日本の銀貨といえば真っ先に思い浮かべるのは100円銀貨でしょうか?
現行通貨として目にするのは「櫻花」のデザインされた白銅貨ですが、1966年まで発行されていた「稲穂」の100円銀貨や「鳳凰」の描かれた100円玉は銀貨でした。
現在では銀の価格上昇とともにモダンコインとしての価値が高騰しつつあります。
ここでは、日本の銀貨の役割を歴史的な観点から検証していきます。
さらに、明治時代の希少性の高い銀貨から近年発行された記念銀貨までを一覧で紹介。
その投資効果にまで言及します。
コレクションとしての購入はもちろん、資産運用の参考としてぜひお役立てください。
日本で最初の貨幣は銀貨だった~「富本銭」より古い「無文銀銭」
日本で最初の貨幣といわれるのが「無文銀銭(むもんぎんせん)」です。
銀銭と呼ばれるだけあって銀を用いた銀貨であることは、日本が当時から資源豊かな国であった何よりの証拠でしょう。
発行されたのは近江朝時代の西暦667〜672年と推定されます。
それまで最古といわれていた「富本銭(ふほんせん)」が、683年といわれているので10年ほど更新したことになります。
奈良や近江、摂津・河内・伊勢などの17遺跡から合計120枚発掘されました。
私的な貨幣とする説もありますが、出土枚数の多さから国家発行の銀貨との見方もあります。
日本で最初の流通銀貨は「和同開珎」
日本で最初の本格的な流通貨幣といわれているのが和同開珎(わどうかいちん、わどうかいほう)です。
発行されたのは西暦708年6月3日です。
すでに発行されていた日本最初の銀貨「無文銀銭」に対応するため、銀貨としてスタートします。
同年8月29日には銅銭が発行され、銀貨としての「和同開珎」は翌709年9月9日に廃止されます。
銅銭としての「和同開珎」は、その後発行された「万年通宝」「神功開宝」とともに8世紀の日本の通貨として混用されました。
796年になると、すべての通貨を「隆平永宝」に統一するため、それまでの3銭を廃止する詔が出されます。
しかしながら、実際に「和同開珎」が流通から姿を消したのは9世紀半ばになってからといわれています。
日本はかつて銀貨主流の銀本位制だった
かつて黄金の国ジパングと称された日本。
その黄金を秋の稲穂の輝きという方もいますが、金・銀の資源豊かな国であったという説もあります。
歴史的に観ても、ふんだんに金を用いた平安時代の奥州藤原氏や安土桃山時代の豊臣秀吉を始め、江戸時代に発行された大判金貨などが世界各国で高い評価を得ています。
その豊富な資源を基に、円を通貨単位とする金本位制を進めようとした明治政府ですが、金の海外流出と円価値の下落に歯止めがかからず、やがて銀本位制へと移行します。
以下では、明治政府の財政再建による銀本位制へのいきさつを解説します。
明治政府の新貨条例
明治政府は幕末期の混乱からの脱却のため、金を価値の基準とした金本位制による財政の立て直しを図ります。
そのために公布されたのが1871年(明治4年)の「新貨条例」です。
円を通貨単位とした日本初の本格的な貨幣制度として多くの金貨・銀貨・銅貨が発行されましたが、ほどなく銀価格が下落し続けます。
その反動のように金貨の国外流出が促され、少しずつ金本位制が崩れていきました。
金銀複本位制と西南戦争
1875年(明治8年)になると、一円銀貨の品位(銀含有量)を米国銀と一致させた「貿易銀」が事実上の本位貨幣として扱われるようになります。
そして1877年(明治10年)には銀貨の流通が金貨を上回り、事実上の金銀複本位制へ。
翌1878年に銀貨の無制限通用が認められると、名目上も完全な金銀複本位制となります。
しかしながら西南戦争の戦費として、明治政府の信用の下に不換紙幣(ふかんしへい)の発行が相次いでいたため急速にインフレが進行します。
金の流出は加速され、日本円の価値は一気に下落しました。
価値を失った日本円が溢れた日本経済は本格的なインフレに陥ります。
松方正義の財政再建と銀本位制
松方正義の財政再建とは、徹底した歳出削減と増税です。
