イギリスのアンティークコインに興味があるけれど、たくさん種類があり過ぎて、何をどう選べばよいかわからず戸惑っていませんか?
イギリスのアンティークコインを失敗なく選定するためには、イギリスとその王室の歴史をおおまかにでも理解することが大切です。
イギリスには様々な王朝があり、歴史があります。その時代の中で、様々な個性あるコインが鋳造されました。
歴史の大枠がわかると、歴史がわかると、その時代におけるコインの見方の解像度が高くなり、いっそうアンティークコイン投資への理解が深まります。
本記事では、アンティークコイン選びの参考にしていただくために、イギリスの時代別のアンティークコインの特徴、描かれる国王・女王の時代がどのような時代だったのかをわかりやすくまとめました。
ぜひ最後までお読みいただき、投資価値のあるアンティークコイン選びの参考にしてみてください。
【時代別】イギリスのアンティークコインの3つの特長
これからアンティークコイン投資を始めようとしている人は、イギリスのアンティークコイン収集から始めてみるのがおすすめです。
イギリスのコインは、個性がありつつも、デザインが美しいものが多く、価値がわかりやすいのが魅力です。
またイギリスは日本の皇室にあたる王室のある国です。現在テレビでニュースを賑わせているロイヤルファミリーの祖先がコインに描かれている国王や女王だと考えると、コインに対してより親近感がわくのではないでしょうか。
ここからは、イギリスのアンティークコインに興味のある方に向けて、3つの特徴を説明します。
- 特徴1:国や王室の人気が高い
- 特徴2:投資価値が高い
- 特徴3:美しいデザインや彫刻
特徴1:国や王室の人気が高い
イギリスのアンティークコインの特徴の1つに、イギリスという国、そしてイギリス王室の人気が世界的に高いことが挙げられます。
特に、皇室のある日本国民にとっては、イギリス王室は親近感のある存在かもしれません。
それだけではなく、かつては大英帝国として世界中に植民地を広げていたこともあり、現在もイギリスには英連邦として56の加盟国から構成される国家連合が存在します。そのような加盟国の国民にとっても、イギリスとその王室は身近に感じるものでしょう。
たとえば、イギリスでは、2022年9月8日にエリザベス女王2世が96歳で崩御した際、イギリス国内からだけではなく、世界中から哀悼の意が捧げられました。エリザベス女王2世は、女王在位期間が最長を誇り、国内外様々な国の国民に非常に深く愛された女王でした。
そのような中で、昨年末、パース造幣局が、エリザベス2世の治世を記念する特別版の記念コインを発行することを発表したため、注目を集めています。
さらに、現イギリス国王であるチャールズ3世の肖像が描かれた記念硬貨が2023年に発行されることも発表されました。2023年1月1日以降にロイヤルミントで発行されるすべてのコインには、チャールズ3世国王の肖像が描かれることになります。
このように、大きな歴史の変わり目にいるイギリスのコインは、世界中のアンティークコインファンから熱い視線を送られているといえるでしょう。
特徴2:投資価値が高い
イギリスアンティークコインの特徴2つ目は、投資価値が高い点です。
投資価値の高さとして、2つポイントがあります。
1つは、ここ20年間、イギリスアンティークコインの価格が大きく右肩上がりしている点です。以下のスタンレーギボンズ社のグラフにある通り、右肩上がりの線は安定しており、2008年のリーマンショックの際も大きな打撃は受けませんでした。
スタンレー ギボンズ社は1885年設立のアンティークコイン専門会社です。ギボンズ社のレアコインインデックス GB200は、イギリスおよびイギリスの独立した Spink Coins カタログに記載されているグローバル オークション価格に基づいて、投資適格の英国コイン200枚の価格を追跡しています。
2つ目は、過熱するアメリカアンティークコインの価格に比べると、イギリスアンティークコインの価格はまだそれほど高騰しておらず、伸びしろがあると考えられる点です。
たとえば、2021年にサザビーズオークションに入札された1933年発行のアメリカハイ・レリーフ20ドル金貨は、なんと20億円で落札され、話題となりました。
一方、1839年にイギリスで発行されたウナとライオン5ポンド硬貨は、ヘリテージオークションにて歴代最高としておよそ1.7億円で落札されています。
