世界四大文明の発祥の地であり、非常に長い歴史を持つエジプトのアンティークコインは、エジプトならではのモチーフが描かれたものも多いため幅広い層から人気を集めています。
品質も高く、将来性が期待できるものも少なくありません。
以下ではエジプトのアンティークコインで投資を行う際に必要なエジプトの歴史の概要やエジプトのコインの歴史、人気のあるコインなどを紹介します。
エジプトの歴史
エジプト文明が栄えた地であるエジプトの歴史は、非常に長いだけでなくさまざまな民族や宗教が入り混じる複雑な物語であるという特徴があります。
アンティークコインの価値は発行された時代に左右されることもあります。そのため投資で成功するためには、コインの発行国の歴史を知らなくてはなりません。
以下でアンティークコイン投資でエジプトのコインを購入する際におさえておきたい、エジプトの歴史の要点を紹介します。
古代エジプト
古代エジプト文明の土台となる文化は、紀元前5000年から紀元前4000年ごろにナイル川流域に誕生しました。
エジプトは降水量が少ない砂漠地帯であるため、そこに住む人たちにとってナイル川は貴重な水源であり、古代ギリシアの歴史家・ヘロドトスはそうしたナイル川とその流域で暮らす人々との関係を指し、
「エジプトはナイルの賜物」
という言葉を残しました。
紀元前30年のローマ帝国による征服までの間にエジプトではおよそ30に分類されるさまざまな王朝が誕生します。
非常に大雑把ではありますが、ピラミッドやツタンカーメンのミイラマスクなど、多くの人が「エジプトといえば」で思い起こす建造物や美術品が誕生したのもこの時期です。
ローマ帝国からの影響
エジプト文明は紀元前4世紀半ばごろからギリシア世界で急激に力をつけたマケドニア王国などからの影響を受けるようになります。ギリシア人による入植も進められたことによってエジプトでも学問運動などが活発になりました。
さまざまな国や民族の影響を受けながらエジプトの王朝は発展しましたが、紀元前2世紀末には次第にローマ帝国からの影響に圧迫されるようになります。
そして世界的に有名なエジプトの女王・クレオパトラを最後に、エジプトはローマ帝国の支配下に置かれることになりました。
ローマ帝国の支配下となったことにより、エジプトにもキリスト教が伝わり、2世紀末にはエジプトはキリスト教にとっても重要な土地となります。
さらに国民の大半がキリスト教徒となったことによって、それまでエジプトで信仰されていた神々は淘汰されていきました。
イスラム勢力
一方610年ごろ、アラビア半島でイスラム教が誕生します。キリスト教国の一つであったエジプトはイスラム勢力の拡大に伴い、それまでエジプトを支配していたヨーロッパ世界との衝突の場となっていきました。
そして646年にはイスラム勢力がヨーロッパ勢力をエジプトから完全に駆逐したことによって、以降現代に至るまでエジプトではムスリムを中核とする政権が時代の流れの中で入れ替わり立ち替わり立つことになります。
近現代のエジプト
ヨーロッパとアジアとアフリカを繋ぐ地点に位置するエジプトは、近現代に入るとイスラム勢力の拡大およびオスマン帝国からの影響だけでなくヨーロッパの覇権争いにも巻き込まれることになります。
そして第一次世界大戦が勃発するとエジプトはイギリスの保護領となりますが、大戦後には独立運動が活性化し、1937年には国際連盟への加入も果たしました。
第二次世界大戦後、ユダヤ人国家イスラエルのパレスチナ成立に反対したエジプトは、第一次中東戦争でパレスチナに侵攻しますが敗北します。
それを機にそれまでの王制が崩壊し、共和制へと移行しますがイスラエルを巡り国内でも激しい意見の対立を抱え、周辺アラブ諸国との関係も緊迫したものになっていきます。
さらに湾岸戦争ではアメリカ側に立ったことにより国際的な地位を大きく向上させ、目覚ましい経済発展を遂げますが、依然として政権が不安定な状態が続いています。
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現在のエジプトの通貨
現在のエジプトの通貨はエジプト・ポンドで、補助通貨としてピアストルも使われており、
1エジプト・ポンド=100ピアストル
です。
2024年4月時点での日本円とのレートは、
1エジプト・ポンド=約3円
となっています。
エジプトの貨幣の歴史
非常に長い歴史を持つエジプトでは、貨幣の歴史についても数千年単位で遡ることができてしまいます。また、キリスト教とイスラム教の対立の場となったこともエジプトの貨幣の歴史を複雑にしている要因の一つです。
そのため一口に「エジプトのアンティークコイン(古いコイン)」といっても、さまざまなものがあり、高い価値を持つものであってもアンティークコイン投資には向いていないものも少なくありません。
以下ではエジプトの貨幣の歴史について大まかに解説します。
古代エジプトの貨幣
世界四大文明の一つに数えられているエジプト文明では、世界的に見ても早い時期から貨幣経済が存在しました。紀元前14世紀頃の壁画には取引のために天秤で金属の重さを量っている様子も描かれています。