1881年に大蔵大臣となった松方正義がインフレ打開のために断行した政策であり、不換紙幣の整理を目的としました。
松方財政により、不換紙幣の流通は減り円の価値が徐々に回復します。
1882年(明治15年)に日本銀行が創設され、銀貨と交換可能な日本銀行券が発行されます。
こうして本格的な銀本位制がスタートしました。
日本にとって銀が、いかに信頼できる資源であったかを知らされます。
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日本のおすすめ銀貨一覧|明治の希少銀貨から2020オリンピック銀貨まで
日本の通貨は明治時代の新貨条例によって円を基本とした貨幣が発行されるようになりました。
金本位制としてスタートしたはずが金銀複本位制へ変わり、やがて銀本位制となった歴史を振り返ると、いかに銀貨が重宝されたかがわかります。
ここでは、明治経済を担った銀貨一覧から2020年のオリンピック記念銀貨まで紹介します。
日本の銀貨|五銭銀貨
日本の五銭銀貨には以下のような3つの種類があります。
- 旭日竜五銭銀貨
- 旭日大字五銭銀貨
- 竜五銭銀貨
いずれも希少性が高く高額取引されている銀貨です。
それぞれの概要を解説します。
旭日竜5銭銀貨
「旭日竜五銭銀貨」は1871年(明治4年)に施行された新貨条例に伴い、前年の1870年(明治3年)から発行されました。
同時に発行された十銭銀貨や二十銭銀貨などと同じデザインが施され、表面の中央には竜が描かれています。
発行枚数も現存枚数も少ないため、比較的高額で取引されています。
発行年 | 重さ | 直径 | 品位 | 参考価格 |
---|---|---|---|---|
1870~1871年(明治3~4年) | 1.25g | 15.15mm | 銀800銅200 | 9,000円 |
旭日大字五銭銀貨
「旭日大字五銭銀貨」は明治4年(1871年)の1年間だけ発行された銀貨です。
前期と後期の2回に分けて発行され、裏面のデザインが異なります。
前期発行分は旭日の放射状の線が66本、その線に少し重なるように取り囲む玉の数が79個、後期発行のものは線が53本で玉は重ならないように配置され数も65個と少なくなっています。
コイン市場では、前期発行の「旭日大字五銭銀貨」の方が若干高値で取引されています。
発行年 | 重さ | 直径 | 品位 | 参考価格 |
---|---|---|---|---|
1871年 (明治4年) | 1.25g | 16.15mm | 銀800銅200 | 6,000円 |
竜五銭銀貨
「竜五銭銀貨」は前出の「旭日大字五銭銀貨」から一変、「五銭」の文字が裏面の中央に入ります。
変って表面の中央には竜が描かれ、それを取り囲むように「大日本」と発行年、新たに「5SEN」の文字が配置されています。
明治10年まで発行されましたが、小さすぎると不評だったため他の貨幣に先んじて製造中止となりました。
発行年 | 重さ | 直径 | 品位 | 参考価格 |
---|---|---|---|---|
1873~1878年(明治6~10年) | 1.35g | 15.15mm | 銀720銅280 | 3,900円 |
日本の銀貨|十銭銀貨
十銭銀貨も明治4年の新貨条例に伴い発行された貨幣の一つです。
五銭銀貨同様に3つの種類があります。
- 旭日竜十銭銀貨
- 竜十銭銀貨
- 旭日十銭銀貨
それぞれについて解説します。
旭日竜十銭銀貨
「旭日竜十銭銀貨」は表面に竜、裏面には旭日が描かれています。
発行枚数が少ないため、未使用レベルで1万円前後の値がつく人気のコインです。
五銭銀貨よりひと回り大きいため、竜のウロコが鮮明な「明瞭ウロコ」と呼ばれる銀貨も存在します。
「明瞭ウロコ」の銀貨は希少性が高いため、市場で高額取引される一枚に数えられます。
発行年 | 重さ | 直径 | 品位 | 参考価格 |
---|---|---|---|---|
1870年 (明治3年) | 2.5g | 17.57mm | 銀800銅200 | 10,000円~(未使用) |