以上のことから、アメリカと比べた場合、イギリスアンティークコインには、大きなポテンシャルがある可能性があります。
特徴3:美しいデザインや彫刻
イギリスアンティークコインの3つ目の特徴は、その美しいデザインです。
イギリスでは、ほとんどのコインが王立造幣局(ロイヤルミント)で製造されています。王立造幣局では、数々の偉大な彫刻家がコインのデザインを行いました。
たとえば、彫刻師ウィリアム・ワイオンは、1828年から王立造幣局の主任を務め、繊細で品のあるデザインで一躍有名となりました。
彼の代表作品はあの有名な「ウナとライオン」硬貨です。1590年に出版されたエドマンド・スペンサーの詩「妖精の女王」の登場人物であるウナとして、当時のヴィクトリア女王を描いています。物語が現実に重ねられたこのコインは、発想の斬新さから、多くのアンティークコインファンを魅了しています。
ワイオンの2つ目の代表作である「スリーグレイセス銀貨」も有名です。スリーグレイセス銀貨は、表側は愛とエレガンス、そして美を象徴する3人の美しい女性が描かれ、裏には、イングランドの国章である盾、スコットランドの国花であるアザミの花、アイルランドの国章であるハーブが精巧に描かれています。その美しさは見る人の心を奪います。
ワイオンのデザインとして代表的な3つめの作品である「ヴィクトリア女王のゴシッククラウン銀貨」は、当時の産業革命と資本主義化の反動として生まれた、ゴシック・リバイバル(中世への憧れ)の風潮がデザインに濃厚に反映されています。女王の髪型、ドレス、その周囲を施すゴシック体など、クラシカルで洗練されています。
このように、ワイオンが彫刻したコインは、美しく洗練されており、どれも眺めているだけで満足できる仕上がりです。
ウナとライオン、スリーグレイセス、ヴィクトリア女王のゴシッククラウン銀貨に興味のある方は、ぜひ以下の記事もご覧ください。
ウナとライオンとは?歴史やコインの種類、価値が高い理由を徹底解説
その他、ウィリアム・ワイオンのライバルと言われたイタリア出身のベネデット・ピストルッチも有名な彫刻師です。彼は1817年に「聖ジョージと竜退治」と呼ばれる金貨をデザインしました。
女性彫刻家としてメアリー・ギリックも有名です。彼女は、1953年から1967年に英国硬貨をデザインし、エリザベス2世の肖像画を描いたコインが特に評価されています。以下のように王冠のない君主が親しみやすく描かれ、当時、革新的かつ新鮮であるとされました。
このように、イギリスアンティークコインは当時名声を得た彫刻家によって時代背景を加味してデザインされた美しさ、個性に溢れています。
投資家が知っておくべきイギリスの人気アンティークコインと歴史
ここからは、投資家が知っておくべきイギリスのアンティークコインを時代別に紹介します。
どれもヘリテージコレクションで、高額で落札されたコインです。その時代に流通したコインの種類や、歴史的な背景についても説明しています。
ぜひコイン選びの参考にしてみてください。
- 古代(紀元前~1065年)
- ノルマン朝時代(1066年~1154年)
- プランタジネット朝時代(1154年~1399年)
- ランカスター朝・ヨーク朝時代(1399年~1485年)
- テューダー朝(1485年~1603年)
- ステュアート朝時代 (1603年~1714年)
- ハノーヴァー朝時代(1714年~1901年)
- サクス=ゴバーク=ゴーダ朝(1901~1907)
- ウィンザー朝時代(1908年以降)
古代(紀元前~1065年)
イギリスの古代コインで代表的なコインは「古代ケルティックガリア(紀元前100-50)」です。
2015年8月にヘリテージオークションにて、12,500ドル(およそ163万円)で落札されました。
この時代で現代まで比較的多く残っているコインはケルトコインです。ガリア人(現在のフランス地域に住んでいた民族)の中のパリジイ族が製造したこのコインは、ケルトコインの中で、最も美しいとされています。
時代背景としては、西暦43年に当時のブリテン島はローマに侵略されます。ケルトコインは、その前からケルト人によって鋳造されていました。
最初はギリシャのコインを、次にローマのコインを模倣して造られましたが、ケルトの彫刻家は、次第に独自のスタイルを開発し、様式化された馬、抽象的な形、ケルトの首長の肖像を描いたコインを作成しました。