また、金は古代エジプトの人々にとって非常に重要な貴金属であり、太陽神ラーの体の一部として崇められる存在でした。王族や宗教関連のアイテムに金が多用されたのもこのためです。
初期は貴金属が貨幣として使われていましたが、後期になると次第に鋳造貨幣が流通するようになります。
さらに古代エジプトではモロコシなどの穀物を倉庫に預けた際に発行される「預り証」も、通貨と同等に扱われました。貴金属とはことなり穀物は時間の経過と共に価値が下がるものであるため、預り証を持っていたとしてもできるだけ早く別のものと交換する必要があります。
こうした現代の手形取引に似た形態の取引が存在したことがエジプトでの経済発展に影響を及ぼしたのではないかとも考えられています。
「アンティークコイン」の定義
「アンティークコイン」に明確な定義があるわけではありませんが、古代以降中世期に発行された、100年以上前に発行されたコインのことを指す場合も多いです。
古代エジプト期に発行されたコインは確かに「古いコイン」ではあり、高い価値を持つものではありますが「アンティークコイン」として扱われない場合もあります。
投資対象としては近現代に発行されたコインがおすすめ
非常に長い歴史を持つエジプトでは、数千年前から通貨としてのコインが発行されてきただけでなく、ヨーロッパ世界的なものとイスラム世界的なものが発行された時代があります。
古代エジプト期に発行されたアンティークコインで投資をすることも決して不可能ではありません。しかし数千年前に発行されたコインは歴史的価値が非常に高いものばかりであるため、一般的なアンティークコイン投資とは意味が異なる場合があります。
長期的に所有することによる売却益を狙うのであれば、近現代に発行されたコインを購入することをおすすめします。近現代のものであれば発行枚数・デザイン性・人気度・希少度ともに魅力的かつ手頃なものが見つけやすいでしょう。
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エジプトのアンティークコインの特徴
以下ではエジプトのアンティークコインの特徴を特に近現代のものに絞った上で解説します。
エジプトならではのデザインが楽しめる
エジプトならではのモチーフが描かれたものが多いのはエジプトのアンティークコインの最大の特徴です。
古代エジプトで信仰されていた神々の肖像画や、古代エジプトで大きな功績を残したファラオが描かれたコインが数多く製造されています。
政治家の肖像画が描かれたものも多い中で、あえて古代エジプト期のモチーフを描いた理由はエジプト人の誇りを国内外に示すためでもあります。
近現代は世界各地で民族運動が活発化しましたが、エジプトでも同様の動きが見られました。
コインは単なる通貨としての機能だけでなく、政治的なメッセージを広く伝える役割を担うことがあります。独立運動が活性化する中で民族自身のアイデンティティを国内外に伝える上で、通貨の発行は非常に効果的です。
そのため近現代のエジプトでも自民族のアイデンティティを表現するために、古代エジプト期に信仰されていた神々やファラオの肖像画を描いたのです。
希少性の高いものが多い
市場での人気度や希少度はアンティークコインの価値を決める重要な要素です。
エジプトのアンティークコインの中には発行時の発行枚数が少なかったものも多く、世界中のコレクターから注目されているものもたくさんあります。
また、希少度は発行されたタイミングから時間が経てば経つほど高まるものです。もともとの発行枚数が少なく、かつ発行時から時間が経っているものほど将来性が期待できます。
将来性が期待できるものも少なくない
希少性が高いものが多く、独特なデザインを持つエジプトのコインは今後世界中のコイン愛好家から注目を集める可能性が高いです。
従って今は手頃な価格であっても、将来性価値が上がるのではないかと期待できるものもたくさん存在します。
「アンティークコインは今が一番安く買えるタイミング」であるため、気になるコインを見つけた場合は素早い決断が求められます。
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エジプトのアンティークコインの落札事例
2024年4月時点での各ネットオークションサイトにおける平均落札価格は4000円前後となっています。
エジプトのアンティークコインにはさまざまなものがあり、発行された時代によって大幅に価値が異なります。近現代に発行されたものが数万円で落札されることがあるだけでなく、古代エジプト期に発行されたものが800万円の価値を持つこともあります。
ただし、アンティークコインは時代を遡れば遡るほど価値が高くなるものではありますが同時に歴史的価値を持つようになるものです。投資先としてコインを選ぶ際には歴史的価値にどれだけ重きをおくかなど、自身の価値基準を定める必要があります。
おすすめのエジプトのアンティークコイン3つ
以下ではエジプトのコインの中でも特に人気のあるものを3つ紹介します。
エジプト100ポンド金貨 ファルコン