竜十銭銀貨
「竜十銭銀貨」の表面は竜の図柄と「10SEN」「大日本」の文字・発行年、裏面には菊の紋章に囲まれた「十餞」の文字が刻まれています。
30年以上の長期間にわたって発行されましたが、発行年によってバラツキがあります。
特に1880年(明治13年銘)は発行枚数が僅か77枚のため、かなりの高額で取引されています。
準じて発行枚数の少ないのが明治7年と34年、そして明治35年です。
発行年 | 重さ | 直径 | 品位 | 参考価格 |
---|---|---|---|---|
1873~1906年(明治6~39年) | 2.7g | 17.57mm | 銀800銅200 | 11,000円(未使用) |
旭日十銭銀貨
1897年(明治30年)の貨幣法により表裏の呼称が逆になり、「十銭」の文字の入る方が表面となりました。
裏面には旭日と「10SEN」の額面、発行年がデザインされています。
「旭日十銭銀貨」の市場価格は明治40年と41年銘のものが高額で取引されています。
未使用の美品であれば1万円を下回ることはないでしょう。
発行年 | 重さ | 直径 | 品位 | 参考価格 |
---|---|---|---|---|
1907~1917年(明治40~大正6年) | 2.25g | 17.57mm | 銀720銅280 | 1,000円~(未使用) |
日本の銀貨|ニ十銭銀貨
二十銭銀貨も他の銀貨と同様に3種類です。
- 旭日竜二十銭銀貨
- 竜二十銭銀貨
- 旭日二十銭銀貨
それぞれについて解説します。
旭日竜二十銭銀貨
旭日竜二十銭銀貨は、1870〜1871年(明治3〜4年)に発行されただけの非常に希少性の高い銀貨です。
ただでさえ少ない発行枚数に加えて、手替わりと呼ばれる通常コインと異なる「明瞭ウロコ」や「欠銭」が混在しているため、いっそう希少性が高まっています。
明瞭ウロコは明治3年銘、欠銭は明治4年銘にのみに見られる手替わりで高額取引の対象となっています。。
発行年 | 重さ | 直径 | 品位 | 参考価格 |
---|---|---|---|---|
1870~1871年(明治3~4年) | 5g | 24mm | 銀800銅200 | 1,500円~(未使用) |
竜二十銭銀貨
1873年(明治6年)の二十銭銀貨から、一円銀貨に準じてデザインが一新されます。
すなわち、旭日竜として裏面が旭日だったものが縦書きの額面表示へとなったのです。
「竜二十銭銀貨」にも手替わりがあり、特に1875年(明治8年)の前期・後期の手替わりはコインマニア垂涎の一枚となっています。
前期発行分の、明治の「明」の字のうち「日」にハネがあるものを「ハネ明」、後期発行のうち、「明」の「日」と「月」が離れているものが「トメ明」と呼ばれています。
いずれも高額取引の対象です。、
発行年 | 重さ | 直径 | 品位 | 参考価格 |
---|---|---|---|---|
1873〜1907年(明治6~40年) | 5.39g | 25.3mm | 銀800銅200 | 27,000円(未使用) |
旭日二十銭銀貨
1906年(明治39年)からは、二十銭銀貨の表面のデザインが竜から旭日章に変わります。
初年度は600万枚、翌年の明治40年には2,000万枚と、発行枚数は一気に3倍以上となりますが、1911年(明治44年)を最後に二十銭銀貨の発行は終了となります。
最終年度の明治44年銘はわずか55万枚の発行となり、希少性の高さから38万円の値が付いたものもありました。
発行年 | 重さ | 直径 | 品位 | 参考価格 |
---|---|---|---|---|
1906~1911年(明治39~44年) | 4.05g | 20.03mm | 銀800銅200 | 5,000円~ |
日本の銀貨|五十銭銀貨
五十銭銀貨も1871年(明治4年)の新貨条例によって新規発行された貨幣です。
1873年(明治6年)にデザインが一新され、大正11年まで下記のような5種類が発行されました。