ケルトコインの特徴は、ケルト美術と同様に、神話やイノシシ、鷲、雄牛、狼、ワタリガラス、蛇、そして想像上の動物が描かれている点です。外観は素朴かつファンタジックで、全体的におおらかな印象があります。
左の表側には、ケルト化した太陽神アポロの横顔が描かれています。波打つ髪が特徴的です。右の裏側には、疾走する馬と四つ葉、そして市松模様が美しく描かれています。
鑑定番号 | 3809164-002 |
NGCの説明 | c.100-50 BC GAUL, THE PARISII AV Stater |
落札価格 | $12,500.00(2015年8月13日) |
グレード数 | Ch XF Strike: 5/5 Surface: 3/5 |
重量 | 7.36g |
直径 | 22mm |
表面 | ケルト化したアポロン神 |
裏側 | 馬と四つ葉、市松模様 |
ノルマン朝時代(1066年~1154年)
この時代の代表的なアンティークコインは、「征服王ノルマン公ウィリアム1世(1066〜87)(AU58)」の ペニー銀貨です。
2014年6月にヘリテージオークションにて910ドル(およそ154万円)で落札されました。
ウィリアム1世は、ノルマン人として初めてイギリスを統治し、イングランド王として即位した人物です。
ノルマン公ウィリアム1世は、即位前はフランスのノルマンディ公ギョーム2世でした。1066年にブリテン島南部に上陸し、戦いに勝利し、ウィリアム1世と名を変えて、英仏にまたがる統治を行うようになったのです。
この出来事は「ノルマン・コンケスト」と呼ばれ、イングランドで行われた最後の征服となります。これ以降、ノルマン朝のもとでイングランドは統治基盤が固まり、他民族によって征服されることはありませんでした。
この征服にちなんで、ウィリアム1世は征服王とも呼ばれています。
コイン表面には、ウィリアム1世の肖像が施され、裏面は十字架が描かれています。十字架の横に添えられた円の中に、さらに十字架が描かれています。この円はアニュレットと呼ばれます。
画像からはわかりませんが、このアニュレットの中にPAXSという文字があり、ラテン語のpax(平和)の意味と解釈されています。
中世らしい象徴的なデザインが好みの方におすすめの1枚です。
証明証番号 | 19517828 |
PCGS番号 | 149911 |
日付 | (1066-87) |
グレード数 | AU58 |
落札価格 | $1,150.00(2012年1月2日)$910.63(2014年9月10日) |
重量 | 1.34g |
直径 | – |
表面 | ウィリアム1世 |
裏側 | 十字架 |
プランタジネット朝時代(1154年~1399年)
プランタジネット朝時代を代表するコインは、「エドワード3世(1327-1377)ノーブル金貨(MS65)」です。
2023年1月にヘリテージオークションにて、546万円で落札されました。
プランタジネット朝時代に流通したコインの多くは、前時代と同じくペニー銀貨でした。
しかし、この時代、新たな鋳造が行われます。エドワード3世の2回目の鋳造の際に、初めてノーブル金貨が鋳造されたのです。
その後、ノーブル、ハーフノーブル、クウォーターノーブルの派生品が大量に精算されました。
コインに描かれるエドワード3世が生きたプランタジネット朝の時代は、他国との激しい領土争いの時代でした。
エドワード3世は、カベー朝の国王であったフィリップ4世と血縁があったため、自分こそがフランス国王であると主張し、フランスに宣戦布告し、戦争が始まります。この戦争は、後に百年戦争と呼ばれます。
以下のコインは、2023年1月9日に、ヘリテージコレクションにて、42,000ドルで落札されました。
コイン表面には、エドワード3世が右手に剣、左手に盾を持ち正面を向いています。船尾には旗が乗っています。
裏面は、十字が施され、角には冠をかぶったライオンがいます。
この時代、まだコインに描かれる王の肖像は、緻密というよりは素朴なイメージですが、イギリス史上、初めての金貨ということもあり、非常に人気のあるコインです。
証明証番号 | 45204265 |
PCGS番号 | 895429 |
日付 | (1361-69) |
デノミネーション(通貨単位) | ノーブル |
グレード数 | MS65 |
