腕時計が投資対象として注目されていることはご存じでしょうか。
昨今では、スマートフォンの普及により、腕時計の「時間が確認できる」という機能にありがたみを感じにくくなっています。
しかし、コレクションやファッションアイテムとしての根強い人気は健在で、人気の品は今なお高値で取引されています。加えて、腕時計は資産価値を維持しやすく、資産防衛ための投資方法としても期待できます。
この記事では、腕時計投資の魅力やメリットとデメリットを解説します。腕時計が好きな方や現物資産への投資に興味がある方は、ぜひ最後までご覧ください。
腕時計投資とは
ファッション、ビジネス、アウトドアシーンなど、生活のさまざまな場面に溶け込んで活躍する腕時計。
腕時計の歴史はおよそ1900年ごろまで遡り、元々携帯用として使われていた懐中時計の利便性をより高めることを目的に開発されたと言われています。誕生して1世紀ほど経過した腕時計ですが、昨今では一種の実物資産として手にする人が増えています。
希少性のある腕時計の多くが値上がりしているなか、ここ数年で特に象徴的な出来事は、世界的時計ブランド「ロレックス」が製造している「デイトナ」の価格上昇です。
2016年に約160万円で発売されたデイトナは、2021年には一時約400万円までの値上がりを見せ、2022年8月現在でも高値での取引が続いています。値上がりの理由の一つとして、新型コロナウイルスの影響でロレックスのスイス工場が一時閉鎖し、供給量が大幅減少したことによる需要増加が挙げられます。
しかし、コロナ禍以前にもインバウンドの増大で高級腕時計へのニーズは高まっており、「腕時計投資」という言葉も2010年以降徐々に広がりを見せていました。
ロレックスに限らず、高級時計の多くは資産価値を維持しやすい特徴を持っており、嗜好品としてだけではなく、投資資産としての側面も見えてきたことが昨今の腕時計投資ブームに繋がっていると言えます。
腕時計投資の5つのメリット
腕時計に投資する以下5つのメリットを紹介します。
腕時計投資がブームになった理由と共に解説していくので、投資の検討材料として参考にしてみてください。
- 高級腕時計は資産価値が下がりにくい
- 身に着ける楽しさを感じながら投資できる
- 換金率が高い
- 他の実物資産と比較して維持費が安め
- 情報源が豊かになりつつある
高級腕時計は資産価値が下がりにくい
高級腕時計は価値が下がりにくい実物資産の一つです。
腕時計はコンディショニング次第で半永久的とまではいかなくとも、20年、30年、それ以上と非常に長い間使い続けられるのが特徴です。
特に動力源に内部のぜんまいの力を使う「機械式腕時計」は寿命が長く、実物資産として投資対象になる高級腕時計の多くはこのタイプに属します。定期的にオーバーホールという時計全体の整備を行うと、内外のコンディションを高く保つことができ、資産価値が維持されやすくなります。
実際に、査定時にオーバーホールの完了を表す証明書を持参すると、買取価格をアップする業者も存在するほどです。
ちなみに電池などを動力源とし、比較的安価で購入できる「クォーツ式腕時計」も適切なメンテナンスやオーバーホールによって状態を保てますが、構造上機械式より短命なのが一般的です。
機械式の高級腕時計を販売するブランドは修理体制やサポート体制が万全なうえに、投資対象となるような人気製品は整備パーツの流通量が多く、正規の修理業者以外にも修理ノウハウが蓄積されています。
このように長く使用できて値崩れしない環境が揃っているため、資産を守るための投資対象としても認識されるようになりました。
身に着ける楽しさを感じながら投資できる
資産運用や保全に期待できる腕時計投資ですが、真の醍醐味は「憧れの腕時計を所有すること」にあるのではないでしょうか。
高い技術力や歴史的背景が集約されたこだわりの一本を所有する感覚は、株や投資信託といった一般的な金融商品へ投資する際には得られません。
お金を守ったり、増やしたりするだけでなく、憧れの腕時計を身に着けて生活できる充足感を覚えられるのも、腕時計投資の大きなメリットの一つです。
お金の増減のみに着目するだけでなく、実物資産を所持して日常を鮮やかに彩るという目線でも楽しめると、自ずと知識がつくことに加え、心理的にも落ち着いて投資を行えるでしょう。
換金率が高い
腕時計は換金率が高い資産の一つです。
市場動向によって変わる数値とはいえ、投資対象となるような高級腕時計は常に一定のニーズが存在するので大きな値崩れを起こす可能性が低いです。