- 旭日竜五十銭銀貨
- 竜五十銭銀貨
- 旭日五十銭銀貨
- 八咫烏(やたがらす)五十銭銀貨
- 小型鳳凰五十銭銀貨
それぞれの概要を解説します。
旭日竜五十銭銀貨
「旭日竜五十銭銀貨」は、1871年(明治4年)の新貨条例に伴い金貨の補助貨幣として4種類発行された銀貨のうちの一枚です。
五銭・十銭・二十銭・五十銭すべての銀貨にいえることですが、「旭日竜」は発行期間が短かったため希少性が高く、他のデザインに比べ高額取引されやすいコインです。
五十銭銀貨においては1870年(明治3年)に発行されたもので5,000円ほど、未使用なら数万円で取引されています。
また、明治4年前期発行分において「大日本」の「本」の文字が「ハネ本」と呼ばれるものは数十万円での取引実績があります。
発行年 | 重さ | 直径 | 品位 | 参考価格 |
---|---|---|---|---|
1870~1871年(明治3~4年) | 12.5g | 31.51mm | 銀800銅200 | 5,000円~ |
竜五十銭銀貨
「竜五十銭銀貨」は1873年(明治6年)から1907年(明治40年)まで定期的に発行されたといわれていますが、現存を確認されているのは明治6・7・9・10・13・18年と30~38年銘のものだけです。
このうち、発行枚数の少ない明治7・9・10・13年銘の銀貨は希少性が高く、高額で取引されています。
他の年代に発行された「竜五十銭銀貨」が1,000円前後の値で売買されることに対し、上記年銘は数十万円の値が付くことが少なくありません。
特に希少価値の高い明治13年銘は、数百万という高額での取引も期待できるレアコインです。
発行年 | 重さ | 直径 | 品位 | 参考価格 |
---|---|---|---|---|
1873~1907年(明治6~40年) | 13.48g | 30.91mm | 銀800銅200 | 1,000円~ |
旭日五十銭銀貨
1897年(明治30年)の貨幣法の制定により、「旭日五十銭銀貨」も表裏の呼称が変わります。
また、これまでの五十銭銀貨と比べてひと回り小さくなり、軽くなっています。
品位は変わりませんが、小さくなったため銀の保有量が減り地金型貨幣としての価値もがそう高くありません。
現存数も多いため、使用感のあるコインに期待はできませんが、発行枚数の少ない明治39年銘と大正13年銘は希少性が高く未使用で8万円の値が付いたこともあります。
発行年 | 重さ | 直径 | 品位 | 参考価格 |
---|---|---|---|---|
1906~1917年(明治39~大正6年) | 10.13g | 27.27mm | 銀800 銅200 | 14,500円 |
八咫烏(やたがらす)五十銭銀貨
「八咫烏(やたがらす)五十銭銀貨」は明治の銀貨の中でも「幻の銀貨」といわれるほど希少性が高く、現存枚数は10枚以下といわれています。
なぜ幻の銀貨かというと、発行された1918〜1922年はちょうど第一次世界大戦が終わったばかりであり、銀の価格が著しく高騰したからです。
額面の五十銭を超えたため、政府は慌てて回収に乗り出しました。
その後の不況で銀市場は一時下落しますが、再び高騰します。
日本政府は、こうした銀価格の不安定さから銀貨製造を避けるようになりました。
発行年 | 重さ | 直径 | 品位 | 参考価格 |
---|---|---|---|---|
1918~1922年(大正7~11年) | 6.75g | 24.85mm | 銀800銅200 | 180万円~(未使用) |
小型鳳凰五十銭銀貨
「小型鳳凰五十銭銀貨」は「八咫烏五十銭銀貨」の後、品位を落として発行されました。
表面は、額面の「五十銭」と「2羽の鳳凰」のデザイン、裏面は「旭日」の紋章と、それを囲むように「大日本」の文字と「発行年」が刻まれています。
別称として「小丸50銭銀貨」、「小型50銭銀貨」、「鳳凰50銭銀貨」と呼ばれることもあります。