落札価格 | $42,000.00(2023 年 1 月 9 日) |
重量 | 7.62g |
直径 | 34mm |
表面 | エドワードの肖像、船に立ち、右手に剣、左手に盾、船尾に旗 |
裏側 | 十字 冠をかぶったライオン |
ランカスター朝・ヨーク朝時代(1399年~1485年)
ランカスター朝を代表するコインは、 「エドワード4世 (1471-83)エンジェル金貨(MS64 PCGS)」です。
2022年11月に、ヘリテージオークションにて19,800ドル(およそ257万円)で落札されました。
ランカスター朝時代も、前時代に引き続き、ノーブル金貨が主に使用されますが、その後、ヨーク朝エドワード4世の時に、エンジェル金貨が鋳造されます。
エンジェル金貨の名前は、大天使ミカエルが、竜を退治している様子がコインに描かれていることに由来します。同コインはエンジェルノーブルという名称で呼ばれることもあります。
ノーブル金貨から、エンジェルノーブル(金貨)へ切り替わる経緯には、イギリス国内での金の不足が関係しています。
エドワード4世の前の王ヘンリー6世(1422-61)治世時は、金の不足により、ノーブル金貨の鋳造数が減りました。その当時、造幣局はロンドンとカレーにそれぞれありました。しかし、ランカスター朝末期には、金不足で、ロンドンでしか金貨は鋳造されなくなりました。
その背景には、1430年代以降、金の価格が上昇し、イギリスよりも大陸のヨーロッパでその価格が高くなったことがあります。金貨が利益のために輸出され、イギリスでは金不足が起こります。最終的に、金貨の流出を防ぐため、金貨の価値が大幅に引き上げられました。
そこで、6シリング8ペンスの金貨としてエンジェル金貨が登場することになりました。
なお、コインに描かれているエドワード4世は、当時行われていたバラ戦争の勝者です。バラ戦争とは、1455年に始まったイギリスの国内戦争です。当時勢力のあったランカスター朝とヨーク朝が王位をめぐり争いました。
「エドワード4世 (1471-83)エンジェル金貨(MS64 PCGS)」は表面に聖ミカエルのドラゴン退治の絵、裏面は十字のマストがそびえる帆船が描かれています。
大天使ミカエルの描かれている姿は幻想的です。時代を超えて愛される天使の模様は、アンティークコイン初心者にもわかりやすく、愛着の持てる1枚といえるでしょう。
証明証番号 | 45283374 |
PCGS番号 | 165000 |
日付 | (1471-83) |
デノミネーション(通貨単位) | Angel |
グレード数 | MS64 |
落札価格 | $19,800.00(2022年11月2日) |
重量 | 5.11g |
直径 | 27mm |
表面 | 聖ミカエルのドラゴン退治 |
裏側 | 十字マストの帆船 |
テューダー朝(1485年~1603年)
チューダー朝を代表するコインは、「エリザベス1世(1558-1603)ソブリン金貨AU58 PCGS)」です。
2022年1月に、ヘリテージオークションにて84,000ドル(およそ1092万円)で落札されました。
ソブリン金貨とは、1489年、ヘンリー7世の時代に発行された金貨です。
ソブリン金貨の特徴は、表に国王の肖像画を描き、裏面はイングランドの王室の紋章を示している点です。ヨーク朝までは、竜の退治をするミカエルが描かれたエンジェルコインであったのに対し、玉座に座る王が描かれたコインであったため、君主という意味のソブリンという名称がつけられました。
ソブリン金貨は、当初、従来のエンジェルコインの2倍の重さで、直径42mm、重さは15.55gでした。その後、エリザベス朝の時代に、さらに大型となっています。大型になった理由として、1480年代、西アフリカからヨーロッパへと大量の金が流入したことが挙げられます。
当時、コインはハンマー打ちと機械打ちの2種類の方法で鋳造されていました。機械打ちが始まったのは、エリザベス1世の時代だったとされています。
コインに描かれるエリザベス1世の即位した時代は、宗教観の対立が非常に激しい時代でした。前王ヘンリー8世のときにイギリス国教会が設立され、ドイツでは宗教改革が行われプロテスタントが登場した時代です。カトリック派であったメアリ女王によってプロテスタントが弾圧されるなど、争いが絶えませんでした。