ファルコンとは猛禽類のハヤブサのことを指します。古代エジプトで信仰されていたホルス神はハヤブサの頭を持つ人物として描かれることが多く、特に初期は鳥のハヤブサの姿そのものとして描かれることもありました。
ホルス神は天空を司る神であり、古代エジプトの王朝の中には、
「ファラオはホルス神の化身」
とする王朝も存在します。
このコインはそのホルス神を象徴するファルコンが描かれたものであり、状態によっては数十万円で取引されることもあるコインです。
エジプト100ポンド金貨 クレオパトラ
絶世の美女として知られる女王・クレオパトラ7世の肖像画が描かれたコインです。
古代エジプトで発行されたコインにもクレオパトラが描かれたものは存在しますが、こちらは1984年に発行された100ポンド金貨です。近年発行されたものであるにもかかわらず高い人気を誇ります。
コインに描かれているクレオパトラは資料を元にして描かれたものです。
映画などフィクションの世界ではクレオパトラはエキゾチックな美女という描かれ方をすることが多いですが、史実としては彼女はギリシア系の女性であると考えられています。
エジプト フアード1世 500ピアストル金貨
ファウド王の肖像画が描かれた500ピアストルの金貨には、右向きの肖像画が描かれたものと左向きのものが存在します。
左向きのものの方が高い希少度を誇りますが、右向きのものも愛好家から注目されています。
エジプトのコインに描かれた古代エジプトのファラオたち
エジプトのコインには古代エジプトのファラオが描かれたものも多いです。
以下では古代エジプトのファラオの中でも特に有名な人物を紹介します。
ツタンカーメン王
世界的に最も有名なファラオの一人であるツタンカーメン王は、古代エジプト第18王朝のファラオです。
古代エジプトの王族の墓は発掘されてもすでに盗掘被害に遭っており、副葬品がほとんどない状態の墓も少なくありません。
そうした中で1922年にハワード・カーターによって発掘されたツタンカーメン王の墓は副葬品がほぼ完全な状態だったため世界的に注目を集めることになりました。黄金のミイラマスクはエジプトの歴史を知らない人でも「ファラオ」と聞けば思い浮かべる代表的なイメージとなっています。
在位期間が10年弱と短かった上に後世の王命表などから名前が削除されていた人物であるため元々の知名度はあまり高くありませんでしたが、発掘された墓の状態の良さや棺に手向けられた花、幼少期に即位し若くして亡くなった悲劇性、そして発掘調査に関わった人々の突然死などが彼への注目度に拍車をかけました。
クレオパトラ
古代エジプト最後の女王であり、絶世の美女として知られるクレオパトラは、ローマ皇帝ガイウス・ユリウス・カエサルやマルクス・アントニウスなどと婚姻関係を持つことで自国を存続させようとした悲劇の美女として描かれることもあります。
ラムセス2世(出エジプトかどうかは不明)
エジプト新王国第19王朝のファラオであるラムセス2世は、積極的に外征を行い勢力を拡大させたファラオとして知られています。
また、エジプトを代表する数々の巨大建築を建造したファラオでもあり、カルナック神殿、アブシンベル神殿などは古代エジプトの代表的な建造物として知られています。
また、旧約聖書の『出エジプト記』に登場するファラオではないかという説もあるファラオです。
エジプトのコインに描かれた古代エジプトの神々
エジプトのコインには古代エジプトの神々のモチーフが描かれることも多いです。
以下ではエジプトのコインに描かれた古代エジプトの神々の中でも特に有名なものを紹介します。
アヌビス神
冥界の神とされるアヌビス神は、オオカミの頭を持つ姿、あるいはオオカミそのものとして描かれることの多い神様です。
死者を冥界に連れて行く役割や、生前の罪を計量する役割、さらにミイラを作る役割などを担っています。
また、死にまつわる点が多いことから医学の神として崇拝されることもありました。
ホルス神
エジプトの神様の中で最も古い神様の一つであるホルス神は、天空を司る神であり「ファラオはホルスの化身」とする王朝も存在するほど偉大な神様です。
古代エジプトにおいて非常に重要な神様であったため、ホルス神を象徴するハヤブサのモチーフは現代でもコインをはじめとするさまざまな場面で使用されています。
クヌム神
人間を創造した神様であるクヌム神は、羊の頭をもった姿で描かれる神様です。
また、水源の管理者、つまりナイル川の氾濫を司る神様でもあり、エジプト文明を育んだナイル川の氾濫はクヌム神が水源に張られた結界を破ることで発生すると考えられていた時期もありました。
エジプトの三大ピラミッドのうち、最大のピラミッドを建造したとされているクフ王の名前は、クヌム神への祈りが込められた名前です。
まとめ:エジプトのアンティークコイン投資ではエジプトならではのデザインを楽しめる
数千年単位での歴史を持つエジプトでは、エジプトならではのモチーフが描かれたコインが発行されています。そのためコイン愛好家だけでなく歴史好きからも高い人気を誇るものも多く、将来性が期待できるものも少なくありません。
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