1922年(大正11年)は日本の銀貨の歴史においてターニングポイントとなり、五十銭の品位が落とされたことと共に、十銭・二十銭銀貨が白銅貨に変更された年です。
「小型鳳凰五十銭銀貨」は、流通貨幣として日本の最後の銀貨となりました。
発行年 | 重さ | 直径 | 品位 | 参考価格 |
---|---|---|---|---|
1922~1938年(大正11~昭和13年) | 4.95g | 23.5mm | 銀720銅280 | 10,000円~(未使用) |
日本の銀貨|一円銀貨
一円銀貨は「円銀」とも呼ばれ、. 1871年 (明治4年)の 新貨条例 により、対外貿易専用銀貨として発行されました。
そのうちに国内でも流通するようになり、以下のような種類が発行されるようになります。
- 旧一円銀貨
- 新一円銀貨
- 貿易銀
- 丸銀
それぞれについて詳しく解説します。
旧一円銀貨
「旧一円銀貨」は、用途を貿易に限定していたため日本国内では流通していません。
1870〜1871年(明治3〜4年)の約2年間しか発行されていないため、希少価値が高く
数万円での取引が一般的です。
また、表面の「一圓」の「圓」の9画目が欠けているものは「欠銭」と呼ばれ、数十万円の値が付くこともあります。
発行年 | 重さ | 直径 | 品位 | 参考価格 |
---|---|---|---|---|
1870~1871年(明治3~4年) | 26.95g | 38.68mm | 銀900銅100 | 98,000円~(未使用) |
新一円銀貨
新一円銀貨には大型と小型の2種類があります。
「新一円大型銀貨」は1874年(明治7年)からの発行、当初は貿易専用でしたが、1878年(明治11年)から国内でも流通するようになります。
新一円小型銀貨」は1887年(明治20年)の発行当初から貿易と国内の両方で使用されていました。
発行枚数が多いため大型銀貨に比べると安価で取引される傾向にあります。
発行年 | 重さ | 直径 | 品位 | 参考価格 | |
---|---|---|---|---|---|
大型 | 1874~1887年(明治7〜明治20年) | 26.96g | 38.6mm | 銀900銅100 | 10,000円~ |
小型 | 1887~1914年(明治20~大正3年) | 26.96g | 38.1mm | 銀900銅100 | 数千円~ |
貿易銀
1875年(明治8年)、諸外国との貿易のためだけに発行されたのが「貿易銀」です。
表面の中央には竜が描かれ、取り囲むように発行年銘と「大日本」「TRADE DOLLAR」「420GRAINS」などの文字が刻まれています。
1877年(明治10年)発行の貿易銀は希少性が高く高額取引されています。
発行年 | 重さ | 直径 | 品位 | 参考価格 |
---|---|---|---|---|
1875~1877年(明治8~10年) | 27.2g | 38.6mm | 銀900銅100 | 10万円~ |
丸銀
「丸銀」とは「小型一円銀貨」の「一圓」の文字の脇に丸で囲った「銀」の字が刻印されている種類です。
これは、1897年(明治30年)の金本位制を基本とした貨幣法制定により一円銀貨が通用停止になったにも関わらず、急に停止できないため当座をしのぐ方法として考案されました。
なぜならば、「小型一円銀貨」はすでに台湾や朝鮮で圧倒的に流通していたからです。
希少性が高く高価買取の期待できる「丸銀」ですが、特に1874~1875年(明治7~8年)、1878~1879年(明治11~12年)、1886年(明治19年)発行のものはさらなる高額が望めます。
発行年 | 重さ | 直径 | 品位 | 参考価格 |
---|---|---|---|---|
1887~1914年(明治20~大正3年) | 26.96g | 38.1mm | 銀900銅100 | 3万円~ |
これらの他、「円形銀塊」と呼ばれる一円銀貨があります。
「円形銀塊」とは、明治34年以降国内で一円銀貨を使えなくなったために命名された一円銀貨の通称です。