そのような中で、エリザベス1世が賢帝と呼ばれた理由は、エリザベス自身がプロテスタントであったにも関わらず、即位後にカトリックを弾圧しなかったためです。エリザベス1世は、中庸路線で、各宗派の共存を図りました。
たとえば、エリザベスは、国王至上法で、教会のトップである国王を、教会の首長ではなく最高統治者の称号に定めました。この結果、イングランド国教会では、カトリック、プロテスタントを問わず、強硬意見を持つ者は排除されるようになり、宗教色が薄まりました。
以下の「エリザベス1世(1558-1603)ソブリン金貨AU58 PCGS)」は、表面にエリザベスが玉座に座る肖像が描かれています。
エリザベス1世の右手には王笏(おうしゃく)、左手には宝珠(ほうじゅ)が握られ、足元に落とし格子が描かれています。裏面には、チューダー ローズが描かれた王家の紋章の盾が描かれています。
王笏とは、王が握る、装飾的な杖のことです。宝珠とは、十字架が上に付いた球体を指します。
チューダーローズとは、イングランドの伝統的な花の紋で、赤バラが白バラを包み込む紋章となっています。赤バラと白バラは先の王朝のランカスター家とヨーク家を象徴しています。戦いはランカスター家が勝利しましたが、最終的に二つの王家が統合した形で、チューダーローズはイングランドの国花となったのです。
宗教対立を中庸の精神で共存に導いたエリザベス1世のソブリン金貨は、表も裏も堂々とした風情が感じられます。
証明証番号 | 41967494 |
PCGS番号 | 504115 |
日付 | (1592-95) |
デノミネーション(通貨単位) | Sov |
グレード数 | AU58 |
落札価格 | $84,000.00(2022年1月10日) |
重量 | – |
直径 | 43mm |
表面 | エリザベスが玉座に座る肖像。右手に王笏、左に宝珠、足元に落とし格子 |
裏側 | チューダー ローズが描かれた王家の紋章の盾 |
ステュアート朝時代 (1603年~1714年)
スチュアート朝を代表するコインは、「チャールズ1世ユナイト金貨(MS64 NGC)」です。
2023年1月に、ヘリテージオークションにて18,600ドル(およそ242万円)で落札されました。
チャールズ1世は、清教徒革命にて処刑された国王です。チャールズ1世は専制君主であったため、清教徒革命が起きる数年前から、議会と対立し、1642年には国王派と議会派に分かれて戦う内戦(シヴィル・ウォー)へと発展していきます。
スチュアート朝の時代は、ユナイト金貨、ローレル金貨、ギニー金貨の3つの種類のコインが鋳造されました。
- ユナイト金貨
- ローレル金貨
- ギニー金貨
1つ目のユナイト金貨は、スコットランドのスチュアート王家出身のジェームズ1世の時代に作られました。
イングランドとスコットランドの2つの王国を「統一(結合)」するというジェームズ1世の願いにちなんで名づけられました、
王はコインの右側を向いている構図がメインで、宝珠と笏を持っているものが多く見られます。
2つ目のローレル金貨は、ユナイト金貨の鋳造後、1619年から1625年にかけて発行されました。
王が月桂冠を被っている様子が表面に描かれているのと「FACIAM EOS IN GENTEM UNAM」というラテン語が刻まれているのが特徴です。
これは、旧約聖書にある言葉で「それらの国を1つにする」という意味です。
ユナイト金貨と同様、イングランドとスコットランド統一に対するジェームズ1世の想いが感じられます。
3つ目のギニー金貨は、1663年に発行され、イギリス初の機械打ち硬貨でもあります。
アフリカのギニアで産出された金を用いて鋳造されたため、ギニー金貨と呼ばれるようになりました。
ギニー金貨は、それまでの、ノーブル、ソブリン、クラウン、ユナイト、エンジェル、ローレルなど多種様々の金貨を統一するために発行されました。
以下は、順番に、ユナイト金貨、ローレル金貨、ギニー金貨の代表的なコインです。
スチュアート朝の時代は、この3つの金貨が鋳造され、最終的にはハンマー打ちが終了し、機械打ちへと変わったコインの歴史の過渡期と言える時代です。
鑑定番号 | 4496810-002 |
NGCの説明 | (1625-26) ENGLAND S-2687 CHARLES I UNITE |
落札価格 | $18,600(2023 年 1 月 9 日) |
グレード数 | MS 64 |
重量 | 9.02g |
直径 | 35mm |