もちろん商品状態にも大きく左右されますが、オーバーホールを怠らなければ、有名ブランドの高級腕時計の換金率は50%を超えることも多く、なかには70%を超えるケースも少なくありません。
また、流動性が高いのも腕時計市場の特徴で、売りたいときに売りやすいため、現金化するのも容易な資産と言えます。
普段から頻繁に使用できる資産であるにも関わらず、これほどの換金率を誇る腕時計は安全資産の一つとして数えられるのではないでしょうか。
他の実物資産と比較して維持費が安め
他の実物資産と比較して、腕時計の維持費は安めです。
ダイヤモンドや金のような貴金属や美術品、スニーカーといったコレクションができる実物資産と比較した場合、腕時計のように普段から使用しても価値を維持しやすい資産は希少です。
腕時計の状態を保つオーバーホールを行う頻度は3〜5年に1回程度と、それほど多いわけでもありません。
1回あたりの費用は5万円〜20万円と決して安くありませんが、コレクション系資産を保管する倉庫やセキュリティーサービスの契約で定期出費が増えるよりリーズナブルと言えるのではないでしょうか。
相場を注視しつつ、前回のオーバーホール期間なども踏まえて投資を行うとさらに維持費を安く抑えられるかもしれません。
情報源が豊かになりつつある
腕時計投資という言葉が広がりつつある昨今、腕時計に関する情報はインターネットを中心により収集しやすくなりました。
誰でも高級腕時計の価格チャートや、時計買取店による週ごとの買取価格情報を確認できるため、一般投資家でも今後の展望を見据えて虎視眈々と投資タイミングを伺うことが容易になっています。
どんな投資商品であれ、将来の価格変動については誰にもわかりませんが、相場分析を行うための情報源が増えていることは、投資家にとって追い風であることは間違いありません。
腕時計投資のデメリット5つ
腕時計投資のデメリットを解説します。
投資を行う場合は投資対象別にデメリットを把握し、最悪の状況に陥らないための対策を常に考えておく必要があります。
先に紹介したメリットと天秤にかけて、慎重に検討を行うようにしましょう。
- 短期間で大きく資産を増やすことは難しい
- 損失リスクがある(紛失も含む)
- 高価だからといって資産価値が続く保証はない
- 初期投資額は少し高め
- 複利効果を得ることが難しい
1つずつ解説いたします。
短期間で大きく資産を増やすことは難しい
腕時計投資は、短期間で大きく資産を増やすのには向いていません。
例えば、有名腕時計ブランドのHUBLOTのこちらのアイテムも1年以上かけて価格が上昇しています。
なかには2021年末から2022年初頭までの間に急激に価格を伸ばしたロレックスのサブマリーナーのような商品もありますが、腕時計投資ブームだからといってどの時計も価格変動が起こると考えるのは禁物です。
資産価値を維持しやすく価格が急落しない代わりに、価格の急騰も発生しないのが腕時計投資の特徴と言えるでしょう。
腕時計投資では、実際に身に着ける楽しさを味わいながら、徐々に価値が高まるのを待つ中長期保有が基本スタイルとなります。
損失リスクがある(紛失も含む)
腕時計投資に限らず、投資には損失リスクが存在します。
腕時計は換金率が高く、特に高級腕時計の換金率は50%を超えるケースも多いとはいえ、需要が高くなければ買取価格が高くなることもありません。
投資タイミングが悪かったり、投資対象として選んだ腕時計の資産価値が低ければ、大きな損失を被ることも十分に考えられます。
また、実物資産である以上紛失・盗難のリスクも付いて回ります。
何があっても時計は腕から外さないよう徹底する、長時間外出する場合はそもそも身につけないなど、自らの性格や行動・習慣を俯瞰して、紛失を防ぐルール作りを行うことも必須です。
高価だからといって資産価値が続く保証はない
購入時が高価だったからといって、その後も高く売却できる保証はありません。
腕時計投資において資産価値が上昇しやすいのは、各ブランドの定番モデルでロングセラーの製品であることが多いです。
定番モデルとしてブランドを代表する一本だからこそ人々が憧れ、手にしたいと考える人が多いため、価値も上昇していきます。
逆に、あまりに奇抜すぎたりマニアックすぎるデザインや機能の製品は、購入時価格が高くても市場でのニーズが高まらず、いつまで経っても利益を出せないケースも考えられます。
一概に「マニアックな時計=市場ニーズが低い」とは言えませんが、豊富な知識や相場分析能力を備えていないと、ギャンブル要素の強い投資になる可能性があります。