台湾では流通していたため「「台湾銀行兌換引換用円銀」とも呼ばれていました。
日本の銀貨|百円銀貨
百円銀貨の発行が始まったのは1957年です。
戦後初の銀貨として最高額での発行は、日本の復興を象徴するような出来事でした。
相次いで2種類が発行されます。
- 鳳凰百円銀貨
- 稲穂百円銀貨
上記2種類の発行の後、畳みかけるように東京オリンピックが開催され記念の百円銀貨も発行されます。
まずは、上記銀貨について解説しましょう。
鳳凰百円銀貨
鳳凰百円銀貨は1957〜1958年(昭和32〜33年)の2年間だけ発行された希少性の高い銀貨です。
デザインは鳳凰とおなじみの旭日、大きさは明治時代の銀貨に比べると額面のわりに小ぶりといえるでしょう。
品位も比べるべくもありませんが、発行枚数の少ない昭和33年銘に限っては数千円で取引されることもあります。
発行年 | 重さ | 直径 | 品位 | 参考価格 |
---|---|---|---|---|
1957~1958年 | 4.8g | 22.6mm | 銀600銅300亜鉛100 | 3,000円~(未使用) |
稲百円銀貨
稲百円銀貨の発行は1959〜1966年(昭和34〜41年)です。
2024年現在も使用可能ですが、自販機や自動レジではおそらく認識されないでしょう。
およそ4億枚が発行され、所有者も多いとみられるため、2024年でもさほどの価値は付いていません。
比較的発行枚数の少ない昭和39年銘のものだけが、若干の高値を記録しています。
発行年 | 重さ | 直径 | 品位 | 参考価格 |
---|---|---|---|---|
1959~1966年(昭和34~41年) | 4.8g | 22.6mm | 銀600銅300亜鉛100 | 1,500円 |
日本の銀貨|1964年東京オリンピック記念銀貨(千円銀貨・百円銀貨)
アジア初のオリンピックとなった東京大会。
日本にとっても初の記念コインの発行となります。
以下のように額面の違う2種類が発行されました。
- 東京オリンピック記念千円銀貨
- 東京オリンピック記念百円銀貨
それぞれの概要を示します。
東京オリンピック記念千円銀貨
国の威信をかけて開催されたアジア初のオリンピックに恥じないよう、記念銀貨もさまざまな趣向が凝らされました。
表面は額面と五輪マークと発行年銘、そして「TOKYO」の文字の刻印です。
裏面の図柄は富士山と桜という、日本を象徴するデザインとなっています。
額面も、東京オリンピック組織委員会の強い要望により、千円という高額でサイズの大きな銀貨の発行に至りました。
1,500万枚発行され、5万円での取引実績があります。
発行年 | 重さ | 直径 | 品位 | 参考価格 |
---|---|---|---|---|
1964年(昭和39年) | 20g | 35mm | 銀925銅75 | 6,000円 |
東京オリンピック記念百円銀貨
「東京五輪記念百円銀貨」の発行枚数は8,000万枚です。
「千円銀貨」の1,500万枚と合わせての9,500万枚は政府が当初考えていた通り、ほぼ国民一人一枚ずつ行きわたる計算です。
相当数の発行となり、また新しいため金融機関による額面通りの交換か、未使用品が数倍する程度の相場となっています。
発行年 | 重さ | 直径 | 品位 | 参考価格 |
---|---|---|---|---|
1964年(昭和39年) | 4.8g | 22.6mm | 銀600銅300亜鉛100 | 200円~(未使用) |
日本の銀貨|2020年東京オリンピック競技大会記念千円銀貨
コロナ禍中でもあり、前回の東京オリンピックに比べると高揚感に欠けた「2020東京オリンピック」、賛否両論の中で開催されました。
それでも1964年当時の銀貨よりひと回り大きい40mmの直径と銀100%の品位は、地金型貨幣としての価値も十分です。
オリンピックの在り方を問われた大会として歴史に遺るであろう「2020東京大会」と共に価値が高まっていく可能性があります。