表面 | 王冠を被りマントをつけたチャールズ1世の胸像 |
裏側 | – |
ジェームズ1世ローレル金貨 MS64 NGC
鑑定番号 | 5746861-010 |
NGCの説明 | (1621-23) ENGLAND S-2638A JAMES I LAUREL |
落札価格 | $38,400.00(2020年8月5日)(約500万円) |
グレード数 | MS 64 |
重量 | 9.08g |
直径 | 34mm |
表面 | 月桂冠を被ったジェームズ1世 |
裏側 | FACIAM | EOS IN | GENTEM | VNVM(アザミ)、王冠を被った王盾、フランを4分割する長い十字架 |
ウィリアム&メアリー エレファントキャッスルギニー金貨( MS61 NGC)
鑑定番号 | 3075381-004 |
NGCの説明 | 1693 ENGLAND ELEPHANT & CASTLE WILLIAM & MARY 5G |
落札価格 | $49,350.00(2015年1月5日)(約642万円) |
グレード数 | MS61 |
重量 | 41.75g |
直径 | 37.00mm |
表面 | ウィリアム3世メアリー2世の横顔 |
裏側 | – |
ハノーヴァー朝時代(1714年~1901年)
ハノーヴァー朝を代表とするコインは、「ヴィクトリア ゴールドプルーフ “ウナとライオン”5ポンド金貨(Ultra Cameo NGC)」です。
2021年8月に、ヘリテージオークションにて、およそ1億8720万円で落札されました。
ウナとライオンは、19世紀のイギリスを代表する彫刻家ウィリアム・ワイオンによってデザインされました。
ウナとは、エドマンド・スペンサーの著作の「妖精の女王」の主人公です。このコインでは、ウナをヴィクトリア女王、ライオンを大英帝国として描いています。
ヴィクトリア女王が君臨した時代は、イギリスの最盛期と言われる時代です。ヴィクトリア女王が即位した1837年から死没した1901年までの60年余りに、イギリスは世界帝国を築き、圧倒的な海軍力によって「パクス・ブリタニカ(イギリス覇権による平和)」を実現しました。
彫刻家ウィリアム・ワイオンが活躍したのも、この時代です。ワイオンは、1816 年に造幣局の補助彫刻家、1828 年には主任彫刻家に任命されました。
この時代、産業革命と資本主義の急発展への反動として、新古典主義が流行しました。新古典主義とは、ギリシャやローマの古典芸術への憧れや回帰が元となった芸術スタイルです。
ワイオンはこの新古典主義の支持者で、1817年にスリーグレイセス銀貨、1839年にはウナとライオン金貨をデザインしています。
ウナとライオンとは?歴史やコインの種類、価値が高い理由を徹底解説
なお、この時代に鋳造されたのは、ソブリン金貨、ゴシッククラウン銀貨などです。
- ソブリン金貨
- ゴシッククラウン銀貨
ソブリン金貨は、1663年にギニー金貨が発行されてから19世紀初頭まで、ほとんど使われていませんでした。
しかし、1816年よりイギリスは金本位制を採用し、ソブリン金貨が本位貨幣として鋳造され、発行、流通しました。
新しいソブリン金貨は、表は国王の横顔で、裏はセントジョージが竜を退治している様子が描かれているのが特徴です。
ゴシッククラウン銀貨は、1847年にヴィクトリア女王の即位10周年を記念して発行された銀貨です。
ヴィクトリア女王の描かれたゴシッククラウン銀貨については、下記の記事で詳しく解説しています。
ヴィクトリア女王のヤングヘッドクラウン銀貨とは?銀貨の種類や歴史的背景、関連コインをご紹介
ウナとライオン5ポンド金貨
鑑定番号 | 6057413-002 |
NGCの説明 | 1839 G.BRITAIN W&R-279 UNA AND THE LION 5SOV |
落札価格 | $1,440,000.00(2021年8月19日) |
グレード数 | 1839 G.BRITAIN W&R-279 UNA AND THE LION 5SOV |
重量 | 39.9403g |
直径 | 35.5mm |
表面 | ヴィクトリア女王 |
裏側 | エドマンド・スペンサーのウナとライオン |
サクス=ゴバーク=ゴーダ朝(1901~1907)
サクス=ゴバーク=ゴーダ朝を代表するコインは、「エドワード7世 (SP65 NGC)銀貨」です。
