認めていない場合もあるため、就業規則違反となり、懲戒の対象になる可能性があります。
不動産投資で法人化する前には必ず就業規則を確認して行うようにしましょう。
5、長期保有後の売却益にかかる税制優遇がない
個人が住宅を所有して5年以上の長期保有した場合には、譲渡所得税の特別控除などの税制優遇が適用されることがあります。
しかし、法人が不動産を売却した場合にはこのような税制優遇が受けられません。
法人化した場合は、保有期間に寄らず一律に課税され、個人の長期保有による譲渡所得の優遇税制よりも高い税金を支払う必要があります。
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不動産投資で法人化の目安となる給与所得は約900万円
不動産投資で得ている所得が900万円を超える方は法人化の検討をするのがおすすめです。
この理由として、個人所得税率と法人税の税率は課税所得が900万円を超えると法人税の方が低くなるためです。
【個人所得税】
課税所得金額 | 税率 |
195万円以下 | 5% |
195万円超~330万円以下 | 10% |
330万円超~695万円以下 | 20% |
695万円超~900万円以下 | 23% |
900万円超~1,800万円以下 | 33% |
1,800万円超~4,000万円以下 | 40% |
4,000万円超 | 45% |
【法人税】
所得金額 | 税率 |
資本金1億円以下の法人かつ年800万円以下 | 15% |
資本金1億円以下の法人かつ年800万円超 | 23.30% |
上記以外 | 23.30% |
このように法人税は最大で23.20%の税率となるため、個人の課税所得が900万円を超えると法人税の方が低くなります。
しかし、状況によっては課税所得が900万円超でも法人化しない方がよいケースもあります。
一つの目安として、個人での課税所得が900万円を超えたら、法人化を検討してみてはいかがでしょうか。
不動産投資で法人化する際の注意点
不動産投資で法人化する際の注意点は以下の2つです。
- 赤字でも法人住民税がかかる
- 法人のお金は自由に使えない
それぞれを解説します。
1.赤字でも法人住民税がかかる
法人住民税は、法人として事業を行う法人に課される税金です。
法人の所得に対して課税され、一定の税率が適用されます。
これは、法人が経常的に利益を上げている場合だけでなく、赤字を計上している場合でも発生します。
具体的には、法人は所得税とは別に法人住民税を納付する必要があります。
法人住民税は法人の所得に応じて計算され、法人の事業規模や地域によって税率が異なります。
したがって、法人化して不動産投資を行う際には、法人住民税の負担を考慮する必要があります。
赤字を計上している場合でも法人住民税がかかるため、利益が出ない期間にも税金を支払うことが求められます。
そのため、法人化しても法人住民税を払わなけらばならないことに注意が必要です。
2.法人のお金は自由に使えない
法人化すると、個人と法人の資産が明確に区別されます。
つまり、法人のお金は法人の事業活動に使用されるべきであり、法人としての目的以外には使えないという制約があります。
具体的には、法人の資金は法人の銀行口座に保管され、個人の私的な用途には使用できません。
法人の銀行口座から私的な支出を行うことは法人の資金の不正使用となり、法的な問題につながる可能性があります。
このように、法人化することで資金の管理が厳格になります。
法人のお金を個人的な支出に充てることは違法であり、不正行為として処罰されることがあります。
また、法人の資金を個人に無断で流用することは、信頼性や信用性を損ねる可能性もあるため、注意しなければなりません。
不動産投資で法人化までの流れ
不動産投資で法人化するまでの流れは以下の4つです。
- 会社設立の準備
- 定款作成・認証
- 登記書類の作成と申請
- 法人設立に必要な各種届出を行う
それぞれを解説します。
1.会社設立の準備
法人化を検討する場合、まずは会社設立の準備を行います。
具体的には、会社の名称を決定し、事業目的を明確化します。
また、出資者を決定し、資本金の額を決める必要があります。さらに、取締役や監査役などの役員を選任することになります。
会社の住所や事務所の確保も重要なポイントです。
2.定款作成・認証
会社の設立には、定款と呼ばれる契約書を作成する必要があります。
定款には、会社の組織や運営に関する基本的なルールや規程が記載されます。
たとえば、会社の名称、住所、事業目的、資本金、役員の構成、株式の取り扱いなどが含まれます。
定款の内容は法律に則って記載され、公証人の立ち会いのもとで認証されます。
3.登記書類の作成と申請
定款の作成と認証が完了したら、次に登記書類を作成して所轄の法務局に申請します。
登記書類には、定款や出資者名簿、取締役の任命状などが含まれます。
これらの書類を提出し、登記が完了することで会社が法人として成立します。
4.法人設立に必要な各種届出を行う
法人が成立した後は、法人運営に必要な各種届出や手続きを行う必要があります。
これには、税務署への法人税や消費税の申告、社会保険への加入手続き、従業員の雇用契約の作成などが含まれます。
これらの手続きを適切に行うことで、法人としての運営が始まります。
不動産投資で法人化する場合は、さまざまな要素を検討してから実施しよう
本記事では、不動産投資で法人化する際のメリットやデメリット、注意点などを解説しました。
法人化の一つの目安として、個人での不動産投資で得られる課税所得が900万円超かどうかです。
この目安に近づいている場合は、法人税や個人所得税以外の税金や物件の費用を確認し、節税効果が期待できるかシミュレーションするのがおすすめです。
しかし、個人ではシミュレーションが難しいため、専門家に確認した方が安心といえるでしょう。
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