発行年 | 重さ | 直径 | 品位 | 参考価格 |
---|---|---|---|---|
2018~2020年(平成30~令和2年) | 31.1g | 40mm | 銀1000 | 11,800円(プルーフ) |
日本の銀貨が投資に向いている理由
日本の銀貨は明治時代以降の発行が多いため、アンティークコインとしての価値が高まるのはこれからといったところです。
資産運用の手段として購入するなら今が旬でしょう。
その理由として以下の要素が挙げられます。
- 銀相場が上昇傾向にある
- リスクが極めて少ない
- コレクションとしても楽しめる
それぞれについて解説します。
銀相場が上昇傾向
日本の銀貨は銀の含有量が80〜100%と高品位にあり、地金型貨幣としての価値が十分にあります。
もちろん銀相場を反映させての投資効果ですが、ここ10年の銀市場は上昇傾向です。
2018年に1gあたり50円前後で推移していた銀の買取価格が2023年には100円とおよそ2倍に上がっています。
下記は、ある貴金属店による銀の年度別小売参考価格表からの抜粋です。
年度 | 1973 | 1980 | 2019 | 2020 | 2023 |
---|---|---|---|---|---|
価格(円/g) | 24.38 | 168.79 | 59.52 | 72.69 | 108.32 |
継続的な物価高騰、工業用途としての銀のニーズが高まっているため今後も上昇傾向は続くとの見方が強まっています。
リスクが極めて少ない
日本の銀貨が投資対象として最適なのは、リスクの少なさによるところが大きいでしょう。
まず銀は金ほど高価でもないため、よほど希少性の高い銀貨でない限り、大きな損失を被ることはありません。
また、近年発行された銀貨などは最悪の場合、金融機関での交換も可能です。
したがって、偽物を購入しない限りは、極めてリスクの少ない投資手段といえます。
コレクションとしても楽しめる
日本の銀貨にはさまざまなデザインがあり、コレクションとしても最適です。
コレクションとして楽しむ時間は、人生においても価値の高い時間、金銭にも換えがたい時間でしょう。
手軽に購入できて、熟練の技術で彫り込まれた図柄や銀の輝きを眺めるだけでも幸福の極みといえます。
やがて訪れる売り時まで、じっくり眺めて楽しみましょう。
日本の銀貨|売買の注意点
日本の銀貨は近代になってから発行されたものが多いため、比較的偽物が出回ることは少ないのですが、まったくないわけではありません。
特に古銭と呼ばれる類の銀貨の場合、偽物を造っても罪に問われないため注意が必要です。
ここでは、実際に日本の銀貨を売買する際の注意点について解説します
購入時に偽物を見分けるコツ
購入時に偽物を掴まされないよう、下記の点をチェックしましょう。
- 重さが0.2g以上軽いものは偽物
- 量目より重いものは偽物
- 彫りの浅いものは偽物
- 周囲のギザギザが一定でないものは偽物
- 直径や厚みが違えば偽物
お求めになりたい銀貨について、あらゆる角度から情報収集して購入しましょう。
売却の注意点
お手持ちの日本の銀貨がどのような種類で、どのような状態であろうが、売るときには下記の点へ注意しましょう。
- 発行年の希少性を確かめる
- エラーコイン・明瞭ウロコ・欠銭でないか確かめる
- 買取の場合、複数業者の査定を比較する
お手持ちの日本の銀貨に対する情報収集は欠かせません。
なおかつ、今後も価格上昇する可能性があるのです。
安易な売却は避けましょう。
【まとめ】日本の銀貨はリスクゼロで相場上昇中!
日本の銀貨にこれほど多くの種類があるとは思わなかったのではないでしょうか?
発行年による希少性、文字のハネや欠けなどの些細な違いで一桁も価格が変わってしまいます。
希少性の高いものを手に入れたい欲求はコインマニアならずとも同じでしょう。
じわじわと銀の価格が上昇してきた今こそ日本の銀貨の購入時です。
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