2022年12月に、ヘリテージオークションにておよそ936万円で落札されました。
エドワード7世は、ヴィクトリア女王の子で、1901年にヴィクトリア女王が没した後に即位しました。
エドワード7世は、歴代のイギリス王の中で、初めてオックスフォードやケンブリッジなどの大学で教育を受けています。
エドワード7世は、ピースメイカーとしても知られています。
その所以は、エドワード7世が、インド、アメリカなどを始めとする各国へ精力的に訪問し、即位後も要人との人脈を築いたことにあります。
その甲斐もあってか、1902年にイギリスは日英同盟、1904年には英仏協商、1907年には英露協商を結んでおり、エドワード7世はピースメーカーと呼ばれるに至りました。
以下のエドワード7世銀貨は、当時イギリス植民地であったインドのボンベイで鋳造されました。裏面の漢字の刻印が珍しく、その影響もあって高価格で落札されたと考えられます。
全体的に非常に繊細かつ緻密なデザインで、エドワード7世のまとっているローブの装飾が美しい1枚です。
鑑定番号 | 6394240-001 |
NGCの説明 | 1904 STRAITS S$1 |
落札価格 | $72,000.(2022 年 12 月 7 日) |
グレード数 | SP65 |
重量 | – |
直径 | 38mm |
表面 | エドワード7世の横顔 |
裏側 |
ウィンザー朝時代(1908年以降)
ウィンザー朝時代の代表的なコインは、「エリザベス 2 世ゴールド VIP プルーフ パターン ソブリン 1976 PR65」です。
2020年11月にヘリテージオークションにて515万円で落札されました。
プルーフコインは流通を目的としたコインではなく、収集されることを前提としたコインで、さらにVIPプルーフであるため、滅多に手に入らないコインとなっています。
このコインは、1976年にVIPプルーフとして世界に2枚だけ鋳造された希少なコインであることが、英国ロイヤルミントによって確認されました。2枚のうち1枚は、英国ロイヤルミントが所蔵しています。
コインの周りには隆起が施されているのが特徴的です。
描かれているのは、1952年に若干26歳で即位し、2022年9月8日に96歳の生涯を閉じたエリザベス2世です。イギリス史上最も長く在位した女王です。
エリザベス女王の時代は王室が国民にとって身近になった時代です。
特に1960年代後半からは、イギリス国営放送局のBBCが王室を間近で撮影することが認められ、王室の様子はドキュメンタリー映画の「ロイヤル・ファミリー(1969)などで伝えられました。そこには、普通の家庭と同じようにロイヤルファミリーがバーベキューやドライブを楽しんだり、クリスマスの飾り付けをしたりする姿が描かれていました。
これにより、エリザベス2世は威厳がありつつも、親しみやすさも併せ持つことが国民に伝わりました。現在でも、エリザベス2世はイギリス王室の中で1、2位を競う人気のある女王です。
証明証番号 | 17246522 |
PCGS番号 | 652254 |
日付 | 1976 |
デノミネーション(通貨単位) | P Sov |
グレード数 | PR65 |
落札価格 | $39,600(2020年11月5日) |
重量 | – |
直径 | 22mm |
表面 | エリザベス2世右向き症状 |
裏側 | 聖ジョージの竜退治 |
イギリスアンティークコインの歴史に注目
イギリスのアンティークコインは、眺めているだけでも美しく、喜びを感じられるものがたくさん存在します。
しかし、楽しみはそれだけではありません。最大の楽しみは、真に投資価値のあるコインを見極めるために、コインの時代背景を学ぶことです。
歴史を知る前にコインを手にすると、そこに施された凛々しい国王や美しい女王の横顔、裏面の緻密な装飾に感心するだけかもしれません。
しかし、コインが鋳造された時の時代背景、コインの種類、コインをデザインした彫刻家などについての知識が深まると、人気のあるコインや投資的な価値のあるコインがわかるようになってきます。
当社ではアンティークコインの販売を行っています。扱うコインは、国債貨幣専門商協会であるIAPNの鑑定を受けたコインのみであるため、初心者の方でも安心してコインを購入できます。
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