今後新たに価値が高まる時計を見極めるには長年の経験や知識量が必須ですので、特に初めのうちはリセールバリューが高めの製品を選択してみるのが良いでしょう。
初期投資額は少し高め
腕時計投資の初期投資額はやや高めと言えるでしょう。
正確な定義は定められていないとはいえ、最低でも定価10万以上からが高級腕時計と言われることが多いようです。
しかし、市場で常に一定のニーズがあり、換金率も高めの製品を入手したい場合は、それ以上の資金を準備しなければならないケースも非常に多いです。
腕時計投資は投資額が少額だと利益が出しづらく、一定の資金力がなければスタート地点に立つことが難しい投資方法の一つと言えるでしょう。
複利効果を得ることが難しい
投資するにあたって、得た利益を再度投資して、資産を雪だるま式に増やしていく「複利効果」は絶大な効果を発揮します。
しかし、腕時計投資で複利効果を得ることは大変難しいです。
高級腕時計自体の流動性は高いものの、複利効果を得るには換金率が100%を超えるような腕時計を継続して入手する必要があります。
どれだけ資金があったとしても、利益を出せるほどの価値を持つ腕時計と出会えるかはタイミング次第であり、容易ではありません。
「ロレックスマラソン」という言葉があるように、資産価値が高い時計を入手するには、マラソンのように正規店を何店舗も巡る必要があります(それでも入手できないことが多いです)。
どれだけ余剰資金があっても、そもそも投資対象が存在しないというケースは腕時計だけでなく、コレクション系の実物資産投資ではよくある話です。
製品との巡り合わせも重要なポイントとなるのが、腕時計投資のメリットでもありデメリットでもあると言えるでしょう。
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時計投資の失敗を防ぐには値崩れしにくい商品の特徴を知ろう
腕時計投資で失敗を防ぐには、値崩れしない製品を選んで投資する必要があります。
投資に絶対はありませんが、これまでの傾向として値崩れしにくい腕時計にはいくつか共通点があるので、特に注意すべき点を抜粋して解説していきます。
- 駆動方式が「機械式」である
- 海外の人気メーカーが生産した製品
駆動方式が「機械式」である
値崩れしにくい時計は、駆動方式が「機械式」であることが多いです。
序盤でも述べましたが、腕時計が動く仕組みは「機械式」と「クォーツ式」に大別されます。
機械式は電池を動力源とせず、内部のぜんまいがほどける力を利用して針が時間を刻むようになっています。
その一方で、クォーツ式は動力源に電池を使います。非常に高い精度を誇りますが、内部の電子回路が壊れてしまうと寿命を迎えてしまう比較的短命な仕組みです。
機械式はオーバーホールや修理を行うことで長い間使い続けられるため、資産価値も残りやすくなっています。市場に出回る高級腕時計の多くは機械式なので、投資目的で時計を購入する場合は自ずと機械式を選択することになります。
海外の人気メーカーが生産した商品
実物資産として投資対象になる腕時計の多くは、海外ブランドの製品であることがほとんどです。
国内ブランドの腕時計も非常に高い品質を誇りますが、「安価ながらも高品質」という部分に重点が置かれて製造されていることが多いため、海外の機械式腕時計と比べると資産価値が低めになります。
時計投資におすすめのブランドは「雲上時計ブランド」
腕時計に投資をするなら、腕時計市場の中心的存在である「雲上時計ブランド」の製品がおすすめです。
その名の通り、雲の上の存在のように感じる高級時計で、以下の5ブランドが該当します。
- パテックフィリップ
- ランゲ&ゾーネ
- ヴァシュロンコンスタンタン
- ブレゲ
- オーデマピゲ
これらのブランドの製品は費用的にも簡単に入手はできませんが、資産防衛や運用の観点から見ると期待値が高く、憧れの的とも言える品々が揃っています。
腕時計投資は楽しみながら続けることが大切
市場価格が高まりを見せて投資資産としても注目されるようになった腕時計。
株式投資のようにテクニカル分析だけでは市場分析が困難なため、本当の価値を見出すには実際に時計を装着してみるなどして、積極的に知識を吸収する姿勢が必要不可欠です。
ただ、ファッションとして楽しみつつ、学んだことを資産運用にも活かせるという特徴は、腕時計投資の醍醐味であるとも言えます。もともと腕時計が好きな人であれば、これ以上ないほど最適な資産運用になるでしょう。
しかしながら、決して安い買い物ではないため、メリットとデメリットを把握した上で慎重に検討してください。